14話「撃退! 撃破! 大撃滅ー!!」
遅れた墓参りを無事済ませ、家族を乗せた車に追従するようにオレとヤマミは駆け足ー。
すると黒い点が円に広がって全てを覆い尽くし────、元の世界をコピーした戦闘空間へ誘われる。そのまま走行したまま、モンスターが現れる。
車輪のスライムが十二匹。ライト部分が両目の顔のついた赤い車が三機、同じく顔がついたでかいトラックが一機のグループだ。
ブロバロロロロロロ……!!
【ホイールスライム】(スライム族)
威力値:1000
車輪を模したスライム。常に道路を爆走している。素早い上に小さくて数が多いため、手強い。下位種。
【悪魔の車】(機械族)
威力値:5200
意思を持つ車。ひょうきんな顔の割に凶暴。走行に限らず、急ドリフトやジャンプなどアクションが多彩で、そのくせ速くて重量があるので難敵。下級上位種。
【悪魔の貨物車】(機械族)
威力値:7400
意思を持つ貨物車。ひょうきんな顔の割に凶暴。図体と重量ゆえに器用なアクションは難しいが、攻撃はとても重い。排気ガスで状態異常攻撃もする厄介なモンスター。下級上位種。
ドバババッとなだれ込むように飛びかかる車型モンスター!
「うわあああああッ!!!」
父と母、弟二人は、突然のモンスター強襲におののいた。
創作士とは常にこのような危険と隣り合わせになるのか……、と戦々恐々とさせられた。
しかし相手が悪かった!! 家族の乗っている車を飛び越したナッセとヤマミが、ビジバシ空へ弾き飛ばして空中爆破ー!! ドガガガガガガーン!!
金袋と宝箱が落ちてきたのをヒョイと取る。宝箱にはガソリン容器で中身が満タンの状態だったぞ。
信号があまりない国道を時速60kmを超える速度のまま、家族の車は直線を走り抜けていく。オレもヤマミも駆け足でシュタタタと並走。そして田舎特有の広々とした景色が流れ続ける。
「ナッセ、いつもこういう事を?」
運転している父に聞かれて、横で併走してたオレは「ああ!」と頷く。
「今まで、よく生きてこれたな」
「ああ。師匠に鍛えられてるしなー」
なんか久しぶりに父と話せた気がする。
「こんな事なら創作士にはなりたくなかったかな。こんな危険じゃ、安心して暮らせないなぁ」
「そんな事ないわ」
「……ヤマミさん?」
後ろにいたヤマミが横に併走してきて、首を振った。
「最近、世界中で創作士は異常に増加している。遅かれ早かれ、みんなそうなっていくもの」
「そ、そうなのか……?」
ヤマミは「ええ!」と頷き、父は「はぁ~」と深くため息。
母も弟二人も、その事実に驚きを隠せない。
どうりで家族全員が創作士の扉を簡単に開けられたワケだ。そう察した。
道路が坂になって一緒に駆け上がっていくと、今度は下り坂。これは立体交差といって、渋滞を避けるための交差点らしい。
その先の信号が赤になり、周囲の車と一緒にゆっくり停止していく。
「走りっぱなしで疲れないのか?」
「ん? いや全然。学院入学前だったら、へばってたかもしれないけどなー」
「私たちは度重なる強敵との戦いで随分レベルアップした。その気になれば時速200kmを超える新幹線より速く走れるわ」
「それは……凄いな……」
父は汗をかいて目を丸くする。
「兄貴もその彼女さんもスゲーな!」
「俺もそんくらい強くなりてーなー!」
弟のツバサとヤスシは年甲斐もなく、少年のように目をキラキラさせている。
信号が青になったので車が一斉に走り出して、オレたちも家族の車と一緒に走り出していく。そして流れ始める景色……。
幾度かエンカウントするもオレとヤマミが一蹴。ドババーン!
すると不思議な事に、父と母と弟たちはグンと力が湧く感覚を覚えた。前々からナッセたちが敵を倒すたびに、時々こうした現象が起きていた。
弟たちは「ひょっとしてレベルアップしてる!?」と素っ頓狂な顔で見合わせる。
「え? マジかぞ? 『洞窟』で一緒に旅してたミッカたちは全然だったのに……」
オレも怪訝に眉を潜め、首を傾げるしかない。
「……ミッカたちは私たちを本当の仲間として認識してなかった。でもあなたの父と母と弟二人とはお互い仲間だと思っている。その判定じゃないの?」
「それで獲得経験値が割り振られたと?」
「おそらく」コクッ!
