16話「先輩たちは卒業後もヤンキーでした!」
田舎の静かな夜。周囲が田んぼだけあって辺りは真っ暗だ。道路に沿って街灯が等間隔で寂しい明かりを灯している。
オレは一人で淡々と歩いていた。
夏とはいえ夜は涼しい。見上げれば天の川が煌く美しい夜空。
「宿題全部終わったからスッキリだー! 気持ちいいー!」
身が軽い、とオレは「うーん!」と両腕を上げて背伸びする。
なんかブロロロロって聞こえたら、暗闇から暴走族がドバーッと大勢で現れてきたぞ。
「ヒャッハ────!! オラァ────!!」
どこぞの漫画に出てきそうなモヒカンどもがバイクブイブイ言わせて蛇行運転していた。
オレは避ける事もできず、ぶつかってきたバイクを弾き飛ばしてしまう。
「うわー!!」「ぎえー!!」「ぐぎゃー!」
オレが強すぎたせいで、ぶつかった方が逆に転がったのだ。すまぬ。
「カチコミかァ!! テメェ覚悟しろやァァァァア!!!」
学ランを着た背の高いガッシリした体格で赤髪の男がいきりたって殴りかかってくる。
コイツは高校で先輩だった高瀬ブクマ……!?
咄嗟に「ちょっ待て待て! ただの散歩だ!」と制止を試みたが、あちらさん「ブッ殺すぞコラァ!!」と聞いてねーな……。
……って卒業してもヤンキーのままなのな。
「ともかく話を聞け────ッ!」
ブオアッ!
「おぼばあああああッッ!!?」
かなーり手加減した素振りで、ブクマを数メートル吹っ飛ばして地面に転がした。
気付けばロン毛とモヒカンも殺気立って襲いかかってくる。多分幹部。
「テメェ──! ワレ何すんじゃコラァアア!!」
「僕達が富山サイキョーの高瀬族と知っての事ですか? オラァ」
そしてセーラー服の女性も拳にメリケン装備して襲いかかってくる。
「ガキのクセに銀髪キメてチョーシこくんじゃねェェェェ!!」
怖ぇー女だなー。つかスケバンとか時代遅れのような……。何も言わんけど。
卒業してから丸くなるかなと思ってたけど、みんなバリバリ現役やんけ。
「みんなでフクロにしちまえアアアアアア!!!」
引っ張られるかのように後続の暴走族こと雑魚ヤンキーも襲いかかってくるようだ。
「黙れぇぇぇッ! 世紀末みてーな時代錯誤どもが────ッ!」
ブオオアッ!!
「ぐわっぎええええええ────ッッ!!」
素振りの衝撃波でまとめて道路に転がしたぞ。ったく……。
んで、最初に出てきたのが高瀬ブマク。クラスは戦士。長身イケメンで赤い髪で体格が大きい。
次に出てきた幹部級のが宅間バイシン。クラスは蛮族。乱れたロン毛のブサメン男。漆黒のマントを好む。肩にカラス一羽を乗せている。
もう一人の幹部が登楼セッキ。クラスは狂戦士。優男で紫モヒカン頭。大剣を背負っている。
最後に出てきたのが七海アキチ。クラスは格闘僧。セミロングの美人。スケバンぽい。高瀬ブマクの妻。
後の有象無象の雑魚ヤンキーは知らん。
ついていけないとは思うが、読者さん流していいぞー。メタァ!
「あ、相変わらずだなぞ……」
「いってぇな……。そのツラどっかで……! あー……、コーハイの城路ナッセ君か」
「ああ」
するとロン毛は「ワレ、度胸あるやんけ」と、モヒカンは「チビのクセにコンジョーありますね」と妙に感心してたぞ。ついていけない。
懲りずにブマクはオラオラっぽく歩み寄ってきていた。
「オメー特攻か? 仲間はどこだ? これから来ンのか?」
「いや一人で普通に散歩を……」
みんな「ええっ!?」と驚き返ったぞ。
ブマクは「冗談言うなボケが! 散歩でバイク転がして舎弟傷つけておいて、タダで済むと思ってんのかァ────!?」と怒り心頭だ。
そんな空気読んでないヤンキー野郎にオレはなんだか腹が立ってきたぞ。
「いちいち説明するのも面倒だ!! 圧倒的な力の差を見せてやらぁ!!」
ボッと足元に花畑を広げ妖精王化した。背中で優雅に揺らめく羽。銀色に伸びた髪がたゆたう。
そして圧倒的なフォースを噴き上げて地響きを誘発していく。
そんな巨大な力を前に、ブマクたちは「うおおおおお!!」と目をひん剥いた。
「これが超ナッセだ!」
しかしアキチが「ふ、ふん、まるで妖精だね……」と青ざめながら強がり言ってきて、オレは「えー!」と苦い顔をしてみせた。
某漫画のアレを意識してんのに萎えたわー! ちぇー!
