レベッカのいる日常
レベッカがダンジョンに身を寄せてから、ただ世話になっているわけにはいかないと色々と精力的に働いていた。
洗濯やら掃除やら、魔物たちに交じって広大なダンジョン内のあれやこれやをこなしている。
「さすがに本職のメイドと比べると目劣りすると思いますが。人に交わって商いを行う以上、庶民の当たり前の日常に身を置き、その価値観を常に身につけねばなりませんから」
なるほど。これも教育のうちなのか。
「まあ、花嫁修業というのもあるのでしょうけれどもね」
と、苦笑交じりに付け加えた。
レベッカの恩恵はあまりあるが、その中でも特筆すべきは料理だろう。まあ個人の見解が多く含まれているのは否定しないが。
というのも、ここの魔物たちの多くと人間である俺とレベッカの嗜好というのはまず一致しないのだ。例えばゴブゾウたちゴブリンが日々食ってるものは残飯にしか見えないのだがそれを言ってみようものなら「あぁ!? やんのかコラ!」とガチギレされる。ヘルさんにしてもそれなりに近いんだがやはり根本的な部分で相容れない。
「どうにも手間のかかるものよりも簡単に食べられるものばかり覚えるようになってしまって申し訳ないのですけれど」
「いやいやそんなことはないんじゃないか?」
レベッカは野菜を肉で包んだ焼いたものに、パンまで自分で焼き上げている。どこか落ち着く家庭の味ともいうべき料理に俺と、あとディーヴェルシアも舌鼓を打っている。
「ておいディーヴェルシア。何でもかんでも醤油かけるのやめろ」
「何よ! いいじゃないの」
レベッカは自分の料理にドバドバ醤油かけられたことに不満も言わず指でひとなめする。
「なるほど、不思議な味ですわね……本日用意したものだと合わないかもしれませんが、この調味料と合うお料理をご用意いたしますわ」
「ホント! やったー!」
「ああもう、コイツときたら意地きたねえな!」
「うふふ」
などとのほほんとした食卓を囲んでいた。
「ディーヴェルシア様。そろそろ外に出てアイドル活動を再開したいと思うのです。リュートさんも含め手伝いの人員を貸していただけると助かるのですが」
「ん? オッケーオッケー」
ディーヴェルシアは腹をさすりながら食後のお茶を飲みながら機嫌よく返事をする。大丈夫かこのダンジョンマスター。




