初めてのお客さん
３ヶ月程経っただろうか。
レギュラーになり、寮の部屋を掃除したあの日から。
相変わらずヘルプとキャッチしていた。
お客さんなど出来ない。
出来る気配もない。
レギュラーとして３ヶ月程働いて気づいた。
売れてる人間が強い。
どの業界でも当たり前のことやが
売れてるという理由だけでさらに売れる。
有名というだけでさらに有名になる。
ラーメン屋さんにフラッと入ったとき迷ったら
とりあえず売上1位のやつ買わん？
そういうことだ。
冷静に考えればそうか。
女の子側の目線で見たとき
かっこよくて、売れてそうで、金持ちそうで、話が面白い人と
見た目良くなくて、売れてなさそうで、金なさそうで、話もいまいちの人
どちらがいいかなんて言うまでもない。
たまに売れてない人が好きという人もいる。
しかし、そういう人は金を使わない。
金を稼ぐ能力もない(ここでの稼ぐ能力は風俗やキャバクラでという意味=見た目がよくない)
そんな新人がのしあがっていくにはどうするか
キャッチするしかない。
それはわかっていた。
しかし、このキャッチすらうまくいかない。
ナンパなんかしたことない。
この時期ちょっとだれていた。
特になにも変化もなく、ヘルプ三昧。
今日も営業が始まった。
まだ店にはお客さんがひとりもいなかった。、
マキオさんがマイクで言った。
「キャッチに出たい人～」
すぐ名乗り出た。
ユーダイも名乗り出たため
二人でいくことになった。
ユーダイは俺より後に入店したが、レギュラー歴は俺より少し長い。
「ユーダイさ、辞めたいとか思ったことないの？」
外に向かいながら唐突に聞いた。
レギュラーなって３ヶ月、同期は半分居なくなっていた。
そんなもんだ。
「今は特に辞めたいとかはないっすね～」
メンタルが強いとか、ホストとしてバリバリ売れたいとかより何も考えてなさそうだった。
とりあえず店の近くをうろうろする。
「とりあえずひっかけ向かうか～」
通称「ひっかけ橋」
ここの人通りはすごく、ホストから居酒屋のキャッチ、ガールズバーのキャッチ、スカウトなど様々な人間がいる。
何人か声かける。
無視される。
まあホストのキャッチなんか基本的に無視される。
行く気もないのに返事返されるのもだるいが。
あ～今日もヘルプ三昧か。
心の中では思っていた。
売れてる人たちと俺なにが違うんだ。
常々思っていた。
この違いがこの時はまだわからなかった。
これがわかるようになるのは、まだ3年ほど先だった。
もう何周しただろうか。
店の近くに戻ってきた。
そんなとき女子大生みたいな二人組が歩いていたのを見つけた。
「いきなりすいません！お姉さんホストとかどー？面白くなかったらおごります！」
これがサキとの出会いだった。