でも先輩ビビっているからヨシ!
「ハハハハハ!! 妖精かオイ! ダッセェ────!!」
しかし他の暴走族のモヒカンどもは違っていた。笑い転げててムカついたので、素振りで暴走族どもを道路に転がした。どーん!
「いやぁ……、この辺にツエーヤツ(実はナッセの事)が来たと聞いたんだ。そいつシメてテッペン取りたくてな!!」
死屍累々と雑魚ヤンキーどもが横わたっているのを尻目に、傷だらけのブクマはポリポリ頭をかく。
そんな理由に、オレは間の抜けた顔で「アホか」と口走ってしまった。
顔を真っ赤にしてブクマは「ああ!? シメるぞコラ!!」と鼻息を吹いて立ち上がろうとするが、アキチが「ヤメな! フェアリーと踊ンな死ぬぞ」と彼の肩を握って止めた。
さっきのオレの変身を思い出してか、ブクマは「わ、ワリーな……いつものクセでよォ」と冷や汗タラタラとすごすごと引き下がった。
さっきブッ飛ばされてたの忘れてるとか。お前は鳥頭か。長生きできねーぞ。
高瀬ブクマ先輩たちは高校最強の創作士として知られていて、将来有望と期待されていた。
卒業後も色々な依頼や任務をこなしてきたらしい。この間のアホなミッカより強い。
……時代遅れのヤンキー感がしなくもないが。
「まぁ、オメーからしたら俺たちなんてハナクソみてーなもんだろうな」
ハハ、とブクマは自嘲する。そのままヤンキー先輩たちは帰っていった。
────後日、なんか知らないヤンキーまでびびって避けてくるなぁ。
巷で「フェアリーと踊ンな死ぬぞ」とヤンキーの間で恐れられているとかなんとか。
ヤンキー創作士の紹介。
『高瀬ブマク(戦士)』
長身イケメンで赤い髪。学ラン着てる。豪快な性格。タフな体格。
中学生の頃にデキ婚して、現在子供が12人もいる。家計は常に火の車。『洞窟』へ何度も挑戦して、生活費にしている。
短気で喧嘩っ早く、即座に前の出来事を忘れる鳥頭。
剣、槍、短剣、斧、更に体術(喧嘩)が得意。
スクリュークラッシュ(捻りを加えた一撃)
スーパーアッパーカット(地面スレスレから振り上げる一撃)
インファイトラッシュ(懐に入って連打を見舞う)
アルマジロディフェンス(一度体を丸めると何故か守備力上昇のバフがかかる)
キレる(一度怒ると何故か攻撃力上昇のバフがかかる)
思い切ってヤるぞコラ(次の攻撃を三倍?にする)
威力値:9200
『七海アキチ(格闘僧)』
セミロングの美人。セーラー服を着ている。強気でスケバン。高瀬ブマクの妻。
ステゴロ強い。回復魔法もできる。タバコ吸ってる。
威力値:6700
『宅間バイシン(蛮族)』
乱れたロン毛のブサメン男。漆黒の服を好む。肩にカラス一羽を乗せている。
無口で何を考えているのか分からない。意外と豪酒。綺麗好きでキラキラが好き。
自身をカラスに変身させたり、他のカラスと群れたりして戦う。
威力値:7600
『登楼セッキ(狂戦士)』
優男で紫モヒカン頭。戦闘時はマッチョマンに変貌。大剣を振り回して暴れる。
見た目の割に繊細な性格で傷つきやすい。
気になっている女性は亜依ラブエ。勇気がなくて未だ告白できず。でも止めた方がいい。
威力値:8540




