10話「ミッカたちの本当の目的!」
朝飯を済ませた後、明るくなった川原の元焚き火場でオレたちは集合してたぞ。
「今更だが『洞窟』へ潜る目的があったんだ」
ミッカは真剣な顔で打ち明けてきた。ナカシもチキクも頷く。
オレは「そういや目的とか聞いてなかったなぞ」と首を傾げた。
「……噂があるんだ」
「噂?」
「そうよ、これまで『洞窟』に挑戦した創作士はアイテムや金を稼ぐ為に潜る人が多かったわ」
今度はナカシが巨乳を控えめにプルッと揺らせて言葉を継ぎ足した。目のやり場に困るからやめて欲しいが。
「でも大量の死者が出たりする事があるでぶの。そこから生き残ったごく僅かな人が急激にパワーアップしてたでぶわ~」
チキクのでぶでぶ語尾に加え、オカマになったもんだから変な風に混ざってしまってシリアスな場面に関わらず緊張感が薄れるなぞ。
しかし合点がいった。……オレたちも一応経験した事があるからだ。
コハクが「『闇の重圧』を乗り越えし猛者は急激なパワーアップするのです」とキリッと言ってた。
オレたちも魔の交差点で遭遇して、なおかつ脱出に成功した為にマイシと互角に戦えるまでになった。
「まさか……!」
「ああ、そのまさかだ。オメーを見て確信した。その異常な強さもソレが原因なんだろ?」
ミッカはニヤッと笑う。
彼らはパワーアップしたいので、その原因となる『洞窟』へ長く潜るつもりだったのだ。
その為に重い大荷物を持たせる役として、オレに白羽の矢が立ったって事か……。
「そうよ!! 私たちはもっと強くなりたいのっ!」
ナカシは意気込んで巨乳をプルルンプルルン大きく揺らした。やめい!
「死ぬわよ!!」
ミッカたちの勢いを止めたのはヤマミの脅すような一言。
その凄みにミッカ、ナカシ、チキクは冷や汗をかいてたじろぐ。だが、ヤマミの言う通りだ。下手に『闇の重圧』に遭遇すれば全滅もありえる。
ミイラ取りがミイラになっては無意味だ。
「頼む!! 手伝ってくれ!! この通りだ!!」
「頼みます! 頼みますわ!!」
「お願いするでふわ!!」
なんとミッカ、ナカシ、チキク揃って土下座してきたぞ。
「土下座すればいいってもんじゃ……」「いや」
頼みを跳ね除けようとするヤマミをオレは腕を伸ばして止めた。
「オレも同行する。危険だと思ったら退くぞ?」
パッと明るい顔を上げるミッカたち。
なんか飛び跳ねるように喜びの舞いをし始めたぞ。イヤッホーイ!
深刻そうに見てくるヤマミに、オレは少し笑って首を振る。
彼女の耳に口を近づけ「きっとコイツら、断られても自分たちだけで無茶しでかすと思うぞ」と耳打ちした。ヤマミは観念し「はぁ……」とため息をついた。
午前10時頃に探索を始め、さっそく川からモンスターが飛び出してきたぞ!
今度は数十匹の人面カニと、電撃を纏う巨大なウナギが一尾、馴染みの川辺魚人三匹だぞ。
【人面サワガニ】(水族)
威力値:2100
山の川辺に生息するサワガニ。背となる甲羅に顔があって表情が豊か。触覚のような本来の目と合わせて四つの視覚を持つ。甲羅と腹部が割れて噛み付く事で捕食する。下級中位種。
【デンガウナギ】(水族)
威力値:5300
山の深い河に潜むウナギ。雷魔法デンガを放つ強敵。体表が帯電しているので接近戦は危険。下級中位種。
【川辺魚人】(水族)
威力値:4700
川辺に住む、水陸で生活ができる魚の人間。人間並の知恵を持ち、罠を仕掛けてくるなど狡猾。水の魔法を併用して繰り出す爪の攻撃はかなり強力。その戦闘力は単体でクマを打ち倒すほど。下級中位種。
ミッカは汗ばんで「い、行くぞ!!」と身構える。
オレは「フッ!」と居合いの拳で突いて、全てのモンスターをブオアッと押し流す。グシャグシャーッと壁で潰れてミンチになった。
唖然とするミッカたち。
「な、なぜ戦わせてくれないんだ? レベルアップできねーぞ」
「あんたたちじゃ無理だぞ」
ミッカとチキクは「ええー!!」と不満げだ。
ナカシは懸命にボインボイン巨乳を揺らして「そんな事ないもん!」と必死に抗議する。
人面ガニはともかくウナギは範囲攻撃してくるからなぁ。厄介な半魚人も三匹いるし、ミッカたちじゃ全滅する。
なので以降も素振りで全てのモンスターをミンチにしていったぞ。
二日かけて探検を続けていると、行き止まりとなる最後の部屋に大仰な扉が付いていた。入ると大きな湖が奥行きに広がる大広間でデッカい人型クジラが待ち構えていた。
太い尾びれが二股、後足として直立。左右のヒレが前足。腹の上部が人面で厳つい顔。頭上から煙突のようにシュポーッと潮を吹いた。
【河の主クジラヤマ】(水族)
威力値:19000
山の川辺に生息する人型クジラ。クマの十倍くらいの体格。大型トラックも遠くに跳ね飛ばすほどのぶちかましは強烈。砲撃にも無傷で済ますほど防御力が異常に高い。前足を振るう事で風魔法の竜巻を巻き起こすのも恐ろしい。中級中位種。
「ブモオオオオオオ────ッ!!」
咆哮が広間中を震わせ、湖が荒れ狂っていく。ビリビリと威圧が圧してくる。オレとヤマミはへーき。
しかしミッカたちはガタガタガタと竦んで腰を抜かして呆然自失。
……お、これはちょうどいいなぞ。
「我が一閃に沈め……!」キリッ!
