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ルーンゴースト 【改稿版】  作者: ゆめあき千路


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026:呪いの指輪

 ベッドに腰掛けたとたん、ユニスは気が抜けた。


 疲れた。お腹が、グウッ、と鳴いている。

 でも、下のレストランには行きたくない。

 いや、行けないと言う方が正しい。あんな大騒ぎを3回も起こしたのだ。ホテルの宿泊費に迷惑料を上乗せされたら、どうしょう……。


 晶斗の行動も変だった。


 あんな場所で書類に火を点けようとするなんて、錯乱していたとしか思えない。


――いったい、あの書類には何が書いてあるのかしら……。


 予想はつかないでもない。

 ユニスの分は、ユニスの子ども時代からの記録だった。ユニスは幼児期から、シェイナーの才があると、近所に住んでいたシェイナーの師により指摘されていた。

 物心ついた頃には、自分の意思でシェインを使えることに気づいた。


 使える能力は年を追うごとに強くなった。


 だが、そこは感情の生き物である子供のやることだ。

 ついには感情の(おもむ)くままに、湖をまるごと凍らせる事態まで引き起こした。

 人命に関わる被害こそ出なかったが、完全に制御できるようになるまで近隣の住人へは多大な迷惑をかけた。


 フロントで渡されたあの書類。

 あれはユニスの黒い歴史そのもの。


 ユニスは隣室に続くドアをみつめた。

 シェインの透視は使わない。あちらの部屋は、晶斗のプライベートゾーンだ。


――今は購入した装備品の整理でもしているかしら。


 もしも、『あの封筒の中身は何なの?』と訊ねたら。

 晶斗なら説明はしてくれるだろう。


 そうすると、ユニスも自分の分について説明するはめになる。

 チラリとしか見ていないが、あの写真の男の子は、子供の晶斗だ。あのふざけた表情から判断する限り、危険な事故や事件のニュース記事ではなさそうだったが……。


 晶斗は、どんな人生を過ごしてきたのだろう。本人の申告を100パーセント信用するなら、東邦郡で腕利きの護衛戦闘士。知名度も高い。その証拠はあの封筒の中身にある。


 晶斗の身上調査をさせたのはプリンスしかいない。晶斗が何者なのか、把握する必要があったから。もしも危険人物なら、シャールーン帝国内で野放しにできないからだろう。


――この国の監視下にあるという意味では、わたしも似たようなものだし……。


 よし、この話題は絶対に出さないでおこう。

 晶斗も詮索されたくなさそうだった。


 世の中には知らなくて良いこともある。


 封筒には、他にも不可解な品物が入っていた。


――どうしてこんなものが入っているのかしら。


 プリンスの考えは、まったく理解不可能だ。

 またユニスのお腹が鳴った。

 悩んでいても腹は減る。


――晶斗だって、騒ぎを起こした下のレストランには行きたくないわよね。


 空腹を抱えたままでは眠れない。

 ユニスは隣室のドアをノックした。

 おう、と返事がして、すぐにドアが開けられた。


「なんだい?」


「あのね、夕食はルームサービスにしようと思って……って、ええ?」


 ユニスは目を見張った。

 晶斗は新しいシャツとガードベストに着替えていた。ベルトの後ろにはガードナイフと遺跡探索用のアイテムが付けてある。いまから遺跡探索に出られそうな完全装備だ。


「なな、なんで、そんな格好をしているの?」


「護衛戦闘士として契約した以上、睡眠時間以外は仕事体制でいるのがプロさ。どうだ、似合うだろ?」


 晶斗は右目を瞑ってみせた。額には幾何学模様のバンダナを巻いている。暑い遺跡地帯では額の防御と汗取りを兼ねたオシャレだ。


「う、うん、シャツもガードベストもぴったりね。よかったわ」


 とりあえず、素直な感想を述べておく。

 ユニスだって、もし晶斗が実際に装備して似合わなければ、交換に行くくらいは考えていた。必要な武器も持たせたし、これで一安心……と、微笑んだら、


