169話「六界篇⑤ ヤバい動物化ァ!」
『牛・リョーコ(ちくしょうどうのすがた)』
白黒模様の牛柄のワンピースに黒スカート。ハイヒールが牛の蹄を模している。
斧は牛を模したオモチャのようなデザイン。
『ラーテル・カレン(ちくしょうどうのすがた)』
頭巾のようにラーテル頭部の皮をかぶっている。灰色の毛皮のジャンパーに黒ビキニ。
身長ほどの長い柄のハンマーはラーテルを模しているデザイン。
「ともかく、何も知らずに来たんなら、早く帰った方がいいぜ?」
翌日の朝、クマはそう言ってきた。
ここは『畜生道』って六道輪廻の中の一つ。弱肉強食が徹底とされていて、本能のみで食って食われる地獄。そんな気が抜けない世界の為か、戦々恐々と暮らすしかない。
「今まで余裕がなくて生きるのに必死だったガウが……」
「あんたらに触発されてか、なんか思い出した気がするわ」
ティラノサウルスやクジラまで人間臭い事を言い始める。
「手の甲を見てみろ」
クマに言われて見てみると、薄らと毛が生えている。
リョーコは爪が黒く太くなっている。心なしか親指と小指が短い。カレンは爪がやや鉤爪っぽい。ビキニなので露出している肌に毛が少し生えているのが窺えた。
……ひょっとして、ここにいると動物化??
「えええ? ヤバくない!?」
「もう俺らは忘れてしまったガウが、こうして懐かしく思えるから、元は人間だったのかもなガウ」
「……ワシはどの時代でここに来たのかも覚えとらんが、かなり昔かもな」
しみじみとしているティラノサウルスとクジラにゾッとした。
クマは真剣な顔を見せる。
「俺も流れて来たクチだろうと思うが、ここは畜生道。いくら転生しようとも脱出が不可能な世界。再びプラーナが来る事を期待するなよ?」
「プラーナだって??」
「なんだ? それはーァ?」
ついでにプラーナや六道輪廻の事もリョーコたちに説明した。
すると茂みがガサゴソと騒ぎ出し、思わず振り向くと……。
「うおおおおおお!!! ハーレム、ハーレム、ハアアアレムウウウ!!!」
なんとカッパのオオガが大の字でガバ──ッと飛び出してきた!!
性欲丸出しアソコギンギン膨張! 血眼でリョーコの巨乳とカレンのビキニを凝視! カッパのクチバシから舌が暴れてヨダレ垂らす!
あ! やせいの オオガが とびだしてきた!
「いや────っ!! なんなのぉ────!? この変態っ!!」
涙目でリョーコはおののく。
しかしカレンは据わった目でハンマーを振るい、ゴールデンボール×2をクラッシュ! 粉微塵に!
「キンッ……!!」
さすがのオオガも白目をひん剥く!
そのままぶっ飛ばして、遥か向こうの石壁にめり込ませた! メキョ!
こうかは ばつぐんだ!
やせいの オオガは いしかべに めりこんだ!
「変態は放っておいて、脱出方法を探そーァ!」
「うん! ケダモノになってしまう前にね!」
「あっちは手遅れだがなーァ」
慣れているカレンに戦慄して、クマ、ティラノサウルス、クジラはブルッと青ざめた。
クジラは上に、クマ、ティラノサウルス、リョーコ、カレンを乗せてズンズン森林を突き進んでいた。
図体がデカいので遠くまで見通せるのが強い。
岩山があちこち突き出ている以外は森林で、やや起伏している地形。空は常に木星の表面のような雲一面。
数時間が経過してて、リョーコもカレンも半獣人化してきている。
顔面が出っ張ってきて、四肢の骨格も動物に近づいてて、そろそろ二の足で立っているのも辛くなってきてる状態だ。
「早く脱出する方法見つけないと!」
「あ! あの上空!!」
なんと遠くで大きな渦が窺える。まるで逆さまな渦潮みたいだ。
螺旋状に急速で回転しているようで、何か吸い込んでいる雰囲気さえする。
するとニョキッと馬の頭が逆さまで降りてきたぞ。
クジラさえも真っ青の巨大さだ。
「ぶひひひんっ! 初めましてー! 我こそが馬頭王ヤバグリーシャだ!」
ド ン!(登場擬音)
リョーコ、カレン、クマ、ティラノサウルス、クジラは「!!!!」と驚く。
なんかひょうきんそうな馬がニヒッと笑ってくる。
「新米さん来てるね~! ここに落ちたが最後! 畜生道で永遠に転生するしかない運命! きさまらもここで諦めて畜生になっちまいなァ!」
リョーコとカレンは「……」と不機嫌そうになっていく。
それでも構わず馬頭王は馬鹿にするようにプッと吹き出す、
「バ──カ! バァ────カ!! ザマァねーなァ!! そういうのを見るのが楽しくてたまんなーい! ギャハハハハハハハハハハ!!」
ムカつくほど大笑いして舌を出してバカにしまくってきたぞ!
しかしクマ、ティラノサウルス、クジラは怒りに震えたまま堪えるしかなかった。
向こうの方がデカくて強い上に偉いカミサマみたいなものだ。反抗すれば痛い目を見るだけだ。
だが!
「なーんだってぇ!!」
「ムカつくーァ!!」
怒りに満ちたリョーコとカレンがエーテルを纏って飛び出したァ!!
「いっせーのォ!!」
「ぎがあああああ────っ!!」
リョーコは斧で、カレンはハンマーで馬頭王の両目にドゴォンとブチ込んだ!!
思わず「!!!」と漏れた!
クマ、ティラノサウルス、クジラは目玉飛び出して、大口から舌を出して驚きのリアクション!
「やっちまったァァァァァ!!」
「仮にも畜生道のカミサマに手を出しやがったァ~~!!」
「仏様を恐れぬ胆力だァ!!」
うわあああああああああ!!!(絶叫擬音?)