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結月ゆかりは画面を見つめる  作者: hikoyuki
バーチャルガーデン
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剣道少女はゆかりに取り憑く?

「あのー、いつまで憑いてるんですか?別に幽霊だったとかそういう設定なかったですよね?」


『幽霊じゃなくてウイルスだよ』


「余計悪いじゃないですか!『オグメレンズ』に勝手に入らないでください!」


 【地獄の天使】のキャラクター、剣道少女。災害のごとく征く道すべてを力技で打ち破り、犯罪者には何をしてもよいという信条の下で略奪と拷問の限りを尽くした極悪非道の主人公だ。


 天真爛漫な笑顔で人畜無害をアピールしているが、ゆかりは彼女の所業を知っている。ドット絵のままちょこまかと動き、マウスにへばりつく少女を眺めながら、ゆかりは心底うっとうしそうな視線を向けていた。


「アクセサリーアプリの類なんでしょうね。権限的には悪さはできなさそうですが……」


 ゆかりがアプリケーションファイルの一覧を確認すると、確かに剣道少女のアプリケーションが同梱されている。アプリの動作に必要とする権限も確認したが、特に問題はない。画面に映り込むのがせいぜいだろう。


『そうそう、あとはファイルを勝手に起動したり、いらないファイルを削除したり、外部とのデータ通信をするくらいしかできないの。不便だねー』


「越権行為ができることをドヤ顔で自慢しないでください!まったく、急いでレビューを取り下げておいてよかったですよ。ウイルスゲームを広めるなんて末代までの恥ですから」


 剣道少女をつまみ上げてマウスからどかし、改めて【地獄の天使】について調べる。即刻訂正と警告・通報を入れたのはよいが、それでもある程度のプレイヤーが既にダウンロードしてしまったらしい。SNSでは、話題のゲームとして語られているようだ。


アネモ @pH_m2nYg

ゆかりん地獄の天使プレイしてから剣道少女の亡霊が見えるとか言ってて草


ねるねるね@サイバネティックスサバイバルガチ勢 @nerune_

@pH_m2nYg

曰くつきのゲームアピールだぞ


きゅうり王 @meron_MR25

地獄の天使全クリしました! 久々の良作


N @jk48953265

大会出場のために誘拐犯を生贄にタイムトラベルしようとする外道少女すき


ゆかりさんファンクラブ @godogodinuni

ゆかりさんが見えるって言ってるんだから見えるんだよ!信じてあげて!!!ちなみに僕は見えません


「ちょっとちょっと、完全に幻覚見えてる人扱いされてるじゃないですか!逆に他の人のところにもウイルスしに行ってください!」


『そんなことしたら迷惑だよ。何言ってんのー』


「私の迷惑も考えてください!ストレージの片隅で反省会でも開いていてください!」


「ゆかりさん、うるさいよー。別にいいじゃん、かわいいし」


『さすが! あかりちゃん、話がわかるねっ』


 あかりはソファーにごろんと寝転がり、クッションを抱え込んだままあくび混じりに文句を言う。どうやらお昼寝をしていたようだ。我が意を得たりとばかりに、少女はあかりの下へ大ジャンプで飛んでいき、つきまとい始めた。しかしぺちんと蚊を払うように跳ね飛ばされ、とぼとぼとゆかりの足元に戻ってくる。


「うるさいって言ってた人に、つきまとってどうするんですか」


『だってかまってほしいんだもん』


 ゆかりは再び騒ぎ始める少女を見ながら考える。


(この子……グラフィックは剣道少女のドット絵を採用していますが、【地獄の天使】とはあまり関係ない人のようですね)


 【オグメレンズ】によって拡張された次元に位置するキャラクターである以上、少女は、疑似接触に対応したデバイス以外の物体には干渉できない。マウスの上に座ったりあかりに跳ね飛ばされたりしているのは、あくまで彼女自身が勝手にそういう動きをしているだけで、すり抜けようと思えばもっと自由に動き回れるはずだ。


 その前提を踏まえた上で、いかに小さなドット絵キャラだろうと、本物の剣道少女なら手で払っただけで吹っ飛ばされるはずがない。


「なるほど、私が遊んでいたゲームのグラフィックをまねしているだけで、本当は別ルートから侵入したわけですか。まったく、レビューを再々修正しなくてはいけなくなったじゃないですか」


 『とんだ冤罪をかけてしまいましたね』と、ゆかりはぼやきながら再びレビュー画面を開いた。


 相手の作ったアプリが悪いと散々ケチをつけながらも、実は自分の環境に問題があった。そんな話は古今東西、いつでもどこでも聞く話だが、影響力のあるユーザーがそれをやってしまったら大問題に発展する。……そんなことは言い訳にならない、少なくともゆかりはそう考えていた。


「レビューを二転三転させて『勘違いでした』だけじゃ済みませんからね。今回の経緯はまとめておきましょう。……一応尋ねさせていただきますが、なんのために来たんですか?」


 ゆかりは引き出しからグローブを取り出し、右手に装着する。そして自称剣道少女の頭を指先でつまみ、ひょいと持ち上げた。


『ちょっとちょっと、暴力はんたーい!人権が侵害されてる!』


「早く話さないと、このままごみ箱にドラッグ&ドロップしますよ」


『えー!?もうわかったよー、話すから離してくださいなー』


「話すだけに?」


『え?』


「……なんでもないです」


「やーい、ゆかりさん滑ってるー」


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