「お、俺様のかっこよさに惚れたか。なあ、惚れちゃっただろ?」


 晶斗が、すごく明るい笑顔になった。


――ええと、晶斗さん、あなたは何を期待していらっしゃるのかしらねー。


 いくらユニスが鈍感でも、ここでうかつに好意を示す危険くらい、わかる。


 晶斗のことは嫌いではない。

 が、お付き合いを始める気も無い。

 ここで考えるべきはシンプルな計算問題。

 晶斗の希望する方向へ、乗るか、乗らないか。


 なら、ユニスの返事は決まっている。


「ええ、とっても素敵な装備だわ。さすがは最高級品ね。こっちにしておいて、本当に良かったわねー!……で、夕食は何にするの?」


「あー……はは、そうきたか」


 晶斗は、すごく残念そうに苦笑した。


「うん、まあ、腹は減ったよなー。フルコースを頼む」


 電話で注文したら、5分と経たずに料理のワゴンが運ばれてきた。

 前菜からデザートまであるフルコースを頼んだのに、えらく早い。


 ボーイの給仕は、きわめて丁寧だった。ただ、愛想良い笑顔とお喋りはまったく無かった。顔色は青ざめて悪く、退室する際の足取りはとても速かった!


「なんか、えらく気を遣われているような……」


「きっと俺たちに関わりたくないんだろう」


 晶斗の推察はきっと正解。

 ユニスは、沈黙をもってこの話題を打ち切った。


 ユニスと晶斗の存在は、従業員の方々に多大な緊張を強いる『迷惑な客』なのだ。

 ちょっぴり傷ついた心は、ちょっと豪勢な夕食で補修して。


 他愛の無い会話と別注で追加したデザートを食べ終えたら、気分はやっと浮上した。


 さて、落ち着いたら、明日からの相談だ。


「あのね、守護聖都へ行く方法だけど……」


 なんとか例の封筒の事には触れず、守護聖都への交通手段を相談したいユニスがつい言いよどんだその先を、晶斗が引き取った。


「ああ、それな、列車に乗るしかないだろ。この町には民間の飛行場が無いもんな。飛空挺に乗るには、黄砂都市へ出ないとだめなんだって? 移動距離と時間を考えたら、ここの駅から列車でまっすぐ守護聖都を目指す方が効率的だぜ」


 晶斗は部屋に戻ってから夕食までの短い時間で調べたらしい。

 そういえばサイトショップでの購入品に、シャールーン帝国と遺跡地帯の地図や冊子もあった。


「そうね、守護聖都へ行って、トリエスター教授にラディウスを渡せればいいんだから」


 そうすれば目的達成。

 ユニスは大金を手に入れ、晶斗は報酬を受け取れる。


「取引が終わって金が入ったら、俺にかかった必要経費を精算してくれ。それで君の護衛は契約完了、俺は東邦郡へ帰る」


「え? ええ、そうなるわね」


 守護聖都へ着けば、晶斗とはお別れ。

 もともとユニスは護衛戦闘士を雇う気など無かったのだから、願ったりだ。


「残る問題は、宰相閣下からの依頼の件だな」


 ふいに切り出された『宰相閣下』に、ユニスはドキリとした。プリンスの事を忘れたわけではない。ただ、晶斗の事をより強く考えていただけだ。


「あの件は忘れよう。依頼はされたが、俺たちは正式には引き受けていない。契約書にサインもしなかった。半月であんな破格の報酬が出る仕事は怪しすぎる」


「そうね。すごい報酬が気にならないといえば嘘になるけど、君子危うきに近寄らずだわ」


 プリンスの名前を聞いた連想で、ユニスは別件を思い出した。

 左手中指には嵌められた、淡い黄金色の指輪。小粒のダイヤがぎっしり埋め込まれていても滑らかなデザインなので、ずっと付けていても邪魔にはならない。


 うっとり指輪を眺めていたら、晶斗が笑った。


「おい、目の焦点が合ってないぞ」


「だって、きれいなんだもん」


「やれやれ、怪しいやつに無理矢理嵌められたってのに、なんで喜べるんだか」


 そこで晶斗は顔を曇らせた。


「いや、俺への報酬が『神の骨の武器(ディバインボーンズ)』だったんだ。もしかして、それが仕事の報酬だったりして。支払いが宝石ってのも、遺跡探索家の間じゃありなんだぜ?」


