かっこいい同い年
初日は何席か着いた
Kちゃんの席以外あんまり喋れなかった。
「ゲンキー！ちょっとちょっと」
セラさんにVIPルームに呼ばれた。
「今日どうだった？酔ってない？」
うちの店は新人に営業終わりに
こうやって個人的に話を聞くらしい。
「酔ってないです！あんまり喋れなかったですね。てかなに話せばいいかわからないですわ」
「最初はそんなもんよ！まあ慣れと経験も大事やからな！俺も最初はまったく喋れなかったからな～」
嘘だ。
セラさんは喋れなかったハズがない。
まあ相手のことを想った嘘なんだろうとすぐわかった。
セラさんは基本的に優しい。
人情味があるというか。
カナデさんからも聞いたがセラさんはそこがメリットでもありデメリットでもあるらしい。
ホストにおいては優しすぎるのはよくない。
そんなもんか、なるほど。
かと言って根が優しい人が仕事のために厳しくなれるかと言ってもそんな簡単には変わらん
その後すぐ次の日大学の授業があるため帰った。
「お疲れ様でした」
先輩たちに挨拶して帰った。
マキオさんはタバコを吸いながら伝票を集計してた。締め作業である。
毎日しなければならないらしい。
それから三日後出勤2日目。
「おはよ」
一番最初にマキオさんに出会った。
店は家から3駅程の所にあった。
いつもは自転車で店に向かっている。
飲酒運転？だからなんだよって感じである。
しかし、この日はずっと雨のため電車で向かった。
自転車で行けば20分くらいだが
電車だと3～40分くらいかかる。
この日は電車だった。
雨が強い。
基本的に自転車で移動してる俺にとって電車はちとめんどい。
いつも通り掃除をしてヘルプをして1日が終わった。
特にってなにっていうことはなかった。
営業中は。
俺のホストベクトルを本気の方に向ける事が起きたのは営業終わりだった。
「お疲れ様です」
先輩たちに挨拶をして傘を持って帰った。
来たときより強い雨になってる。
水溜まりもそこらに出来ている。
そんなに酔ってないが
酔ってたら大変やろな～と思いながら歩いていた。
歩いて10分くらい経っただろうか。
タクシーが僕の横に停まった。
「なんでこんなとこに止まるんやろ」
みたいな中途半端な場所だった。
無視して歩いてたら
「ゲンキー！」
と呼ばれた。
みたらタクシーの窓を開けてカナデさんが叫んでた。
「歩いて帰るの？」
「そうっすね！いつもチャリなんですけど今日ずっと雨だったし。まあ40分くらい歩けば着きますし～」
「タクシーでどのくらい？」
タクシーなんか使って帰ったことないから正確な金額はわからなかった。
適当に答えた。
「1000円くらいですかね？」
「じゃこれ。またね～」
2000円を俺に渡して去って行った。
いやかっこ良すぎるだろ。
たかだが2000円だが
出勤3日目のこんなやつに渡すか普通。
同い年だがレベルが違いすぎる。
その時だった。
俺もあんな人になりてぇ
と思ったのは。
その時、自分の中に
ホスト本気スイッチが出来た。
と同時にオンになった。
後から聞いた話だが
カナデさんは店から歩いて10分くらいの所に住んでる
