102話「秋季大会編 ~見せつけカップル!?」
オレはヤマミと一緒にコロシアムの中の通路を歩いていたぞ。
……今日は二〇〇九年十一月十四日。
全国大会トーナメントの試合が始まり、メンバー全員で一回戦の試合を偵察していたぞ。
で、今は二人でデート? いやいや違います!
喉が渇いたから二人だけで抜け出して、ジュースでも飲んでゆっくりしたいだけだぞ。
ガコン! 自動販売機の中で缶が落ちてきて、それを取り出す。
「さすが強ぇーな! 相手チーム全滅させちまった!」
「確かに優勝候補ね。みんな侮れないわ」
「……例え、ジャキガン学院に勝っても、決勝で会うんだよな」
休憩所の中心にある長椅子に腰掛けて、ヤマミと一緒にジュースをゴクリ!
シュジンコー学院の正統派っぽいメンバーは本当に実力派ぞろい。
「うおおおおっ!! やってやるぜっ!!」
澤谷ユウキは『聖剣ガンバルバル』を振るい、光の軌跡を描く勇者!
オレと同じように気合いや根性で強敵の攻撃を捌き、数々の必殺技を見舞って勝ち抜いていく!
「ガッツ・シュ──タァァ────ッ!!」
極めつけにはエーテルを纏った突進しての剣の一突き!
それはいかなる攻撃をも弾き、障害物さえも貫き、対象を穿つ!! 岩盤が捲れ上がって対象ごと粉々に吹き飛ばす一撃は日々研鑽して積み重ねてきた賜物とも言える至高の威力!
「……よし!」
目の前の強敵に打ち勝ち、その勝利の喜びを噛み締める!
まさに主人公と言っても差し支えのない真っ直ぐな好青年だ!!
「ファイナル・ギガバクボッ!!」
栗色のツインテールの女魔道士が放つ高火力の魔法は広範囲を破壊しつくし、灼熱の彼方へ消し去ってしまう!
彼女の周囲には数々の魔法が詰められた光球が無数周回していた。
いつでも弾幕を張れる『衛星』の使い手。炸裂弾、追尾弾、軌道弾と、あらゆる弾で攪乱しつつ、追い詰めていく。
実は彼女もまた『血脈の覚醒者』らしいな。
その者の名は河合イヨネ。おっとり可愛い系でヒロインっぽいぞ。
しかもリョーコ並の巨乳でピンク系の魔道士服。
性格は正統派っぽく、いい子で明るくて好感度良さそう。
ヤマミは何故か不機嫌そうだったぞ。意識してんのかな?
他にも大柄で虎のマスクを付けた半裸の大男は、両手の手甲鈎(いわゆる爪装備)で振るっていた。
増来タイガー。
頼りのある性格で、第二のキャプテンとも言える存在だ。
……なんか巨大な虎に変身してたが、魔獣なのか蛮族なのか、どっちかなぁ?
変身できるならマスク意味なくね?
長身の青髪ロン毛のクールイケメンは来坐出シュマネ。
オレのように『刻印』で武具を具現化するが、光ではなく水。基本はナイフで戦う。しかしムチのようにビヨヨ────ンと瞬時に柔軟な刀身を伸ばして間合い外を攻撃できたり、地中に潜らせて地表から刃が突き出るとか、手裏剣として飛ばせるとか、なかなかの技巧派だぞ。
最後に、踊り子のような露出度の高い色っぽいビキニみたいな衣装の強気な女の子。
胸もそこそこに大きいが、太ももと尻は魅惑的に大きくてプリッとしている。露出しているから余計……。
彼女は小鳥シリバ。
赤い髪の毛、左右の団子で纏めている。
軽やかな体術は特記すべき事で、瞬足はもちろん柔らかい身のこなしで敵の攻撃をいなし、強烈な近接攻撃で一撃必殺って感じだぞ!
性格は勝気で苦手なタイプだぞ! だってカレンでこりごりぞっ!
