014:プリンス登場
まっすぐレストランへ入ったが、ユニスが食べたかったランチタイムメニューは、今日も終了していた。
ユニスは香料茶を、晶斗はコーヒーを頼んだ。
スパイスティーを飲んだら、急にすごい空腹を感じた。スパイスティーの鎮静作用で疲れていた胃が落ち着いたらしい。晶斗に軽く摘まむものでも頼もうか、と提案したが、晶斗は少し休憩したらちゃんとした食事を取りたいという。
晶斗はコーヒーを飲んだ後で、水を注文した。
「あら、遠慮しなくていいのよ。テストに見事合格したんだもの。お祝いのワインくらい奢る気でいるんだから」
「いや、気持ちだけ頂いておくよ。体がまだ本調子じゃないんでね。胃に負担をかけたくないだけさ」
そんなふうに断られたら、ユニスだけ食べ物を注文するのは気が引けるではないか。ユニスも夕食まで我慢することにした。
スパイスティーを飲みながら、晶斗の様子をこっそり窺う。顔色は良い。シェインで透視しても体内に異常らしきもの――病変の証である黒い影や、エネルギーの流れが滞った箇所など――は視えない。
保安局の理医の腕は確かだ。晶斗の身体はきっちり治療されていた。
――ということは、昨日まで絶食状態だったから、急に食べすぎないようにしているんだわ。体調管理に厳しいのね。……ということは、護衛戦闘士になる前は軍隊に入っていたのかも。
シャールーン帝国でも、護衛戦闘士という職業は、軍人からの転向者が多いという。
――だからいろいろ武器に詳しかったり、格闘技なんかも強いんだわ。意外にお得な拾いものだったかも……。
「なあ、さっきの保安官の態度だが、おかしいと思わなかったか?」
晶斗が話しかけてきた。
思考にふけっていたユニスは、スパイスティーにむせそうになった。
「おかしいって、何が?」
一瞬で口の中が乾いた。もしや、ユニスの秘密を何か気付かれたのか?
「あ、保安局で調書を取られたこと? あの時、わたし、何か変だった? 晶斗は、逮捕された経験があるとか?」
「はは、そっちを訊くか。これだから素人は怖いよな」
晶斗は肩を竦めた。微妙に会話が通じていないが、晶斗は気にしていないようだ。
「どういう意味よ?」
馬鹿にされた? でも、晶斗は少しも笑っていない。
「君はやっぱり、遺跡地帯での経験が浅すぎる。暴力沙汰に遭遇したのは、今日が初めてじゃないのか。怖かったんだろう?」
ズバリと晶斗に指摘され、ユニスはギクリとした。
「それは!……間近で見たことが無かったから、びっくりしただけよ。いつもはシェインで逃げているから……」
短剣が投擲された時、いや、晶斗がもじゃ髭と殴り合いを開始した時から、晶斗はユニスが暴力に竦んだことを察していたのだろう。
いざとなれば空間移送で逃げると言いながら、ユニスはとっさに動けなかった。
だから晶斗は、飛んできた短剣を避けなかった。
ユニスはこれまで、逃げるのは簡単だと、危機管理を舐めていた。
なぜなら、空間移送に長けたシェイナーへケンカを売るのは、愚かな行為だ。
もしも、怒ったシェイナーに空間移送させられたら――その着地点が未知の、しかも未踏破遺跡のような危険地帯だったら――生きて帰れる保証は無い。
物好きなナンパ野郎が現れようと、怪しい遺跡調査隊が勧誘に迫ってこようと、目の前で消えてやれば、たいていは追跡をあきらめる。
あの盗掘屋みたいな三人組は、まだ同じ町にいる。
ユニスがラディウスを持っているのは知られている。
今回は逃げるだけでは解決しないだろうと、ユニスも気付いていた。
「危険は承知しているわ。そのための護衛でしょ?」
「まあな。そっちは俺に任せろよ、なんとかしてやるさ。しっかし、君がこうまでド素人とは、先が思いやられるぜ」
