亀裂は知らぬ間にできるもの
カク視点を追加と言ったな、あれは嘘だ。
次回からだす.................多分
三人の訪問者を見送り一人の少女が王の間へと入る。
「我らが太陽、月、星の支配者、わが主よ
どうか私の目を潰さぬようあなたの眩さを収めください
どうか私の耳を壊さぬようあなたの高い声を下げてください
どうか私の声が消えぬようあなたのお慈悲をおかけください」
「卯む、して何だ」
「私にあの召喚された二人の案内役をお任せください」
我が家に着いてほっとする
今日は怒ったり、泣いたり、笑ったり、いつもよりも忙しい日だった。
元凶の二人を先に晩御飯を食べるように言って、自分は秘書室へと向かう。
コンコンコンとノックするとどうぞと幼い声が響く。
失礼しますと一言断って中へ入る。
秘書さんはカリカリと何か書き物をしているようだ
「二人は長の下で団員として戦闘面を磨き、力を覚醒することとなりました。」
こちらを一切見ずにそうと言う。
報告を終えたし、これ以上秘書さんの迷惑をかけるわけにはいかないので出ることとする
入室時と同じように頭を下げて出ようとすると
「あくまで監視よ、情を持たぬように」と言われはっと頭を上げる。
こちらを見ていない、が自分の心を見透かす瞳がこちらに向けられている...そう感じ取った
「し、失礼しました!」
思わず閉める音を強めてしまう。
そこでようやく少女は顔をあげる。
愛らしい顔にはヤギのように後ろにたれた角が額から生えており、口からは小さな牙がチロリと覗かせており人外なのは確かだろう。
その柔らかな頬に指をそえ、見た目から推定される年齢にはそぐわないため息をついた。
晩御飯はバターとしょうゆを大きめに割られたパスタの麺に絡めそれを卵で封じたものをパンで挟んだバパシというものがメインらしい。
昼抜きでお腹がすいていたのとバパシ自体おいしいのもそうまとまって久しぶりにおかわりをした。
やばい太りそう、なんてちょっと女子っぽいこと考えていたらめっさ笑われた。
食べっぷりがいいとおっちゃん達がバシバシ背中を叩いてくる。めっさ痛いっす!パイセンやめて!
「しっかり食べておきなよ!お兄さん」
そういって目の前の席に山盛りのバパシを乗っけた女性が意気込んでいる
この人は
「えと…朝のお姉さんですか?」
「あらやだ!お姉さんだなんて照れちゃうわね~バパシいる?」
「バパシよりも、お名前伺ってもいいですか?」
周りの男達がぎょっとする
「おやおや、彼女さんの前でナンパだなんて大した男ねぇ。」
彼女と言いながらカクの方を見る。
カクは彼女ではないと誤解を解こうとする
「あ、あの」
「その肝に免じて教えてあげちゃうわ」
あ、話は聞かないスタンスデスカ…。
「お姉さんはねぇ、アレスティアっていうのよ
ティアって気軽に呼んで」
「はぁ、あ、後カクは彼女じゃないです。」
「あら!?やだもう、お姉さんってばまたまた厄介しちゃった感じ?」
はんせーはんせーと言いつつバパシを大口でパクパクと食べていく。
一応話は聞いてくれるようだ。
...てか人ってこんなに口を大きく開けられるのか。
「それでカクちゃんはどう?ここの様子は?」
ぐいっと豪快に口元につけたソースを拭い、優しい口調で訊いてくる
「ぇ、あ、はい...ぃいです。」
アレスティアさんは言葉少ないカクの返事に大袈裟にそっかそっかと頷く
「無理しないで自分のペースで慣れればいいよ、お姉さん気長に待ってる」
そう言ってソースを拭った手とは反対の手でカクの頭をぽんぽんとたたき、優しく撫でていく。
あれ、この人もしかしていい人なんじゃあ?
「二人とも遅くなってすみません」
報告を終えたコクラが近づいてきた...なんか表情暗くない?
