ゴブリン隊長と傭兵団長
「ふっ、面白そうじゃない。わらわが主役を食べてしまうことだけが心配ね」
事後承諾の形になるがディーヴェルシアの反応はまあ大体こんなところだ。
「ハハハ、その意気だその意気だ」
その傲慢大いに尊重しよう。今回のプロデュースにはそのくらいの気概があったほうが成功の確率は高いだろうしな。
あとはそうやって意気込めば意気込むほどコイツの思い通りにはならないだろうなという信頼である。
「あの……隆斗さま」
「何でしょうかヘルさん」
「あ、いえ何でもありません」
ヘルさんもヘルさんで何かを言いかけてはやめるという行動を繰り返している。しかし俺はこのプロデュースの下準備……悪役令嬢アイドルとしてのレベッカの知名度アップに尽力するために地上へとその活動の場を集中させていて、あまり時間も取れず聞き出すことも出来なんだ。どうしたもんかな。
「イヤァ、正直、今聞き出しても面倒ごとが増えるだけだと思うぞ。それがわかってるからヘル様も口ごもってんだよ」
ゴブゾウはかく語りき。
「まァなんつうかあれだよな。お前も走り出したら周りが見えなくなるタイプだよな」
とも。
どういう意味だと問いただしたい気持ちもないではなかったがそれを聞く余裕も無かった。
というわけで準備も佳境。本番のパフォーマンスの具体案を煮詰める前に、どうしても済ませなければならない会合があった。
会合の場はダンジョンの一角。俺とゴブゾウは二人で待ち構えていた。
そして、呑気な声をあげてここに入ってくる人間が現れる。
「ごきげんよう、と」
おっちゃん。『青狸』エドモンド・ドラクリウスである。
何でこのような場が設けられたかというと、会場の設営などといったいわゆる裏方、ダンジョン側と人間側の両方の力を合わせることが必要になってくる。
「……」
「……」
ゴブゾウとおっちゃんはお互いに無言で顔を合わせ、両方同時に俺のほうを見る。
何だよ何見てんだよ。
「色々大変そうだな、あんたも」
「ハハ、分かってくれるか」
おっちゃんの労いにゴブゾウも笑って握手を交わし、二人は肩を組んだ。
「赤枝の団長か、話は聞いてるぜ色々と。これから派手にフられるんだって? 酒はイケる口かい? 今日は極上の小鬼殺しを用意させてもらった」
「はは、こっちも団員から話は聞いてるぜ。妙に練度の高いゴブリンの軍団がいるってな。一度うちの若いもんたちに稽古つけてもらいたいもんだ。小鬼殺しか、オレの好きな酒の一つだな。そこまで用意してもらっちゃあな。こっちもとっておきの品を共用のアイテムボックスから出させてもらうか。団の皆には内緒だぞ。くれぐれもな。くれぐれもな!」
おっちゃんも酒が飲めるぞの心境と見た。
それから、おっちゃんとゴブゾウ、そしてゴブゾウの部下の顔合わせも交えて宴会に突入していた。
俺も途中までは参加していたんだが、まあおっちゃんとゴブゾウも予想上に打ち解けたようで、それと同時に宴会が酒臭くなってきたので途中で適当に抜けた。




