私は生まれ変わる
第一話 「目覚め」
目を開けたら光り輝く真白な世界。
ここはどこだ。・・・・・・私は誰だ?記憶が・・・・・・・・・なんてのは冗談で、私は死んだのだ。
いつも通りの日常を送れると思っていた。
いつものように眩しい朝日で目が覚め、冷たい水でパシャパシャと顔を軽く洗って我が家を出て、忙しそうな人間様がたくさん歩くそんな道を避けながら、数少ない友達と愛しのあの子がいる、あの秘密基地に向かう途中だった。
死因は衰弱死。
いつもなら誰もいない路地裏。
いつも通り薄暗い道がさらに暗くなった。
後ろから硬いもので殴られる。地面に叩き付けられる。 (イタッッ。なんだ!)
続いてお腹を何度も蹴られて私の体は右へ左へ・・・・・・いや・・・どっちが右でどっちが左なのか、もはやそんなのは分からなかった。 (なんだ!)
笑い声が聞こえる。 (なんだ!)
1人ではない。 (なぜだ!)
成す術なしの私は、抵抗する気力もなく、意識が遠のくのを感じ、そんな理不尽な人間たちを憎む感情が湧く・・・そんな隙すらなかった。 (どうして?)
そして今私は”目覚めた”。
そこは光り輝く真白な世界ではなかったが、あの路地裏でもなかった。
目の前には誰かの家?いや教会?というよりかはお城?生涯、お城に入る経験、機会なんてなかったし、そもそもお城を見たこともなかったが、お城?と思うぐらい大きくて、綺麗で、立派な建物の中。大きな階段が2つ左右にある。その先には大きな扉。そして私を取り囲むように360度、優に千を超える扉がある。見渡す限り、扉、扉、扉。そんな場所で私は目を覚ました。
(あながち真白な世界ってのも間違いではないか・・・)
そんなことを考えていると、真後ろから・・・いや・・・私の真上から声が聞こえてきた。
「お目覚めですか?おはようございます。どこかまだ痛い所はないですか?」
いつの間にか立っていたその男は優しい声で私を覗き込むように話しかけてきた。
(うわっびっくりしたーーーーー。・・・誰だ?)
急に話しかけられて驚きはしたが、その男の静かで優しい声に何故か心地よさを感じすぐに落ち着くことができた。
「あーーすみません!!びっくりさせちゃいましたか?うーー『お前は誰に対しても馴れ馴れしすぎ』って先輩から怒られちゃうんですよねーー。でも、先輩は逆に慎重になりすぎだと思うんですよねーー。親しみにくいというか。僕みたいに~~~・・・」
(・・・よく分からないが、なんか一人で語り始めたぞ。いやいや、こっちは聞きたいことが山ほどあるんだが。とりあえず、)
「あなたは誰ですか!?というかここはどこですか!?私は・・・死んだんですよね?」
「・・・~~~そもそも人それぞれ違うやり方、策というものあってですねーーー。僕も何も考えなしでこのようなファーストコンタクトをとってるわけでは~~~・・・」
(あれっ聞こえなかったのかな?仕方ない。)
「あのーー、あなたは誰ですか?ここはどこですか?私は死んだんですか?」
「・・・~~~昔っからそうですよ!僕は朝はコーヒーだけで良いって言ってるのに、”体に悪い。朝食はしっかり食べろ”とか”だからお前は・・・”なんて、放っておいてほしいものですよ。先輩だって~~~・・・」
(なんかどんどん話が脱線してる!というかまた聞こえなかったのか?くそぉーーー)
「お前は誰だ!?ここはどこだ!?死んだんだよな!?」
「・・・~~~懐かしいなぁ。リンダにアリアに、テッド。みんなどうしてるかなぁ。確かリンダは・・・あっもしかして何かおっしゃいましたか?すみません。私まだ”猫”語は勉強中でしてーーー」
第一話 完