「あら、コクちゃん
お疲れ様ぁ~、お姉さんが抱っこしよう」
「け、結構です」
「もう、コクちゃんってば
いつまでたっても私にはですますちゃんなの~?」
「アレスティアさんは僕よりもだいぶ年上でしょう」
「ん~コクちゃん!女性に年上なんて失礼しちゃうわ!」
「てか、なんで二人もこんな人と食べてたんですか!」
「ん~?流れ?」
「流されないで...。」
コクラ...今までこうやって弄ばれてたんだろうなぁ。
朝のときにうざがらみするって言ってたけど
なるほど、流石の彼でもこれなら小言をもらす
「...それでは明日、長達を紹介してくれる人にお願いするので。」
「コクちゃん、お疲れ」
「コクちゃん、大丈夫?」
「お二人までコクちゃんって呼ばないでください...。」
げっそりした顔のコクラを見送り自分達は風呂に入りさっさと寝る準備をする。
「っはぁー!疲れたあぁ!」
「そうだな」
本当、色々あった
コクラが王宮内では虐められていたこと
ゲームではああいうタイプの魔王は王道だけど、あぁやってまじのやつみたらまじぱねぇっす
おれ、たたかうとかしぬとかこわいけどおさななじみのらんたそのためにがんばんでハイ(´∀`∩)
...疲れが語彙力に出てるのかもしれない。
今日はさっさと寝るに限る。
ごろんとベッドの上に転がる。
括られていない長い髪がばさりと広がる。
ここでの明かりはろうそくで、消そうと思えば手元にあるのですぐに消せる。
何もすることはないし消すぞーと声をかけ、火を消した。
シン......
....ンフッ..フフッ
ちょ笑うなよ、俺つられやすいんだから...ンフフフ
ごめん、いったん爆笑していい?…は?あははははは!ちょまははははちょぶははあーはっはは
ガチャッ
「うるさいですよ!おふたりとも!」
こうやって夜が更けていった
朝になって昨日と同じように髪を括ってもらう
んー
カクさんよ 快活あまる 夏これど やかましさでは 格違いかな
よし、いい出来だ
なんなら「カクさんよ」と「夏これど」を逆にしてもありだな
その後、何事もなく服を着替えて食卓へと行った。
ご飯を食べてる時にかくかくまおまお言っていた子が花を置いてすぐに去ってしまった。
変な名前付けたお詫びらしい、そのあだ名に全く怒っていないので誤解を解きたかったがその時に長の案内人が来てタイミングを逃してしまう。
「これから団を紹介いたしますわね。私はメンチェレーフと申しますわ」
「あ、俺はマオと言います、こっちは」
「…カクです。」
ちゃんと言えた!偉いぞ!カクちゃん!
「マオ様にカク様ですね、よろしくお願いいたします」
ドレスの裾をクイッと持ち上げ右足を左足の後ろへ運ぶその動きは手慣れたものだ。
Oh...THE貴族ちゃん...
「では長達がいるカンパニーへ行く道中に、長とはどんなものかについて説明いたしますわ」
はーい
「長というのは国王のために戦う兵士の中でも最も優秀であると認められた人達に送られる称号ですの」
へー
「長は兵士の中でも一番強い権限があり、この国の中でも非常に多くの権利を持っておりますの」
ふ~ん
「そして、その長の弟子とも言われるのが団員ですわ」
ほぉ~んってだめだだめだ、ちゃんとここで訊いとかないと
「質問いいですか?」
「なんでしょう?」
「この国で一番強い長って誰ですか?」
「え?あぁ...えっと、一番はガレオーク様ですわね」
メンチェレちゃん、なんか歯切れ悪いな
「どれくらい強いんですか?」
「ガレオーク様のお弟子様が生きる伝説と評されるのに対してガレオーク様自身は目に見える神と称えられているほどです。
魔導の面も格闘の面…どちらもまさしく神と呼ぶにふさわしい強さです」
「へー」
「あ、あの、もしあのお方の団員になろうなんて考えているのであれば止めた方がいいです。」
グルングルンに巻かれているツインテールが震える。
「なんでですか?」
「...ガレオーク様はあのお二人以外弟子は取りません。
なによりあなた達は魔導の力が目覚めていないんですよね?」
「ん?あぁ、これから力を開花するところだな」
「なら諦めたほうがいいです。」
なんじゃそりゃ
「じゃあ、次に強いのは?」
「次に強いのは当然お弟子様のガルク様とオールレ様ですわね。」
ピンク髪ツインチェレーフちゃんはこの二人の補足をつけてくれる
「ガルク様は女性ですが、強気なところやふとした時の凛々しさ、また心強い言葉をかける優しさと天然なところから男女どちらからも愛されておりますわ。」
男前女子っぽいな、女子高の子かなにか?