「あら、仕事の依頼なんてされていないわ。それにプリンスなら、少しくらい怪しくても許されるわ。だって、あのプリンスなんだもん」


「そこまで言うなら、好きにしろよ。俺は知らないぞ」


 晶斗は呆れ返った目つきだ。

 本当に晶斗はシャールーン帝国のことを知らない。

 これはユニスが常識を教えてあげなければ。


「プリンスはね、シャールーン帝国でいちばん綺麗(きれい)なアイドルなのよ。ファンクラブだってあるんだから。わたしは入っていないけど」


「じゃあ、その指輪は、会員証かよ?」


「違うわよ。これは、プリンスに助けてもらったお守りだわ。記念として一生大切にするんだから。なくさないように、きちんと片付けておくわ」


 ユニスは指から指輪を抜き取ろうとした。


「……あれ、抜けない?」


 指輪と格闘することおよそ5分。

 指輪は一ミリたりとも動かなかった。

 晶斗がニヤニヤしてる。


「デザートにケーキを16個も食べたから太ったんだ。貸してみろ」


 晶斗は察した顔でうなずくと、左手でユニスの手首をテーブルへ押さえつけた。右手で中指と指輪をぎゅっと握り、引っ張る!


「ぎゃあッ、何するのよ、痛いから! 痛いイタイッ、イターイッ!」


 ユニスは空いてる手でテーブルをバンバンぶっ叩いた。


「おかしいな、肉に食い込んでいるわけじゃなさそうだ」


 晶斗は指輪を回そうとしたり、指の肉をつまんだりしている。


「動くことは動くから、皮膚に密着しているわけでもない。でも抜き取ろうとしたら接着剤で貼り付けたみたいに動かなくなるってことは……。ちょっと待ってろ、さっき買ったツールの中に……」


 晶斗は自分の部屋から、手のひらサイズの卵形分析器と、ハサミに似たツールを取って来た。ただのハサミにしては頑丈そうだから、金属カッターの類いだろう。


 もちろん、晶斗は指を切るのではなく指輪だけを切断する気だろうが、ユニスは全身から冷や汗がドッと出た。


「あの、もう、いいから! だいじょうぶ、生活に支障は無いし!」


 赤くなった左手をぶんぶん振ったが、晶斗は熱心にツールの取説の小冊子を見ている。


「分析するだけだ。ほれ、指輪をこっちへ向けろよ」


 晶斗は卵形分析器の先端を指輪に向けた。先端がポワッと白く光る。上側に開いている四角いディスプレイが点滅した。


「石は炭素。本物のダイヤだな。リングの材質は黄金にスーパープラチナ……他は成分不明。妙だな、指輪の硬度が測定できない。なにか、特殊な加工がしてあるみたいだ。シェインによる加工かな」


 晶斗は、ユニスの赤くなった指と、外れない指輪を見つめた。


「同じ話をどこかで聞いたことがあるぞ。一度嵌めたら、指を切り落とすまではずれない、シェインを掛けられた指輪の昔話だ……」


 呪いの指輪の物語。

 ユニスも知っている。シャールーン帝国に伝わるおとぎ話だ。


「それって、理紋……いえ、『呪紋』、ね」


 シェインの効力を物品に入れる技術がある。指輪などのアクセサリーに、シェイナーが持ち主の守護するパワーなどを封じ込めて、お守りを作るのだ。


 呪紋とは、文字通り『(まじな)い』である。シャールーン帝国には、いにしえよりさまざまな目的を叶えるための『力ある紋様』が伝わっている。それを用意した物品に描き、シェイナーがシェインを込めるのだ。


