182話「六界篇⑱ 大境門ァ!!」
六道輪廻の六界は元々、木星での概念。
それを地球のインドで繋がるのはおかしい話だァ。
黒く染まった凱旋門のような巨大な建造物が、修羅道に聳えていたァ!
ど んっ!! (強調擬音)
それを守るべき三面六臂の巨人が、影に覆われたまま佇んでいたァ!
そしてその足元へアクトとコンドリオンがザッと参じたぞ。
「よォ……! また会ったなァ」
「む! もう用事は済んだはずだが?」
「つれねェなァ……。忘れモンしてたんで、わざわざ戻ってきたんだァ……」
コンドリオンは見上げて、震えていく。
頭上とモミアゲを覆うような黄金のカブト、三つある顔。合掌している一対の腕、二対の腕は剣や槍などを携えている。半裸にキトンを着込んだ風貌。あぐらをかいてなお巨大。
「修羅道を守護する、この阿修羅王アフラーシャに訪ねて忘れモンだァ?」
ド ンッ! (登場擬音)
「あァ……!」
ド ンッ!
アクトもまた肩に刀を置いて悠然と向き合う。
その怒り漲る視線は阿修羅王の後方にある黒い巨大な門を見据えていた。
「単刀直入に言うァ……。その『木星大境門』壊させてくんねーかなァ?」
「断るァ!!!!」ド ンッ!!
阿修羅王は三面を怒りに漲らせて吠えたァ!!
その響音によって大気と大地が震え、コンドリオンは身が竦んでしまう!
「木星の概念を地球に繋げる大事な大境門!! ひいては太陽系全てに設置すべきシステム! 我が木星人が宇宙を統べる為にも必要な事だァ!!」
「そういうのが思い上がりってんだァ!!!」
「貴様! 青二才だから知らんだろうが太陽系全ての惑星で、愚かな争いが行われている! それを無くし、統一するには『如来王』の誕生が必要! ダウートさまこそ、それに相応しいと思って『六道石』をお前に託して届けてもらおうとしたのだァ!」
なんと、以前にアクトへ渡していたのはダウートへ届ける為だったのだ!
「そうかよォ……!」
「分かったら、ダウートさまへ届けに人間道へ帰れァ!!」
「断るァ!!!!」ド ンッ!!
なんとアクトは大きな口を開けて、大気と大地を震わせるほど吠えた!
これにもコンドリオンは身が竦んでしまう!
阿修羅王は「ぬ……!」と顔を歪ませる。
「以前は戦わずに渡したが、こうなったからには力ずくで身の程を分からせてやらァ!!」
「できるものならなァ……!」
「ほざけッ!!」
あぐらをかいていた阿修羅王は立ち上がり、更に巨大さを見せつけた。
四本の腕の剣と槍が掲げられる。ズオオオ……!
「阿修羅・蓮多!!」
巨大な得物による多段突きを放ち、その直線状を破壊が蹂躙!
ドゴゴゴゴォン!!
「!!!!!」
強烈な烈風が荒れ狂って修羅道を一直線に駆け抜けた。無数の赤鬼や武者などが「うわァ~~!!」と吹き飛ばされていく。
「更に阿修羅・異津名御刀志!!!」
なんと天高くジャンプしてからのォ~~、阿修羅王の六本腕と両足による超重量踏みつけが大地を割るァ!!
ドゴォォオンッ!!
「!!!!!」
急激に陥没して破片を吹き飛ばし、周囲を巻き込んで地形が崩れていく!
放射状に亀裂が走って修羅道に広がっていった!
赤鬼や武者は「うわああァ~~!!」と奈落の底へ落ちていく。
「アクトァ!! 貴様はチリにしても許さねェ~~!! これくらいで済ますと思うなァ~~ッ!!」
まだ怒りが収まらず阿修羅王は荒ぶる!
「阿修羅・辰魔鬼慈極!!!」
きりもみ回転して得物を滅茶苦茶に振り回して、修羅道に巨大な台風を巻き起こす!!
それは全てのものをさらい、粉々に引き裂き、一切の全てをチリにする!
ギュゴゴゴゴゴゴゴァ!!!
「!!!!!!」
巻き込まれた赤鬼や武者は烈風に飛ばされて、他の破片と一緒に舞い上がっていって引き裂かれていった。
しかし、その荒々しい烈風の最中で二つの眼光がキラーンと覗く。
「心剣流・雷爆蘭!!!」
なんと電撃を纏った黒刀が阿修羅王の腹を刺し貫いたァ!! ド ン!!
驚愕する阿修羅王は「!!!?」と白目で吐血!!
「……万覇羅弐だと!!? ダウートさまと八武衆以外にッ!?」
アクトは既に変身していたァ!?
天然パーマの黒髪が逆立ち、歌舞伎で言う隈取のように目の周りからこめかみに及ぶ。
全身の筋肉が膨れ、筋肉のラインが装甲に見えるように浮き上がり、そのラインに沿って剣と同じ赤い煌めき、黒く染まった刀の輪郭が更に赤く輝く。
髪から色素が少し抜けたかの様に所々赤い毛の塊が現れ、腕や胸の中央にはヒビ割れの様な紋様が浮かぶ。
全身を纏うような湯気も透明な赤色に変わり、激流が凄まじい熱気を放ち噴火のように噴き上げ続けていた。
ド ンッ!!
「これで修羅道は終わりだァア~~~~~~!!!」
そのままの勢いでアクトは電撃を纏いながら阿修羅王を『木星大境門』に叩きつけて粉砕したァ!!!
バゴォ……ンッ!!
「!!!!!!!」
破片を散らし、瓦解していく大境門と共に阿修羅王は沈み、仰向けのまま白目でドン!
変身を解いて縮んでいくアクトはハァハァ息を切らしていた。
そんな驚愕すべき出来事にコンドリオンはアクトに憧れを抱いていく。
力強く親友の為に貫徹と信念を貫き通すが故の憤怒。
「親友はなァ……、夢に見た異世界へ行きてェんだよ! 邪魔すんじゃねェ!!」
ド ン!!
聞いた話ではあるが、死なせてしまったはずの親友が生まれ変わってて、それを二度と死なせはさせぬと己の体を張って戦っている。
それが爆発的な原動力となり、それは『木星大境門』をも破壊するに至る。
「アクトさん……」
自分が気弱だからこそ羨ましいと思った。
親友がいて、その為になら奮起して頑張れるような強い気概が……。
すると、全ての風景が歪み始めて行く。溶けた絵の具のように流れ出していって大循環気流と化していく。
アクトはコンドリオンの手首を掴んで、シュゴーッと飛び上がって脱出。
ブラックホールに吸い込まれるように修羅道は螺旋状に収縮していって、一切の暗黒へ閉じていった。
そう、地球から『修羅道』の概念が木星へと還っていったのだ……。