「一方でオールレ様はガレオーク様のお弟子様...ですが、本当に尊敬しているかは疑わしいものです。なにやら裏で企んでいるのではと、あ、で、でも強さは本物ですわ!」
とってつけたような強さ主張よ...。
「お二人はそれぞれガルク様は格闘面がオールレ様は魔道に秀でておりますわ。」
そこでグリングリンチェルちゃんがこちらにクルリと向き直る
え?何何?目と目が合う~的な?ホラーフラグの次は恋愛フラグとか困るんだけど
「えっと...」
「うんうん...マオ様はオールレ様の、カク様はガルク様のもとがいいんでしょうね。」
ぼそっとつぶやく
「...もしかして各々適性とかあるの?」
うんうんとチェルチェルグリンちゃんが頷く。
「マオ様は特にヒーラー型ですわね、オールレ様の所は攻撃型の魔導師が多いのでランクは下がりますが長は変えた方がいいと思いますわね」
え?俺ヒーラー?
「カク様はアタッカー型ですはね、ガルク様は守りを優先するディフェンス型なのでカク様もまたランクを下げた..方が...。」
そういやカク自己紹介してから何も喋ってないじゃん、流石になんかしゃべれよ
チェルチェル麺ちゃん気マズそうじゃん
と思って顔を覗き込むと
顔が文字通り真っ青だった。
「か、カク、大丈夫か?」
コク、コクと頷くが説得力がない。
とりあえず話している間に割と移動していたみたいで昨日見た王宮が近くに見える。
どうやらカンパニーは王宮の隣にあるらしくもうちょいで着くらしい
流石にこの調子で連れて行ったらまずそうなので回復するまで待とうということになり噴水の近くにある座り場にカックカクを座らせる
大丈夫か~?しっかりしてください!と両サイドからカクに声を掛け合っていると空から
ぼふっ
おんなのこ?が...。
「が、ガレオーク様!?」
なるほど、この人?がガレオークか
草食動物のような足に、真っ赤に血塗られたような紅い髪、腕からは猿人のような毛が生えておりよく見ると左手首から先が無い。また首は光っていて初めは何か分からなかったがそれが魚のうろこが太陽光を反射した光であることが分かる。
体の部位の位置こそは人間と同じだが、これを人間だといいきることは到底できない。
メンチェレーフが神のように称え、怯えていたのも無理は無い。
スタリと着地する様はカエル、こちらを振り返る様は雪男のようだ。
ちょうど良かった
「あなたがガレオークさん...なんですよね?」
「...N?小童、私ni用cka?」
顔の端から端までさける口がパクパクと動く
…なるほど、人間から遠い見た目ほど話し言葉が分かりづらいのか
「俺はまだ力が覚醒していない
すぐにでも覚醒したいから弟子にしてくれないか」
「お、おやめなさいまし!あぁ、ガレオーク様どうかこの罪人にお慈悲を!」
後ろでなんか言ってるけども知らない
俺は早く強くなりたいんだ
すぐにでも力をつけて...少しでもカクの負担を
ぎゅっと拳を握る
脳裏にアイカの姿がよぎる
俺はあの時から絶対、カクを...カクだけでも守ってみせると決めたんだ!
もう、あの時みたいな泣き顔見たくはない!!
まっすぐにガレオークを見据える。
すぐにでも力をつけれるようになるならどんな化け物の下へでも行ってやる
ガレオークは緑色の瞳をくるくる回しながらこちらをじっと見つめている
さぁ、化け物め!俺を地の底にでも連れてゆけ!
俺に力を早く!!
すると、突然胸が締め付けられる
「!!??...っっ!!!」
はぁ、かはぁという自分の呼吸音が他人事のように聞こえる
心臓を鷲掴みされたような、胸をぐっと圧迫される感触が自分の方向感覚を奪う
「へーっ...はっ、ひゅーーっ...あ、あぁひー」
体がどうっと倒れて、暗くなっていく視界の中でエメラルドの宝石がグルグルと瞬いている。
ふぅふぅと肩で息をしながらも負けるものかと睨み返してやった
こんな、...こんなんで、まけてたまるか...っあ!ぐっそぉぉおお、いってええぇぇえ
その反応をお気に召したのか周り一帯にぎーっぎーっと奇妙な音が劈く。
「気に入っtahzow、小僧。Daが、私はunknow二人以外に弟子をとruitもりwarnalい。
そcordaだ、弟子の団員tornaる推薦状は書いてteiyarolう」
薄れいく意識の中で左手に何かされたらしいとそこで完全に意識が途絶える...。
「マオ」
「マオさん!」
「「マオ/マオさん!!」」
「今目動いた!?大丈夫!?マオ!」
「マオさん!止めれなかった私を罵ってください!早く、なんでもいいから喋ってください!!」
なんだよおおげさだな、とこえをだそうとしたがいきしかでてこない
とりあえずおちつかせるためにうでを
...あれ?うごかない。
とにかくぶじをつたえないとゆびうごけ...!
