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サキ⑥

サキ⑥


その時、ホストをしてから初めての感情が沸いた。




「怒り」




カナデさんにではない。




自分にだった。


好きな人といるのに仕事との両立すら出来ない自分にイラついた。




自分はこんなにダメだったのか。


自分はこんなになにも出来なかったのか。




カナデさんの言っていることは非常に的を得ている。




自分のレベルの低さを恨んだと同時にもっと上にいかなければ、そう思った。




「もっとホストにならないと」




それをより強く思った。




ただ、サキに「別れよう」とも言えなかった。




言えなかった。




その状態で1ヶ月程経ってしまった。


当たり前だが、そんな状態で客が出来る訳もなかった。


売上も上がってない。




カナデさんにもご飯以来特になにも言われなかった。


「なにも言われない」ということが


自分の弱さへの怒りを増幅させていた。




サキとは普通にLINEする程度で会ってもない。




すると営業中に突然サキからLINEがきた。




「別れよう」




サキはそれなんとなくわかっていたらしい。


それを匂わせるようなことを俺から言ったことはない。




「私がゲンキの仕事を邪魔している」




女は感情で動くとよく言うが、感情を読み取る能力に非常に長けていると思う。




別れようと言われたとき、すごくそれを体感した。




「わかった。ごめん。」




それだけ返信してスマホを閉じた。




営業中だったが誰も来ない裏に行って泣いた。


よくわからなかった。




自分に悔しくて泣いてるのか。


好きな人との別れが悲しくて泣いてるのか。




そんなことどうでもよかった。




この時、俺はこう思った。




「カナデさんに勝たないと。そのためには感情を押し殺す必要がある。ホストになりきろう」




感情など無駄なものだと思い始めた。


この時から俺の感情は怒りを中心に回り始めた。




「怒り」




それが原動力だった。




「自分は弱い。しょうもない。」




カナデさんに勝つことで自分に勝てる気がした。




なんとしてでも勝つ。どんな手段を使ってでも勝つ。




営業中はよく飲んだ。


潰れた。




寮に帰ってからも1人で泣いた。




寮に帰ってからはサキへの申し訳なさが強くなった。




この申し訳なさはホストを辞めて結婚するとかでは消化出来ないレベルになっていた。




ホストとして売れてやる


全員を見返してやる


見てろよお前ら


今のうち笑っとけよ


お前ら全員抜いてやる




気づいたら寝てた。




自分を変えよう。




まず美容室にいき、髪を変えた。


人生初の金髪にした。

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