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壊れゐく日常

「ほんっっっとぉにごめん!」

先程タックルした少女、夏久が勢いよく頭を下げる

「...いや、返事しなかった俺も悪かったし、丁度やめたいと思っていた頃合だったしな。」

括らずにいた長い髪の先端をいじり、別に気にしてないと首を振る。

「でもさでもさ!あれって確か巷でやべーやつwって言われてるやつでしょ!?

セーブ機能無し、移動はスティックじゃなくてボタン連打で...っていう」

長い髪が頭を下げるたびに強風に弄ばれてるかのように動く。

知らない人が見たらだいぶ大袈裟なリアクションをとる子だとか思いそうだなぁ...。

「攻撃に当たったら視界が見えづらくなるというオマケつきにこれで教育系っていうんだから…」

「ハイ、百点満点の回答だし怒ってないしとりあえず落ち着きなよ」

ホラーに耐性がない訳ではないけど...いや、やっぱ、その貞子ヘアーは怖い。

「むっ、同じゲーマーとしてこれが黙っていられましょうか、君!?」

ビシッと俺に指をさしてくる貞子...「君」って何キャラだよ

「あー、このゲームの周回の時用のお菓子買いに行こうとしてたところなんだよ

これ時間かかるしさ、途中でなんか食いたくなると思って」

と、言っていくつかあるブックマークの項目の内の一つを選び、ログイン画面を映す。

「ということで買い物の付き合いでチャラにしよう、それでいいだろ?」

ムーッ...と納得のいってないご様子の貞子様

「荷物持ち係はお前な」

もっともっとと手招きをしていらっしゃるミス・サダーコ

「えー…じゃあ、俺の髪括ってくれない?」

乞食貞子にかかっているラッスンゴレライの呪いがまだ解けないらしい

「うなー...もう、じゃあこれから毎日俺の髪を括ってくれ」

唐突な落とし文句にピタリと動きが止まる

どうやら魔法を解く呪文はこれだったようだ。

「ぃゃだぁ…私には二次元の夫というものがいて」

「茶番はおいて、さっさと行くぞ。そんな時間があるわけでもないし」

「はぁぅい」

傍から見ればただの夫婦芸である


夏久は真央の男にしては長い髪を愛用の櫛で機織りをするようにスッーと流していく。

学校へ行くことをやめたあの日から切らずに伸ばし続けている髪は真央の背中を撫で付ける。

夏久がいつも気にかけてくれているおかげか櫛が引っかかることなく抜けていく

雑でもいいと言っているのに毎度毎度頭を撫でる様に髪を掻きあげ圧のかからないように髪を括ってくれるのは彼女の繊細な優しさを表しているようだ


「ほら!できたよ」

「んっありがと」

鏡を見ずとも綺麗に出来上がっているであろう髪型を感謝し早々に出る準備を済ませる

「...髪切りたかったら私切るの手伝うよ?」

今までしなかった提案をする夏久

成長...してるんだな、夏久は

「...まだかもな。」

俺はまだあの時から動けそうに無い

夏久はそっかと言い何事もなかったように外に出る

いつか俺も踏ん切りつくのかな?

...なーてな、ちょっと俺らしくないか



「えっと…それで、お菓子は何買うの?」

「あぁ...えっとだな」

さっき夏久がポテスナ持ってきたし何かチョコ系とグミ系買えたらいいかな...

いやでも新商品が激マズの可能性を見越して昔からの塩味ポテスナも買ったほうが


...などと考えると夏久がヒシッと腕をつかんでくる

「...またか?」

こくんと夏久はうなずく

夏久は外に出るとき俺の腕をつかみたいらしく、それはまぁパッと見では恋人のそれのようにも見える。別に特段不便とも思わないのでそのまま放置している。

「まぁ、しゃーねぇな。俺の腕は高いぞ。

驚愕の1000ペリカだ」

「…それむっちゃ安いじゃん」


すると耳をすまさずともあっちからヒソヒソこっちからもコソコソと。

...ほんっっとうに外の奴らは噂話とか好きだな。

「...さっさと行くか。」

コソッと夏久に囁いて、返事を待たずに早足になる。


世界はどす黒い

俺たちの白にも真っ黒な墨をかけてきて

一体何がしたいんだよ


「ねぇ..マオ」

俺らが悪いわけじゃねぇのに

「ねぇ、真央」

「…んっ?」

怒りで気をとられていたらしい、夏久が揺すっていたことに今更気づく

「この黒い霧なに…?」

「えっ、!?」

本当に真っ黒になっている

先程まで怒りに震え、地面しか見ていなかったため気づいていなかったが自分の視界は明らかに暗くなっておりひんやりとした蒸気が露出した肌を撫で付ける

一体どこから?

いや、それよりこれでカクと離れたらマズイ!

「絶対俺の腕を放すな!」

なんだか非日常が歩み寄る音がした気がする

「わ、分かった!」

そういうや否や痛いほど俺の腕を締め付けてくる


そうしている間も遠くに見えていたカラスが、大空が、道路が闇に飲まれていく

そしてとうとう何も見えなくなり盲目の恐怖が彼らを襲う

唯一繋がれた腕だけが彼らがいるという証明だ。



しかし、それすらも断ち切られる

突然殴られたかのようにグラリと頭が揺らめく、しかし殴られた時のような鈍い痛みはない

真央は自分の意識が遠のくのを感じる。

なんだこれ...

「か、く...ぜったいはなすな、ぜった..いだ」

「ま..」

おと聞く前に完全に意識が飛ぶのを感じる。



それが最後に見た俺達の元の世界だった。

意味深伏線張り回です

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