ヤマミが頷く所を見るに、この説が濃厚のようだった。
まるでゲームみたいだなぞ、オレは苦笑してしまう。……というワケでエンカウントしてきたモンスターに剣ビームを照射しまくってズガアァァンと撃退! 撃破! 大撃滅ー!!
並み居るモンスターどもをことごとく木っ端微塵に粉砕しまくりー!!
「ワハハハハー!! 哀れなモンスターどもよ、我々の踏み台になるがいいわー!!」
どこぞの某漫画の社長みたいな傲慢不遜な大笑いで無双しまくったのだった。
それに父母弟は若干引いていた。
ヤマミはジト目で「……全く」と呆れていた。
でも初めて『洞窟』へナッセ、リョーコ、スミレと一緒に挑んで経験を積んで、ほぼ大差ないレベルに育った理由がなんとなく分かってきた気がした。
あの時も本当の仲間として意気投合してくぐり抜けたのだから……。
その後も、人造人間や世界大戦など激戦に次ぐ激戦を乗り越えて相当強くなっていった。ふふっ!
そう思い返しながらヤマミは嬉しそうに微笑む。
この日、外食したり、ボーリングしたり、ショッピングしたり、充実した一日になったぞ。
さすがにオレも疲れたなぁ……。
人気のない山道でエンカウントした────。
大きな青い熊が三匹。凶悪そうな鹿が七匹。二足歩行の狸が二匹。
【エビルベア】(獣族)
威力値:11000
青い毛色の凶暴なクマ。鉄のように硬い筋肉で包まれたバケモノ。攻撃も防御も凶悪で、爆撃ミサイルにすら耐えられるという。5メートル以上の個体も存在する。非常に攻撃的で町を壊滅させるほどの執着心と獰猛さが恐ろしい。中級下位種。
【マッドディア】(獣族)
威力値:6600
見た目こそ草食獣だが、実は凶悪な肉食獣。鋭く尖ったツノで突進したり、トゲを飛ばしたりする好戦的なモンスター。群れるため強敵。下級上位種。
【タヌキメイジ】(獣族)
威力値:6200
知能が高くて二足歩行ができるタヌキ。火、水、土など攻撃魔法を使ってくる上に回復魔法までこなす。可愛い風貌に騙されると危険だ。下級上位種。
「ウガアアアアアーッ!!」
獰猛に襲いかかってくる凶悪なモンスターたち。
父と母とナッセとヤマミがビクビク不安そうに怯えていた。それを守るように二人の弟が立ち向かおうとしている。
弟のツバサとヤスシは何故か長身ムキムキな体格で、キリッとした漢らしい顔立ちだ。
数々の戦地をくぐり抜けたかのような歴戦の戦士だ。
「お前はもう死んでいる!」「創作王におれはなる!」
ツバサは余裕と剣を振るって三匹のクマをバサッと一ミリ以下の粉塵に刻み散らす。
素早い動きでかく乱して襲って来る鹿の群れをヤスシの槍の突き一つで全て消し飛ばし、向こうの連なる山に丸い風穴を空けた。
攻撃魔法を放とうとするタヌキを、二人はギンと睨むだけでボンッと弾けさせた。
「二人とも間違いなく威力値が1億超えてそうね」
「ああ。やはり天才か……!」
ナッセとヤマミに賛辞され、更にどこからか美女がたくさん群がってきて二人の弟は「わっほーい!」と有頂天になる。
うふ~んあは~んでボイーン巨乳グラマー美女たちとチュッチュッイチャイチャでハートマークが嵐のように飛び交う。
「ハーレム超サイコー! 極楽天国じゃーい! ワハハハー!!」
家の居間で、弟たちはソファーの上でニヤけ顔でヨダレ垂らしながら寝入っていた。
オレはそれを見て、毛布をかけてあげた。
「幸せそうだなぞ……。いい夢みてるんかな? おやすみ」