晶斗の言いたいことは、朝の三人組の件とは少し違うようだ。
「言いたいことがあるなら、ハッキリ言いなさいよ」
さすがに、ド素人扱いされるのは腹が立った。ユニスだって、未固定遺跡へ入った経験はある。今回のと合わせて3回。回数は少ないけれど、ユニスは単独で未固定遺跡を踏破できるすごいシェイナーなのだ。
「俺達は2回も騒ぎの渦中にいたんだぜ。保安局には当然、通報されただろう。レストランではあれだけ派手なパフォーマンスを披露したのに、いまだにホテルから追い出されていないのは、なぜだ?」
「レストランでのことなら、わたしたちはケンカをしていたわけじゃないわ。わたしが泊まり客だから問題にしたくなかったんじゃないかしら」
昨日、レストランで騒ぎを起こしてから今この時まで、懸念していたホテルからの苦情は届いていない。だから堂々、このレストランを利用しに来たわけだ。
「そもそも、そこからしておかしいんだ。君はこの店内を、一部とはいえシェインで凍らせたんだぞ。シェイナーが、危険なシェインを使ったんだぜ?」
晶斗がジロリと横目をくれる。
ユニスは目を逸らせて「ええ、まあ、そうね」と同意した。過去を否定しても事実が変えられないのはコレまでの経験でよく知っている。
「ほら、シャールーン帝国にはシェイナーが多いから、気にしない人が多いかも」
「そんなわけあるか。公共の場でシェイナーが暴れるなんざ、犯罪行為以外のなにものでもないぜ。大陸共通の一般常識だ。百歩譲って、君はシャールーン人だとしても、俺は遺跡の遭難から帰還したばかりの、東邦郡の人間だ。しかも身元の照会すらできていない。普通なら騒ぎを起こした相手と一緒に、保安局へお泊まりさせられているところさ」
晶斗は後頭部で手を組み、頭上のシャンデリアを見上げた。
「それにあの保安官の態度だ、俺よりユニスのことをしっかり覚えていやがった」
晶斗が言うには、やって来た保安官はまずユニスを確認した。それから晶斗へ話しかけたのが、引っ掛かるというのだ。
「わたしの方が保安官に近い場所に立っていたからじゃないの?」
「保安官は『なんだ君らか。朝っぱらなからなにをしていたんだ?』と言った。被害者かもしれない女の子を心配するようでもなく、真っ先に、シェイナーである君が何をしたのかを確認したんだ」
「昨日、わたしが落とし物を届けたからでしょ。可愛い女の子が良いことをすると、おじさんの記憶にはよく残るのよ」
「あのなあ、少しは疑えよ。……君さ、俺の存在とは別に、保安局に目を付けられる覚えは、ほ・ん・と・う・に、ないんだろうな?」
晶斗が、れっきとしたシャールーン帝国人で善良な市民のユニスを、疑っている?
ユニスは、キョトンと晶斗を見つめた。
保安官はユニスの事を知っているだろう。
だって、シャールーン帝国人なら当然だ。
――ということは、晶斗は、わたしの事を、本当に、聞いたことすら、ないんだわ!
晶斗にすれば、ユニスの方こそ得体が知れぬシャールーン帝国の怪しいシェイナーなのだ。
冗談で笑い飛ばすには、強烈すぎるシェインを見せた。
一緒に遺跡も破壊してきた。
――ちょっと、まずいかもしれない。
ユニスは、晶斗とは約束通りコンビを組むつもりでいる。やはり晶斗にも、ユニスの事情をある程度知らせておかないとこの先困ることもあるだろう。
犯罪歴はないけれど、ユニスがシェイナーであることを隠そうとしていた理由、それは……。
「あのね、わたしは、じつは……」
「おっと、肝心な話を忘れていた。先に、俺の今日の報酬を確認したいんだが」
晶斗は頭の後ろで組んでいた手をはずした。
「は?」
ユニスは話を遮られたことより、話題の急転換に戸惑った。
なぜここでいきなりお給料の催促なの?
