ミユ⑥
その日のトクちゃんも相変わらずだった。
「おはよー!」
ほとんど反応がない。
だが何人か好きなヘルプはいるようだ。
特にセラさんとカナデさんのことがお気に入りの様子だった。
セラさんはヘルプの天才なので、ヘルプとして色々なお客さんから好かれる。
トクちゃんもそんな感じでセラさんのことを好いていた。
カナデさんのことは異性として好きのような感じがした。
カナデさんは普通に面白い上に男としての魅力もある。
かといってカロリ数本飲む程度なのでカナデさんもセラさんもそんな席に着いたりしない。
俺が気に入られてないってことは俺の接客レベルが低いか。。。
ミユとはいつも通りの他愛ない会話をした。
スグルさんも気を遣ってかたまにこっちにも話を振ったりしてくる。
カナデさんがヘルプに着いてくれた時にミユにシャンパンをあおってくれた。
そこでヴーヴ・クリコの白がおりた。
けっこうあっさりすぎてびっくりした。
その当時ヴーヴ・クリコの白は4万円。
俺からしたらめちゃめちゃありがたかった。
4万円の売上なんてカナデさんなどからしたらまだまだではあるが、ずっと0の俺からしたらデカイ。
シャンパンコールが始まる前にスグルさんに裏に呼ばれた。
「トクちゃんお金持ってるかもしれない」
「え、なんて?」
まさかの発言だった。
あんな見た目の人が持ってる?
なに言ってるんだ。
そう思った。
そしたらカナデさんもきた。
スグルさんはその時からトクちゃんの違和感に気付いていたんだろう。
「あ、カナデ、シャンパンコール中にトクちゃんに強めにあおってほしい」
スグルさんがカナデさんにお願いをした。
「了解です。ぶっこみますね」
とりあえず俺から席に戻った。
一緒に席に戻るとなんか一緒に話をしてたんじゃないかと女の子から疑われる。
「シャンパンありがとう!」
「ううん!」
ミユからしたら息子のような感じで俺を見てるのかもしれない。
爆音が鳴り響き、店内が暗くなった。
シャンパンコールが始まった。
M1(そのシャンパンコールをしきる人)はセラさんだった。
相変わらずうるせぇ。
初めての女の子とかはビックリするだろうな~
トクちゃんもビックリしてるんじゃないかなと思って見たら意外といつも通りだった。
シャンパンコールが始まり、俺にマイクが向けられた。
「初めてのヴーヴ・クリコありがとう!」
そのあとミユにマイクが向けられた。
「ゲンキーがんば!」
嬉しかった。
セラさんが次にトクちゃんにマイクを向けるかと思いきや、カナデさんに向けた。
「何か一言言いたいカナデまで3.2.1」
なんでカナデさん?
「シャンパンタワーもらっていいですか!?」
「え、いいよ」
え??
音楽が変わりトクちゃんのシャンパンタワーが始まった。




