176話「六界篇⑫ 千手王は無敵ァ!?」
カイガンは恋愛経験のない真性の童貞だ。
故に、目の前で身動きができない巨乳を前に性衝動を抑えられずにいられようか。
それがヤンデレであれど性欲はそれすらも凌駕する。
「私が救出しますぞ!!」
ガバッと跳躍しつつ全裸に脱いで、スピリアへとダイブを敢行する。
「やめろ! バカ!」
「いっただきますぞぉぉぉぉ!!!」
しかし千手王がそうはさせんと憤慨!
《我の彼女に手を出すなァ!! 千手之鉄帝光閃!! 震矛!!》
ボコココココココココココココココココココココココ!!
「!!!!」
容赦のない千手による掌底乱打でカイガンあっさり撃沈。
ぷしゅーと白目で横たわる。
さすがに『転生眼』も気絶させられたら意味がねェ!
死ぬ事で発動する能力なので、それ以外には全くトリガーにならないのだ。
スピリアは安堵しつつも、今度は千手王のいやらしいスケベ顔が近づいてくる。一難去ってまた一難。
《さァて! 二人きりで楽しもうぞァ!!》
千手によるエロ組手は有限なれど、その組み合わせは甚大。無限に等しい数に及ぼう。
それらがスピリアの貞操をも奪わんと迫り来る最中。
「おい! 決闘しろよ!!」
無粋な挑発に振り向けば、なんと巨大な黄金の翼竜が神々しい光を放っているのが見えた。
そしてその頭上にリゥテムが腕を組んで仁王立ち。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!! (臨場擬音)
「その決闘はまだ早いんじゃねーKA?」
不敵に笑みながらリゥテムがドン!
割って入ってきた無礼な輩に千手王も不機嫌そうに振り向く。
《ほう……。新手か。だが、誰が来ようとも無意味!》
「そいつはどうかNA!」
リゥテムは不敵な笑みを浮かべながら、人差し指でチッチッチ。
試しに【天竜神サン・オブ・フレア】のクチバシから黄金の火炎球を撃つ。それは千手王に着弾して灼熱の噴火に爆ぜた!
甚大なその破壊力は大地を震わせ、吹き荒れた熱風で砂すら焦がす!
《千手之陰我応砲!! 侵壊刺!!》
これまでと同様、返し技として黄金の炎を纏う千手が幾重に飛んできた!
すかさずリゥテムは妙な呪文を唱え、ライフ30点が砕けて20点に!
「10点のライフを払い【天竜神サン・オブ・フレア】の効果を発動DA!!」
灼熱で覆った翼竜は不死鳥へと身を変えて、千手の連打を跳ね除ける!
そして優雅に舞い上がった後に急降下!
千手王に体当たりをかまして、黄金の灼熱が燃え盛っていく!
《ぐああああああああああああああ!!!》
その灼熱の業火は肉体の一切を焼き尽くし、その魂を墓地に送らん!
しかし、逆に千手王はそれすらも取り込んで、背中から不死鳥の翼を生やしていく!?
神々しく燃え盛る千手王はより神秘的に見えてしまう!
さすがのリゥテムも一筋の汗をかく。ドクン!
「……予想以上だNA! 墓地へ送る効果すらも、取り込んで返してしまうKA! 確かにこれでは倒せないZE!」
《返してやろう! 受け取れ!!》
千手王は合掌し、灼熱の翼を羽ばたかせてリゥテム及び【天竜神サン・オブ・フレア】へ超高速で体当たりする!
その瞬間、リゥテムは「手札から発動DA!」とカードを展開!
ズゴオオオオオオオオオオオオンッ!!
黄金の灼熱が火柱となって噴き上げていく!
大地をも揺るがし、天を衝いて燃え盛る火柱にスピリアも絶句!
千手王には何も通用しないのか!?
強力な攻撃を繰り出せば、逆に取り込まれて自身の攻撃力と合わせて返されるしかないのか!?
「こんなの、倒しようがない……!」
戻ってきた千手王は全身から灼熱の余韻を出し切って、ニヤリと笑む。
《セハハハハハハ……! どんな攻撃も我には一切通じぬ!》
ド ン!!