「あなたのお給料は、ちゃんと払うわよ?」
雇うと決めたその瞬間から、そこはきちんとするつもりでいた。だが、晶斗の雇用テストは終わったばかり。こうも直接的に訊かれるとは予想外。
今日は疲れたし、詳しい話は明日でいいや……と思っていたユニスが甘かった。
「いつもらえる?」
晶斗はプロの護衛戦闘士。普通なら仕事を受ける前に報酬額を決める。契約はそれからだ。
「う……それは」
ユニスは卓上で両手を握り締めた。
いまは持ち合わせがない。光珠を換金するまでお給料は払えない。ましてや高額が常という護衛戦闘士の報酬なんて、とても……。というか、相場って、どのくらいだろう?
これはユニスが迂闊だった。晶斗の事情を忘れていたわけじゃない。
晶斗はお金が欲しいのだ。
――そういえば、保安局から支給された衣服以外、着替えの一つも持っていないんだわ。
「少し待ってちょうだい。それまで必要経費はすべてわたしが負担するわ。部屋はそのまま使って良いし……」
「おう、それならいいぜ」
「え?」
てっきりこの場で前払いで当座の現金を要求されると思ったのに、晶斗はあっさり納得した。
「君のカネの当ては今日の収穫ってとこだろうし、俺も当面の衣食住が保証されるなら、それでけっこうだ。でも、なるべく早くしてくれよな」
「もちろんよ」
晶斗がいい人で良かった、この間に護衛戦闘士の相場とやらを調べておこう。……ユニスが胸を撫で下ろしたとき、ロビーの方からどよめきがあがった。
なんだろう?
ロビーの方へ視線を向けたユニスは、ギョッとした。
ウエイトレス、ロビー係、遺跡観光よりリゾート目当てのおばさま方のツアーパックまで、女性の団体!
それが、玄関ホールからレストランの入口近くにまでみっちりと充満している!
熱い雰囲気が、レストランの中にまでひしひしと押し寄せてくる。
あちらこちらでご婦人方の「プリンスが……」という言い交わす熱っぽい声がざわめきとなって聞こえてきた。
「なんか気色悪い雰囲気だな。話の続きは部屋でするか」
気づけば、テーブル席に着いている男は晶斗だけになっていた。
何かが変だ。他の男達は、入り口やホールの片隅に固まっている。客も従業員も分け隔てなく、居心地悪そうに。
「そうね、なんだかあちこちで『プリンス』って聞こえているみたいだけど……まさか、ね。何かに巻き込まれないうちに帰りましょうか」
ユニスが椅子から腰を浮かした、その瞬間、
ざわめきが、熄んだ。
「いらしたわ、プリンスよ!」
あちこちで悲鳴に似た歓声があがった。
皆の視線が、一点へ集中する。
すらりと上背ある白い紳士がホールを横切り、レストランへ入ってきた。
ユニスは、椅子から腰を浮かせて首を伸ばした。
プリンスがシャンデリアの下を通ったとき、長めの銀の髪が金色の輪の輝きを放った。通過地点にいた人々は、微動だにしなかった。
いや、違う。動くことができなかったのだ。
うっとりと見惚れてしまって。
プリンスが通り過ぎ、その美貌の呪縛から解放されるまでは。
「まあ、ほんとうに大公殿下だわ。こんな所で本物を拝せるなんてなんという僥倖でしょう!」
ハンカチを握りしめ、涙ぐんでいるご婦人さえいた。
「ほんとうですわねえ、守護聖都でもなかなかお見かけできないのに、こんな田舎で、しかも生で拝見できるなんて、信じられない幸運ですわ!」
ユニスは、椅子から腰を浮かせた姿勢で動けなくなった。
この角度でなければ、人の隙間からプリンスが見えない。
雑誌や映像でお馴染みの美貌。だが――だが、生身の迫力は、桁違いだ!