 その究極が『(のろ)い』である。


 ルーンゴースト大陸の中世期、王侯貴族の間では、『暗黒の理紋』を込めた豪華な宝飾品を敵への贈り物にすることが流行したという。そういった『呪い』は、現在ではシャールーン帝国のみならず、ルーンゴースト大陸全土で法律によって禁止されている。


 だが、呪紋は現代でも生きている。軽くは標的(ターゲツト)の気分が悪くなる程度から致死レベルの危険なものまで、シャールーン帝国の裏側で密やかに伝承されてきた。


「あの美しいプリンスが、わたしに呪いの指輪を付けたというの。なんで、どうして、帝国の宰相閣下がわたしごときを呪って、何の得があるのよ?」


 もう、泣きそう。プリンスに仕事の依頼で呼ばれた際、シェインで何かされたのは知っていた。けど、呪われるほどの無礼なんて働いた覚えはない。


「それは俺の方こそ聞きたいんだが。宰相閣下に恨まれる心当たりは?」


「あるわけないわ。だって、シャールーン帝国宰相にして、女性の人気№1のアイドルなのよ。わたしは子どもの頃からプリンスファンだったんだから。呪いをかけるなんてひどい!」


「解呪ができるのは、理紋の専門家だな。守護聖都で探すか」


「無理だわ、守護聖都はプリンスのお膝元だもの。まともな理紋師なら国家登録しているし、指輪の出所がプリンスだとわかったら、解呪するまえにプリンスへ通報するわ」


 プリンスに出会って指輪をもらった経緯は、遺跡を出てすぐに晶斗へ話した。

 しかし、ユニスとてプリンスファンの端くれ。2回助けてもらった義理もある。指輪が悪い物などとは、露ほども思わなかった。


 そういえば、あの場にはトリエスター教授もいた。トリエスター教授(シェインの大家)に指輪を鑑定してもらえば良かった!


「なあ、君もシェイナーなんだろ。自分で何かわからないのか?」


「やってみたわよ。でも、シェインで探っても普通のアクセサリーとしかわからないもの」


 民間に伝わる呪紋は、あからさまに怪しいから見分けが付く。

 あるいは神殿が発行する守護の紋を逆転させた安易なものだったりする。シェイナーなら込められたシェインが感じ取れるから、一目でわかる。


 だが、真性の『暗黒の理紋』となると、大神官ですら見抜けないという。デザインや材料の何が暗黒の理紋なのか、すぐに見破られるようでは政敵の暗殺には使えないだろう。


「高度な呪紋なら専門のシェイナーでも解読は難しいそうよ。うう、どうしよう……」


 左手中指が痛い。指輪の周りは引っ張られすぎて赤くなっている。


「あのなー、男が女に高価な贈り物をするときは、絶対に下心があるんだぞ。あいつは特に信用ならない(ツラ)をしているからな。あいつ、その指輪を嵌めたときに何か言わなかったか?」


