破れた幕はあがるだけ
ふわふわゆらり
ここはどこだろう
「ねぇ、真央君」
そのこえは...
「いっしょに遊ぼうよ」
あそぶ?なにで?
「そうね...これなんてどうかしら?」
なんだろう
「あの子を殺した、あんたのトラウマ克服ゲーム」
…は?
「ほら、あっち見てみなよ」
言われた方を見る
血まみどろの彼女がこっちに向かって泣き叫んでいる
あぁ、ぁあぁああ…見間違えるはずもないあの子がいる
「ほら、邪魔なんだよ!」
蹴られた彼女が劈くような叫び声をあげる
まだ生きたかった死者の鳴
思わず耳をふさぐ
やめて くれ、おれはそんなののぞんでなかった、やめてやめて、いやだ
耳をふさいでも音の振動が手を、喉元を、心臓を揺らす
ゆるしてごめんいやいあああああああああああああ
「真央!」
はっと瞼を開ける。
隣を見ると夏久がこちらを見ている
夢、か...。
落ち着いてきたので大丈夫だとジェスチャーで伝える。
するとキーッときしむ音がしたのでそちらを見る
小さな子が人を運んで部屋からでていき、入れ替わりに青年が入ってくる。
...なんなんだ、ここは。
「おや、目を覚ましましたようですね。
具合が悪いですか?顔色が優れませんが」
コイツなんで耳とかしっぽとかつけてるんだ?コスプレか?
「...色々聞きたいんだが、まずここはどこだ?お前の家か?」
顔も特殊メイクしてるとか最近のヤツらは凝ってるな
この衣装は俺知らないな...知らないサークルのオリキャラかな?
いやいや、もしかしたら新しい漫画でこういうの出たかもしれない
...ってかコイツしゃべらねぇな。え、もしかしてこれ拉致られてるの?
ここまで考え夏久の方に助け船を求め顔を見つめる。
何も知らないらしく小さく顔を横に振る
「...あなた、今ここはどこだとおっしゃいました?」
やっとしゃべったかと思うと質問を返される
「俺、君とは初対m...もしかして会ったことある?」
「いや、ないですけど。…ないですけどねぇ...。」
なんだその反応
もう一度夏久にSOSを出す。
夏久は激しく瞬きをしていた...どうやら何も聞かされてないらしい
...もしや瞬きでモールス信号を発信してるかと思ったが、本当に何の意味もなさそうだ
「うーん、とりあえず僕は君たちには食事の提供場とお風呂場と寝室を紹介するよう言われているんだけど。
...ひとまず、案内してもいいかな?」
「え、うん、まぁ..って俺達はここで寝泊りするってことか?」
「えぇ...そ、そうですね?」
やっぱり拉致られてるじゃん
夏久に狼煙をあげたが、返事がない
ただのかかしのようだ。
「まぁ、そういうことなら..案内よろしく、えぇっと」
「おっと、名乗り忘れておりました。
僕はコクラと申します、以後よろしく。」
「あぁ..俺はマオ、でこっちが」
「...っあぁ、えと、カクです、よろしくお願いします」
「マオさんとカクさんですね。了解いたしました。」
夏久さーん、しっかりしてくださーい!という声は心の中にしまいこみ
ついてきてという声の旗を頼りに居候場所めぐりのツアーに出ることとなった。
「...っと大体こんな感じです。
もし不備があったら言ってください。
一応、僕はあなたたち新z...いや、あなたたちの世話係となっていますので」
「...はぁ。」
様々な所を巡り、終着点の元の初めの部屋へとたどり着く。
色々見て回るのってこんなに大変だったっけ?
ひきこもってから体力減ったのかもな
「詳しい話は後日聞くこととなると思います。
ここの家の主が今倒れておりまして、彼の秘書係がそれに付き添っているので現段階では詳しく説明できる人がいなくて...申し訳ありません。」
「いや、あなたが謝る必要はないですよ。」
明らかにその主人が何か俺らにしでかした、あるいはそう仕向けただろうしな。
目の前の彼は今まで言動がおかしい部分は多々あるが、本来はスマートな物腰であろうに会ってすぐの時、動揺しまくって崩れた口調だしてたしな。
他にも人はいたが皆一様に自分は彼の召使いだって言う。
こんなん主人の怪しさむんむんじゃねぇか
...強いて他をあげるなら、秘書だろうな
テキトーな脳死推理だけど、黒幕はボスとか秘書だってじっちゃん言ってたし
クトゥルフあるあるだし?
「お気遣いありがとうございます。」
「あの、少し良いですか?」
今までだんまりを決め込んでいた夏久がそろりと言う
「なんでしょう?」
「えと、その、耳に触れても良いですか?」
え、そこ行っちゃうのか?
「え」
コスプレイヤーコブラ…じゃないコクラさん固まる
「だめでしょうか?」
「あ、いや、別にだめじゃないけど。」
また口調崩れてるぞ、コックリ...じゃないコックラ、でもないコクラさん
「では、失礼いたします。」
「んっ」
うわ、なんだこれ...というかこの反応、耳の動き...。
「...すみません、ありがとうございました。」
「いえいえ、それでは僕はこの辺で。」
スタスタとコクラさんが去る。
ドアがバタンと閉まったところで二人して顔を見合わせる。
認めざるをえない、彼は
「「獣人だ...。」」
一方、コクラはというと突然女性に耳を触られとんでもない役を押し付けられたものだと思い、秘書係のもとへ報告しに行く。
コンコンコンとノックをすると中から幼く高い声が入出許可を出す。
「失礼します。」
「新人係ね?ご苦労様。それで彼らはどう?使えそう?」
それが...と彼らの言動を事細かく伝えると少女の顔はだんだんと真剣みを帯びてゆく。
最後まで伝え、以上です。と告げると何か会得したように深く頷く。
「なるほど、報告ありがとう。
ついでにもう少し働いてもらっていいかしら。」
「えぇ、構いませんよ。ちなみに何をするかお聞きしても...?」
「今から王に謁見するの、あなたには彼らの言動の証拠人としてきてもらうわ」
「お、王にですか!?」
「えぇ、ぐずぐずしないで速く支度して」
「は、はい」
コクラは厄介なことに巻き込まれたと己が運命を生まれて初めて呪った
ネタに踏み込みすぎたかもしれない