「すごいわ、本物のプリンスなんだわ! 晶斗、本物が来たのよ!」
ユニスは興奮したが、晶斗は興味なさげだ。
「落ち着けよ。プリンスって、誰だ? どこの王子様が来たって?」
晶斗は、皆がどうして騒いでいるのか、まるでわかっていないようだ。
ユニスはガツンと脳天を殴られたような気がした。
ルーンゴースト大陸に、シャールーン帝国の『プリンス』を知らない人間が存在するなんて!
「まさか、知らないの? この帝国で『プリンス』と言えば、セプティリオン大公殿下の代名詞じゃないの。あの御方こそ、シャールーン帝国現皇帝の直系曾孫にして現・宰相閣下、七星華宮アルファルド・コル・レオニス・セプティリオンさま、守護聖都フェルゴモールで最も有名なアイドルなのよ!」
一気に喋ったユニスは、息が切れた。心臓がバクバクするのは本物のアイドルと同じ空間にいるという興奮のためだ。さらに晶斗が、ルーンゴースト大陸の民ならば一般常識であるプリンスを知らないなどという、とんでもない非常識さで驚かしてくれたから。
「ああ、帝国の皇族ね……。あいつは、そんなに有名なのか?」
晶斗はゆっくりと言った。
どうしてだか、急に喋るのが億劫になったみたいだ。
「当たり前でしょう。プリンスはシェイナーで、遺跡の研究家でもあるのよ。遺跡地帯で知らない人はモグリだわ」
「そうか。俺は知らん。東邦郡の人間だからな」
晶斗は素っ気なく言った。晶斗はプリンスを嫌いなのか?
ユニスが首を傾げたら、
視線を感じた。
顔を上げたら……。
セプティリオン大公殿下ことプリンスが、ユニスの前にいた!
プリンスの肌色は色素が薄く、銀の髪は青みを帯びている。黒と見紛うほど深い藍色の目がまっすぐに、ユニスを見下ろしていた。
ユニスはビシッと硬直した。今動いたら、きっと体がヒビ割れる。
傍観を決め込んでいた晶斗もさすがに驚きを隠せなかったらしく、左の頬へピリッと痙攣を走らせた。
「お話中のところを失礼」
プリンスの声は低くなめらかで、上流貴族階級特有のサラサラした発音が耳についた。
その声音も独特の発音も美しい貌に相応しい。かつて宮廷詩人が『伝説の美姫よりも麗しい』と評したその姿だが、けっして女性的ではない。
たとえるならば、神話に語られる青春と美を司る青年神だろうか。もしも伝説の名工が、その神の像を髪の一筋まで完璧に彫り上げたなら……いや、彫ろうとしたならば、このプリンスをモデルにと望むに違いない。
「驚かせたのなら申し訳ありません。わたくしは七星華宮と申します」
プリンスは、右手を襟なし上着の胸元に当てた。上着は貴族の青年が好むシンプルな平服。だが、ボタンはカメオ細工だし、白麻シャツのカフスボタンは金色の星が内包された稀少な星青玉だと一目でわかる。
膝までの砂漠用ブーツは真新しく、砂漠の砂は付いていない。
腰には白革ベルトが2本。1本は剣帯だ。左腰に吊り下げられた宝石付きの細剣は美しくとも飾りではない。皇族であれ、彼が軍の領域に属している身分証をも兼ねている。
「は、はい! なにか、御用でしょうか?」
あ、視界がかすんだ。
――やだわ、目に涙が……。
とんでもなくも嬉しいシチュエーションに興奮しすぎた。
そんなユニスとは対照的に、晶斗はふてくされた様子で卓に肘をついている。
「ああ? 大公殿下が、俺たちになんか用か?」
面倒くさげに目線だけを上げる。不遜この上ない態度は、プリンスに対して敵意があるのではないかと思えるほどだ。
ユニスはハラハラしたが、プリンスは晶斗の無礼を咎めることなく、ユニスへ訊ねた。
「今日は一応プライベートですが、どこに行っても、御忍びにはなりませんね。――ここへ座っても?」
プリンスは、ユニスの正面の椅子を示した。
ユニスは、コクコクとうなずいた。さっきからドキドキしていた心臓が、さらにいっそうバクバクし始めた。
――なにこれ、プリンスを見てすごく緊張しすぎているのかしら。
いや、なんとなく違う気がする。
緊張しすぎているわりには、ユニスは冷静に考えている。晶斗の態度が無礼にならないかとか、座るときに膝を揃えなくちゃ、とか。
――じゃあ、どうしてわたしの心臓は爆発しそうなのかしら?