オレは光の剣を形成し、瞬時に駆け抜けてクジラヤマを上下に分割……。
ボオオォォォオンッとあっさり爆発霧散!
ボスを倒す事で奥にある扉が開かれて光が溢れていく。オレとヤマミはその先の光景を見て見開いた。
ヤマミの時空間魔法で最初の入口前へ戻ったぞ。庄川の河原でミッカ、ナカシ、チキクはハッと気が付く。
「い、一体?」
「クジラみたいなのが……?」
ヤマミは目配せしオレは頷いた。
「あのボスの威圧であんたたちは気絶してたわ。でも生き残った」
「え? ええ? それでは……!?」
「そう、自分より格上の威圧に当てられて生き残る。これがパワーアップの正体だ。良かったな。ゆっくり休め。お前たちもパワーアップしてるぞ」
ヤマミとオレはそう説明すると、ミッカたちは「ほ、ホントか!?」と喜びに打ち震えていく。
わーいわーい大喜びの所、申し訳ないけど嘘ついてゴメンな……。
アレに関わらせて下手に死なせるのも後味悪いし。
「それにしても異世界へ繋がってなかったなー。全部が全部じゃないんかな?」
「そんな都合よく繋がるワケないでしょ」
扉の先には、なんと広大な黄土色の大草原が広がっていた。木があちこち点在している。シマウマやゾウの群れが闊歩していた。
なんとアフリカのサバンナに繋がっていたのだったぞ……。
あーあ帰ろ。
────後日、ミッカから手紙がよこされた。
「テメェェェエ嘘つきやがったなコラァァァアア!! ただいま猛特訓中だから、〇月〇〇日の〇時〇分に高岡創作士センターで威力値比べだ!! テメーら逃げんなよぉぉぉお!!!」
オレはヤマミと顔を見合わせクスッと微笑み合った。
もちろん結果はお察し。
ナッセの創作士同級生の三人を紹介だぞ。
『真琴ミッカ(剣士)』
爽やかな好青年で、スポーツ刈りのイケメン。既婚者。
学力はザコいが運動神経が抜群でクラスの中で一番だったぞ。
剣の腕前は学校の中では最強だった。
閃月(斬撃を拡大して広範囲を攻撃できる基本的攻撃スキル)
スーパー閃月(一日に三発。閃月より遥かに広い範囲を斬り裂く。つまり上位互換)
アルティメット閃月(実戦未使用。スーパー閃月の上位互換。引き換えに両腕全筋断裂)
リミットオーバー閃月(実戦未使用。アルティメット閃月の上位互換。引き換えに両腕複雑骨折)
威力値:4400(リミットオーバー閃月時:17600)
『真琴ナカシ(僧侶)』
旧姓は志乃舞。真琴ミッカの妻。おっとり系で黒ロングそばかす。
運動神経はザコいが学力が抜群でクラスの中で一番だったぞ。
防御系、補助系、回復系の魔法が得意。短剣を護身用にしている。
ラブ・回復魔法系(ハート型の回復魔法を追尾弾を放って遠距離回復。しかも即効で効く。ただし好きな人にしか使わない制約有り)
威力値:400
『友哲チキク(暗殺者)』
かつては痩せぎすの男。今は何故か太り気味。お調子者。見境もなくナンパする。クラスメイトの女子全員に告白して振られた伝説を持つ。未だに独身。
ヤマミを夜這いしようとしたが返り討ちに遭って玉ナシとなってオカマ化した。
地味にいやらしい補助魔法が豊富。
ラブレター手裏剣(愛を綴ったラブレターを投げる)
投げキッス炸裂弾(唇マークを飛ばして爆撃)
壁ドンショック(近くの壁を叩いて相手を一時的にビビらせる)
ゲーマ砲(開いた左右両手を突き出してビームを放つ)
威力値:3600