「……こいつらに当たった学院は気の毒だなぞ」
「でも負けたとて地区予選優勝した強豪校。私たちでも一筋縄で行かないでしょうね」
「そんな強豪校に完封勝ちって、あいつらマジで強ぇーぞ!」
「うん!」
開会式で啖呵を切っただけあって、それ相応の自信と実力を持っている。
「あれあれー? ボクたちと当たる学院の選手じゃないかねー?」
なんと後ろでにこやかな少年が間近に!? ぞわっ!
バッと振り向くといない! いや、既に後ろに!! ゆっくり向き直る。
オレと同じ小柄な優男。マッシュの黒髪でお坊ちゃんって感じだぞ。
「気の毒ねー。でもくじ運じゃあーしょうがないんですねー」
ヤレヤレと肩を竦めて左右の手を上げている。
挑発とも言える態度ではあるが、オレはジト目で「本当にな……」とため息をつく。
予想外な反応だったのか、坊ちゃんは素っ頓狂な顔を見せた。
「まー同情しますねー」
にこやかに微笑む。なんかモリッカみたいだなぞ。
すると手の甲の黒ドクロの『刻印』が輝いて、漆黒が渦巻いて剣の形を取る。その黒い剣の輪郭は灰色の縁でブウウンと振動音がする。
「自己紹介しますねー。ボクは“闇紋深淵剣”の塔屋ソージですねー!」
肩に黒い剣を乗せてニッコリ!
穏やかで掴みどころのない小柄の剣士……。できる。
だってゆったりしてるようで隙が見当たらないぞ。二つ名が厨二くせぇのに……。
「そういや、誰か聞いてもいいかねー?」
「あ、ああ。オレは……」
「ソージ!! なに道草食ってるの?」
なんと銀髪のロングのクールな女性が階段から降りてきていた。
服は暖色の橙色と黄色の制服っぽく、長めのスカート。あと貧乳。
なんかソージの仲間っぽいなぞ?
「いやー! 朝霧ウミノ、最初の対戦相手見かけたもんでねー!」
ウミノは冷淡な青い目でこちらをチラッ。
しかし「ともかく!」と腰に手首を当ててソージへ歩み寄っていく。
「一回戦のマイナー学院は眼中なし! 目標は天地轟かす我が校による全国大会の完璧制覇! 決勝で当たるシュジンコー学院が例え夏の時より腕を上げようとも無駄って事を思い知らせる為にね! これからマジンガさんたちと一緒に完璧なる策謀を練らねばな!」
「もー、いっつも硬いんですねー」
「五劫の擦り切れの果てを越えて、永久に愛する貴方の為よ……」
なんか厨二全開してるけど、ウミノ頬を赤く染めて不満そうな顔をする。
すると! 事もあろうか、ソージが顎を引き寄せてチュッと唇を重ねたぞ!?
驚いていたウミノも次第にとろけて、ソージの背中に両腕を回して抱きつく。
互い熱愛盛ってねっとり絡み合うようにグチュグチュペチョペチョとかねーり濃いキスしまくりだっ!!
こっちが恥ずかしくなるくらい、堂々と見せつけられたぞ────っ!!
「なん……だと……ぞ!」
「こ、こここっち! は、は、ははややくぅぅ!!」
「あ、ああ!!」
オレもヤマミも顔真っ赤っかになって耐えられず、すぐさま時空間魔法でエスケープ!!
ズズズズズズッ!!
一回戦の第二試合で歓声沸く観戦席……。わああああああっ!
「ん? 何があった?」
オレとヤマミが四つん這いで、ぜえぜえ息を切らしているのをフクダリウスが気になったようだ。
つい「な、なんでもない! 運動してた!」と、掌を突き出して弁解した。
ヤマミも「え、ええ、疲れたわ……」と合わせてくれた。フクダリウスは「そ、そうか」と戸惑いつつも詮索しないでくれた。
ま、まさか! 対戦チームにイチャイチャカップルがいるとは……!
「……それにしてもコハクとモリッカ遅いな? 見かけなかったか?」
「え? いや……」
そ、そういえば! いない!?
広────い観戦席をキョロキョロ見渡すが、見当たらないぞ?
リョーコは「ジュースでも買って飲んでたりしてるんじゃないのー?」と、のほほん。