あ、異様な空気!
ユニスと晶斗、そしてプリンスの3人がいるこのテーブルで、電気を孕んだ空気の塊があるみたい。
原因のひとつは、晶斗だ。晶斗の『怒り』。どうして晶斗はあれほど恐ろしく険しい目でプリンスを睨むのだろう……。
「座りたきゃ、勝手にしろよ。そのつもりで俺達へ近付いて来たんだろが」
相手が帝国宰相だろうが特別に態度を変える気がない。それが晶斗という男の信条なのかもしれない。ユニスはそう思っておくことにした。
プリンスが座った。
レストランはしずまりかえっている。
「じつは、遺跡探索の人手を探しているのですが……」
すると、プリンスを見つめていた視線が、一斉にユニスへ矛先を変えた。
ざわり、と、ユニスの全身に鳥肌が立った。
異様な空気のもうひとつの要因。
嫉妬と羨望に殺意。
それが今、ユニスの背中に当たっている。晶斗の醸し出す得体の知れない憎しみとは別種の感情が込められた、刺々しい視線!
プリンスが、レストラン内を一眸した。
皆が息を殺している。
囁き声すらも、レストランの隅々にまで届きそうな……。
――それに、このすごい視線は……これって、狂信的な域に達した(マニアツクな)プリンス愛好者では!?
プリンスの美貌にうっとりしている場合じゃない。
このシャールーン帝国には、唯一神のためなら、たとえ公共の場であろうとプリンスへ無礼を働いた者へ粛清を行いかねないという恐ろしい人種が存在するという。その噂はほとんどシャールーン帝国の都市伝説と化している。
肌にチクリと痛み。
ユニスは震え上がった。目には見えない悪意の矢。些細なことでも気付いてしまうのは、五感が非能力者よりも鋭敏なシェイナーゆえのデメリット。
――怖ッ!!!
こんな場所でプリンスと個人的に話すなど、自ら標的に名乗りを上げるようなものだ。
これ以上プリンスに笑顔で話しかけられたら、レストランを出る前に抹殺されるかも!?
「あの、ちょっと、その前にお願いがッ!」
プリンスへお願いするこの行動が、万死に値すると考える者が近くに居なければいいのだが……。ユニスは小さな声で言った。
「場所を変えませんか。ここは、危険だと思います」
ユニスがこのレストランから無事に出る方法。それは今すぐプリンス本人に連れ出してもらうしかない。
「危険って何が?」
晶斗がしかめっ面をした。晶斗は特に危険を感じていないのだろう。プリンスとその熱狂的ファンの関係性は、東邦郡出身の護衛戦闘士様には推察できないものらしい。
だが、プリンスはユニスの言う「危険」の意味を正しく汲んでくれたようだ。控えめな微笑みで小さくうなずいてくれた。
「では、私と一緒に来てください」
プリンスに促されて、ユニスは二つ返事で立った。
晶斗は、いかにも気乗りしないふうに、ゆっくりと腰を上げていたが。