「あ、指が!マオ!しっかり!」
かくがてをにぎっているのをかんじる
「マオさあぁぁぁん!」
ちぇるちゃんの涙が頬を伝ってくる。
?
!だんだん動けるようになってきてる!
ガバッ
「「「...。」」」」
「あ...オハヨ。」
二人から熱烈なハグを貰ったのは言うまでも無い
「もう、心配しましたよ!」
「ごめん、チェルちゃん」
「なんですの!?その名前は!」
品性のかけらもないとプンスコ怒ってそっぽ向かれた
「...本当に心配かけてごめんな」
頬がしっとりしている。カクが泣いてないので全部チェルちゃんの涙によるものだろう
「...別に!元気になったならいいんですわ!...変な目でこっちをみないでくださる!?」
どうやらツンデレ味のチェルチェル麺らしい
「じゃあ、俺今から行ってくる」
「え!」
「ど、どこにですの!?まさかまたなんて馬鹿な真似!」
「違う違う、流石にアイツには会いにいかないよ。」
「アイツ呼びはお止めなさい!カンパニーへの暴言、暴力は犯罪となっておりましてよ!」
チェル麺が叫ぶ
「で、どこいくの...?」
「アイツが弟子の下へ行けってさ、ということでオールレさんの所行ってくる」
「だからアイツ呼びはお止めなさい!!」
チェルチェルのサイドについた麺がぶんぶんと横に揺れる
「それじゃ」
「お、お待ちなさい!単独行動は許しませんわよ!」
ぶるぶると震え顔を青ざめさせながらしがみ付く
絡み麺チェルチェルの誕生だ!
というかこの反応...また怖い人なのか。
「チェルちゃん、オールレさんってどんな人だ?」
さっき聞いたことだけでは詳細が分からない
律儀にもチェルちゃんではありませんわ...。と返した上で続けて言った。
「私自身よく知りませんのよ、無口とぐらいしか...
腹に何を抱えているか分からないとか、王への忠義を翻す野心がある男ともききましてよ」
要するに真っ黒ってことか
まぁ、その方がストイックそうだしいいかもな
「...ねぇ、マオは本当に戦いに参加するつもり?」
今までほとんど何も言わなかったカクが尋ねる。
「そうでもしなきゃ帰れないだろ?」
「でも、戦いって人を傷つけて..!人を殺すってことよ!
分かる!?殺すのよ!」
人を殺す
いまいちしっくりとこない
「ま!野蛮ですわね
私達の国でそのような事はなくってよ!」
「え?そうなの」
「えぇ
罪人は例外ですが、人間を殺せば立派な殺人罪でしてよ。
昔は戦争していた人間の国である隣国とも今は終戦して協定を結んでありますわ。
人間と人間の間に殺し殺されの理由がなくってよ」
「人間はか?他と戦っているのか?」
「えぇ、魔人軍ですわ」
なんて、話しているうちにオールレさんがいるカンパニーの前へたどり着く。
コンコンとノックする。
...両腕にプルプルした震えがきているのだがどうしたらいいのだろうか
そんなことを考えていると中からハg、スキンヘッドの大男が出てきてなんだと訊いてくる。
オールレさんに会わせてくれと率直に言うと呆れた様子で帰れと手でしっしとする。
しかしガレオークに言われたと言って自身の左腕を見せる
カクとメンチェレーフがぎょっとさせる
無理も無い
そこには黒い蛇のタトゥーのようなものがいれられており、ところどころ血赤色の石が腕に刺さっておりそこだけ青紫に変色しているのだ。
スキンヘッドやろうは俺と腕を見比べてお前だけ付いて来いと行って奥へ進んでいった。
「それじゃあまた後でな」
ここで別行動することとなった
ここからだ
俺らが変わり始めたのは
俺らの運命が
信念が
全てが変わったのは___。
女性に年上は禁句です。大人っぽいと言って誤魔化しましょう
後、静かな時ほどなんか急に笑いこみ上げてくるよね、なんでだろね
ということでここら辺からドバドバキャラが増えると思います
出来るだけ皆さんに「あ、こいつこんなんや!」と思ってもらえるように
おこりん坊将軍マオとコミュ障限界突破なカクに面白可笑しくキャラを弄ってもらいます
(こういう時だけ二人のオタク設定がたしゅかりゅ~)
『追記』
バパシなるもの(本文のバパシにハムやソーセージをはさんだ)を家で作ってみましたが割とおいしい
てか、バターと醤油の組み合わせが最高だわ
この味によってマオ君の味覚を決めようとしていたんですけど(ちょい味覚が狂ってる系みたいな)
ご年配の方以外なら普通においしいって思う味で困る...