11話「遅れたお盆! いざ墓参り!」
「うおあーっ!!」「やっしゃあーっ!!」
燦々照らしてくる真夏の太陽。緑生い茂る庭。その開けた場所でオレは二人の弟を相手に実戦訓練を行っていた。次男ツバサは木刀を振るい、三男ヤスシは棒で突き、オレは木刀でそれらをガガガガッと捌いていく。
ただの一撃も入らず、焦った二人の弟は「くっ!」と猛攻を続けていた。
ヤマミは庭と面する縁側で座り込んだまま、その特訓を眺めていた。
すると母さんがカットしたスイカを並べたトレイを運んできていた。
「暑いのに、よく動けるものねー」ほほ!
「差し入れをありがとうございます」
ペコリと丁寧な会釈に母さんは「ナッセは果報者ねー」と嬉しそうだ。
その午後、オレたち家族はブロロロと車に乗って、ある場所を目指していた。
流石に父母と二人の弟と一緒に車へ乗れるワケがないので、オレとヤマミは追従するように走っていたぞ。ちょっと駆け足程度だからウォーミングアップにすらならない。←時速約60km!
そんなオレたちに、周りはギョッと驚いているようだ。
「さすが兄貴!! 暑いのに汗一つもかいてねぇ!!」
「凄いよな!! 俺たちもやろうぜ!」
「ああ! 負けてられねーぜッ!」
弟二人は窓から身を乗り出して、オレたちのレベルの高さに興奮しているようだった。
ちなみにあの後、真似して走ってみたけど二人とも息切れゼェゼェで「待って、待ってぇ~……」と涙目でした…………。
「……確かに世界大戦やってて、お盆過ぎてたわね」
「ああ。そン時、日本人はヤミザキの『刻印』で支配されてて、お盆どころじゃなかったもんな」
「うちのバカ親父のせいで……。ごめん」
「あ、いいよ。もう済んだ事だし」「うん」
車と同じ速さ(時速約60km)で(軽めに)走りながら、オレとヤマミは普通に駄弁っていた。
タイミングが悪い事に世界大戦でお盆は過ぎ去ってしまったのだ。だから改めてオレたち家族で墓参りする事にしたぞ。
眩い太陽が照らす最中、オレたちは寺の周囲の墓場にたどり着いていた。
数多くの墓が鎮座するように静かだった。
《ククク…………》
不穏な気配が無数の墓から漂い始めた…………。オオオオ……!
「あった! ここ、ここ!」
ネズミ色で頑丈な二つ重ねた台石の上に、細長い墓石が立つ三段拵え。一番上の墓石には『城路家』と刻まれている。全体的に縦に長く背が高い。
その前方の左右に二つの灯篭が立ってあり、墓の前方にはロウソク、線香、花束が飾られている。
オレたちはロウソクと線香に火を点け、新しく花束を添えた。
そしてみんなで数珠を両手首にかけて合掌して、黙祷した。すると!
ズズズ……!
ハッと、その異様な光景に驚いていく。墓から不穏な紫色の炎がこもれ出てきたのだ。どことなく異様な威圧が膨れ上がっていく。
「なにこれ!?」
あっという間に紫の炎はブワッと周囲を覆い尽くすように広がり、暗転していく────!
すると無数の墓が破裂するように弾け散り、大量の骸骨が躍り出るようにボーンと飛び出してきたぞ!
《イヤッハァ────────────ッ!!!》
数十体もの骸骨が陽気にイエイイエイ踊りながら「うらめしやー!」と勢揃いで群がった。
……が、当のナッセたちは忽然と消えていた。
「あれ、いないっ!?」ガボ──……ン!
恐怖の驚かしが空振りに終わって、気まずい空気のまま、いそいそと散らばった墓を立て直して自らツボに入って再びの鎮座へ戻っていった……。
めっちゃ恥ずか死すぎるので二度とやるまいと決めたのだった。
数々の先祖さん、乙っす……。
────気付けば、暗転が引いていた。
この世は戦国!! 日本各地で名だたる武将が群雄割拠と争っていた時代!!
まだ草木が多くて平原が広がっている昔の日本。
わらわらと多くの足軽が「うおおおおお!!」と槍を構えて、相手の軍隊へ突進していく。
馬に乗って槍を振るう騎馬兵が足軽を蹴散らし、射られた無数の矢が空で弧を描きながら降り注いで、多くの兵の命を射抜いていく。
その中で数百人もの兵をことごとく肉片に散らし、火の玉のように低空で高速飛行する騎馬、その憤怒がごとしの豪傑な武将は「武田信玄」だ!!
圧倒的なオーラで奮闘して、多くの兵を吹き飛ばしていく。
そして片方は白い衣で冷徹な頭を包む戦国武将「上杉謙信」だ!!
神々しく輝く槍を嵐のように振り回し続け、無数描く軌跡で多くの兵を斬り刻み、上空へ数百人と吹き飛ばす!
「武田信玄──ッ!!!」「上杉謙信──ッ!!」
その二人の武将がオーラを漲らせたまま超速で衝突し合って、ガッシィンと槍を交差させ、広範囲の岩盤がめくれ上がるほど衝撃波が荒れ狂った!
ドガアアァァァァン!!
巻き添えを食った兵士数十人が「ぎゃあ~!」と消し飛ばされていく。
なんつーか、二人の武将のせいであちこち激突の爆発をドカンバカン巻き起こし続けて、巻き込まれた敵味方の兵士が勝手に死屍累々になっていく。
……これ、兵隊いらないんじゃ??
そんな火花散る戦乱を、上空から幽霊のようにオレたちは眺めている形だ。
「……っていうか夢でも見てるかぞ?」
「一体どうなってるの?? まさか『運命の鍵』による逆行!?」
ヤマミが振り向いてきたが、オレは慌てて否定するべきブンブン首を振る。
「ムリムリ!! こ、こんな昔まで、さかのぼれねーぞっ!!」
あまりの情報量の多さに唖然とする父と母、そして二人の弟……。すると背後に不穏な影が現れてくる。
「だ、誰だッ!!?」
オレたちがすかさず振り向くと、怪しく「ゾッゾッゾ」と笑む黒い人影。両目が輝いている。ありがちな正体不明のキャラとしての演出である。
次第に人影を覆っていた闇が薄れ、今度は全身からユラユラとオーラが立ち上っていく。
「我は主らの先祖に当たる『城路辰衛門』なりぞ!!」
ギン、と猛者らしく鋭い眼光を見せ、精悍とした青年顔が兜から窺えた。身を武将の鎧で包み、腰には大きな刀と脇差が差されている。
兜の額部分には黄金龍が付いている。キラーン!




