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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第三章:令嬢アイドル反逆編
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あんたかーい

 俺とレベッカはダンジョンから出て徒歩で近くの町まで向かっていた。


「そういえば、リュートさんは最近、外に出ていませんでしたわね」


 俺の境遇からすると外に頻繁に出入りするほうがおかしいんだけどな実際。


「ああ、そういうことであればニナ様たちとも会っておられないのですわね」


 ニナ? そういえばにわかに警戒強めてはいたみたいだが結局、ニナたちがダンジョンに現れることなかったんだよな……どうしてるんだろうか。レベッカの口ぶりだと、ニナたちとその後も会ってる?


 その疑問はすぐに解ける。


「オーッホッホッホ!」


 仮面を着け、ライブに臨むレベッカ……いつもより悪役っぷりが板についているようだが何だろう、やっぱりストレスたまってたんだろうか。


 それをさりげなく見守って、ライブが終わって駆け寄ろうとすると、そこに近づく人影があった。


「お疲れ様です」


「ふふ、いつもありがとう。褒めて差し上げますわ」


「ニナ!?」


「あ、リュートじゃん。久しぶり」


 ニナたち三人がレベッカの周りに集まっていた。


 ああ、そうか。そういえば三人でレベッカのライブ見たことあったな……その時から親交が続いてたってことか。抜け目ないというか色々面倒見てくれたようでありがとうというか。


「……」


「どうかしたんですか? リュートさん」


 ニナが心配そうに尋ねてくる。俺は少し考えて、


「実はちょいとばかりそちらの令嬢に厄介ごとが舞い込んでいてな」


「リュートさん!?」


「本当なんですか?」


 ニナの心配そうに尋ねてくる声に、レベッカの糾弾も止まる。ダンジョンの外じゃディーヴェルシアや俺だってできることは限られているし、政治的に動かせるコネ……勇者が味方に付いてくれるというなら文句のつけようなどあるはずもない。何より、人のいいニナの好意を押しのけるのは気が引けるだろう。


 ただ仮面の奥底から暗い笑みを浮かべているのが気になるくらいだが。


「それを説明する前に、ワタクシの正体をさらけ出すのが礼儀、というものですわね」


 そこまで!? と俺が止める間もなく、あっさりとレベッカは仮面を外し、その姿をあらわにする。


「まさかあなた……シャイナンダーク商会のレベッカさん!?」


「ふふ、ええ。いつぞやはお世話になりました。今後ともごひいきに……というあいさつは、いささかふさわしくない近況ではありますが」


「シャイナンダーク商会って……」


 トリッシュが複雑そうに考え込む。ダンジョンで商談を持ってることは隠し通せるものではないだろうし、トリッシュの情報網の中で引っかかったのだろう。


「今さら隠してもしょうがありませんから申し上げておきますが、実はそこのリュートさんに、この人間社会においてアイドルを認知させる、という依頼を受けていましたの」


「な、ちょ」


 俺に色々なすりつけるくらいならいい。いやよくないが。ただ、レベッカがここまでさらけ出すとは思っておらず、その……大丈夫なんだろうかやけになってはいないかと心配になる。


「善意には善意を。ワタクシ商人ですから、割に合わない取引は出来ませんの」


 というものの、悪どい商人なんていくらでもいるわけで、相手がニナ・セイクリッドであることと同時に、彼女なりの哲学があるからだ。


 彼女がいまだ、シャイナンダーク商会の令嬢である、ということの証左。


「……つまり、今までのアイドル活動も、ダンジョンに味方していたからってことでオーケー?」


「ワタクシとしては半々、といったところですがまあ、信じろというのも無理な話かと」


「んー……」


 トリッシュは立場柄色々考えることがあるようだが、よき先輩アイドルだったレベッカに対して悪くは思えないのか複雑そうに顔をゆがめる。


「わたしは、レベッカさんを信じたいと思います」


「まあニナはそういうと思ってたけどさー」


「それに、今はダンジョンの味方だとしても、ここで力になって、そうして、恩を売る? 法がいいんじゃないかって思うんです」


「ん? んーなるほど」


 ニナもいろいろ強かになりつつあるらしい。無条件で信じているわけじゃない。こういう成長も、トリッシュを、周りを信頼してるからだろう。


 というわけで、レベッカの今置かれている状況。


 レベッカに政略結婚があてがわれ、シャイナンダーク商会から家出して、ダンジョンに身を寄せていることを話した。


「うわーそういう話ってホントにあんだね」


「ひどいと思います。レベッカさんの思いを聞かないまま、望まない結婚を強いるだなんて」


 ニナとトリッシュは思うところがあるようだ。


「んー、そうでしょうか。少し、焦りすぎ、と思うのですが」


 だが、クリス・ブリリアント。貴族の生まれである彼女の意見はまた違うようだ。


「何でさ。クリスだって脂ぎった親父の玩具になってもいいっての?」


「トリッシュさんが政略結婚にどういうイメージを持っているのかは一度詳しく聞いてみたいところではあります。確かに出会いの形として歪であることは否定しませんが、それでも心の通う夫婦となる方もいらっしゃいますわ。よくも知らない風聞で判断するのはいただけませんわね」


 一見冷たくも思えるが、逆に言えば一番この中で冷静ともいえる。


「まあ、初対面でいやらしい顔で嘗め回してくるような外道ならぶっ飛ばしてよいかと。そのためにもまずはその方の人となりを知るために事前に情報を集めてみるのもよろしいかと。期待薄ではありますが、ひょっとしたらレベッカさんの夢を応援してくださる可能性も」


 なるほど。こうして考えてみるとレベッカも今一つ冷静さを欠いていたような感じもする。期待薄、という通りレベッカに理解を求めるのは難しいがそれでもゼロではなく、話し合って理解を深めていく方策も同時進行で進めていっていいかもしれない。


「それで、結局、レベッカさんのお相手というのは一体誰なのですか?」


「ああ、そうですわね、話し忘れていましたわ」


 まあこの世界の人物相関について全くわからんし、名前だけ聞いたところでどうしようもないわけだが、そのあたりは一緒にこれから調べていけばいいだろう。


 と、思っていたんだが、


「ワタクシの婚約者として白羽の矢が立ったのは、青狸、エドモンド・ドラクリウス様ですわ」


「「「「は…………はぁああああああああああああああ!!????」」」」




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