「何かって?」


 涙で晶斗の顔がにじんで見える。

 あのとき、プリンスに言われたのは……。


「この指輪は、通行証で……次は神聖宮でお会いしましょう、って、言われたかも」


 神聖宮とは、シャールーンの守護聖都フェルゴモールにある『聖地』。

 シャールーン帝国の民が一生に一度は参詣する、主神フェルゴウンを祀る最高神殿だ。


「なるほど、キイワードは『神聖宮に入る』まで、だな」


 それまで抜けない。

 それが指輪に掛けられた呪いを解く条件。

 ユニスもようやく冷静になった。


「あるわ、そういう呪紋が。特定の人や場所や物が鍵になってて、その作用でしか解呪できないというやつが」


「俺たちに何が何でも守護聖都へ来いってわけか」


「それで納得したわ」


 ユニスは、右手を肩の高さに上げた。

 空中から掴み出したのは、大判サイズのチケット2枚。


「あの封筒に入っていたの。明日の始発、守護聖都行き超特急の特別席のチケットが2枚。わたしと晶斗の分ね」


「明日の便には超特急は無かったはずだが……」


 晶斗はベストの胸ポケットから、白いカードを出した。


「じつは、俺の封筒にも変わった物が入っていた。仮発行の身分証だ。帝国内ならどこにでも移動できる、限定許可印付き」


 白いカードがユニスに向けられると、白面の上に晶斗の上半身の写真映像が半立体化した。胸部には名前と出身地名の刻印が浮かぶ。その下に、保安局の許可印と仮発行の注釈が表示された。


「これは俺が理医の治療を受けたあとで、保安局で撮影した写真だ。発行日も同じ日付になっている」


「その日のうちにできていたってことね。どうして発行できないんだって、晶斗があんなに怒っていたのに?」


「あの宰相閣下の指示だろう。保安局まで抱き込んでいやがる」


「まるで、晶斗が保安局に保護されたときから知っていたみたいなタイミングね」


 ユニスは自分の言葉にあっと驚いた。


「プリンスは、知っていたのね。晶斗が保安局に保護されたときから、東邦郡で有名な護衛戦闘士だって!」


「そんなとこだろうな。それならそれで、素直にシリウスへ依頼をもってくりゃいいのによ、食えねえ野郎だ」


 晶斗は指の間にカードを挟み、パチッと音を立てて裏返した。

 裏面には手書きによるサインが一行。


『特例認可証:シャールーン帝国宰相アルファルド・コル・レオニス』


「遺跡研究家なら俺の名前くらい知ってるさ。でも嫌な感じだな。魔物狩人に変装して遺跡地帯をうろつける腕の持ち主だ。この分だと裏の業界にも通じているだろうし……。そんな()(じん)が、俺たちに何をさせたいんだか……」


 晶斗はカードを胸ポケットに押し込んだ。


「わたしたちに仕事をさせたいなら、普通に雇えばいいだけだわ。なんでこんな周りくどいことをするのかしら」


「さてな。本当に用があるのは、俺なのか、それともシェイナーの君の能力か。俺たちが出会った直後から監視されていたことは間違いない。このホテルで騒ぎを起こしたのに一切お咎めがないのは、あの野郎が手を回しているとしか考えられない。そうだろう?」


 プリンスの話題になると、晶斗はことさら険しい表情になる。嫌いなのだ、プリンスのことが。

 でも、ユニスは晶斗とは違う。


「あんまりプリンスのことを悪く言わないでよ。あれでもシャールーン帝国のアイドルなんだから」

 あ、ここは重要な政治家というべきだったかしら?


 晶斗はせせら笑った。


「何がアイドルだ、ありゃ立派な悪党だぜ。普通なら呪いの指輪なんか、絶対に女の子へ渡すもんか」


「それは……」


 遺跡の中で味方と信じたプリンスに指輪を嵌められたのは、ユニスの不覚。

 それは認めよう。

 怪しい仕事の依頼をされた時点から、プリンスからは何も受け取ってはいけなかったのだ。

 晶斗に馬鹿にされても仕方がない。


「守護聖都でトリエスター教授との取引がすんだら、神聖宮へ行くわ。プリンスに会って、指輪を外してもらうわ……」


 ユニスは頭を抱えながら宣言した。けっきょく他の選択肢はないのだ。


「落ち込むなよ、ここまで手の込んだ招待をされたら押しかけるしかないだろ。安心しろ、道中の護衛は万全にしてやるからさ」


 晶斗に励まされ、ユニスはフロントへ電話した。


「チェックアウトは明日の昼だといっておいたわ」


 超特急の発車時間は午前5時。駅までの距離はこのホテルから歩いて15分。


「超特急は1時間前には駅に到着する。俺たちのチェックアウトは午前3時だ」


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