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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第三章:令嬢アイドル反逆編
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令嬢といえば婚約破棄

 というわけでディーヴェルシア、ヘルさん、それにゴブゾウも交えてどういった事情か話を聞くことになったのだが……。


「婚約?」


 話によると、どうやらレベッカの両親から政略結婚を持ち掛けられたらしい。まあ、家が大きいとそういうこともあるだろうと言うのは他人事すぎるか。


「本当に!? シャイナンダーク商会サイテーね!」


 現にダンジョンマスター様はご立腹だ。まあレベッカの手前言いにくいがこいつはそのあたりの空気読まないあたり大物だ。


 個人的には政略結婚なんて俺もどうかとは思うが。


「つってもだな、うちの大将とは違ってレベッカ嬢の場合は空気読むっつうか……家のためならその辺我慢すると思ってたんだがな」


「それは……」


 ゴブゾウの疑問にレベッカはちらりと俺を見たかと思ったがすぐにひとつ咳払いして語り始める。


「確かに、それが家のためになるというのであればワタクシもやぶさかではありませんでしたわ」


 なんだか引っかかる物言いだな。


「きちんと説明したことはなかったと思いますが、ワタクシ、シャイナンダーク商会の業務とはまた別に、個人で色々と事業を立ち上げていますの」


 なるほど。そういえばアイドルの衣装について色々世話になったがそれも関係してるのか。


「そうですわね。昔から趣味で服を作ったりはしていたのですが、本格的にビジネスとして始めたのはアイドル事業に触れてからがきっかけといえます。例えばこの前の写実魔法ですとか。アイドル事業に向けて色々と水面下で動いたりしていましたの。今もいろいろと」


 そうだったのか。そのあたりそのうちじっくりと腰据えて話したいもんだが今は話を聞くことに集中しよう。


「確かに最初は趣味でしたがワタクシなりに可能性を感じていましたの。それがシャイナンダーク商会にとっても多大な利益が見込めると。それが我が家、職人のため、公共の利益へと還元されるものと信じていました……ですが、実家のほうはそうは思わなかったようですわね。要するに、天秤にかけられたのですわ。ワタクシのしてきたことと、ワタクシが婚姻を結ぶことによって得る『利益』を」


 この世界では共働きなど一般的ではなく、結婚したら女性は家に入るのが当然の社会秩序。そもそもレベッカが前面に出て商いを取り仕切るのも異例な方だったと。


 結婚して家庭に入ってしまえば今まで通りに事業を進めることは難しく、ファッションなんかは特にレベッカの資質によるところが大きいので引き継ぎなど出来ない。レベッカが今までやってきていた事業は強制的に打ち切られることになる。


 それでもこの政略結婚を持ち掛けるということは、シャイナンダーク商会、レベッカの親族がそっちのほうが利益を見込めると判断した、ということに他ならない。


「ついつい張り切ってしまって、針仕事で手に怪我をしてしまうこともありましたからね。『女』としての価値が落ちる前に少しでも高く売りつけよう、と。まあそういう判断なのでしょう」


 歯に衣着せない物言いはレベッカにとって不本意で、不機嫌であることの表れであると同時に商人として損得を計る冷徹な部分も垣間見える。


「ワタクシの事業は実用面でいえば厳しい面もあって、中々理解が得られていないとは感じていましたわ。ですが、ワタクシは信じているのです。決してこの芽を摘んではならないと。これがやがて流行を巻き起こし、その中心に我がシャイナンダーク商会が君臨するのだと」


 レベッカがぐっとこぶしを握って、熱く語る。その瞳にはめらめらと燃えるものがある。


「思ったよりも面倒だな」


 ゴブゾウが呟いた。


 まあ確かに、例えばこの婚約話を台無しにしたところでそれで終わりじゃない。事の本質はレベッカの価値を認めさせることにあるのだ。それができなければまたこういう話が持ち上がってくるだろう。


「でもま、俺たちにとっても無関係じゃない」


 多少はアイドルがきっかけとなったのも事実であり、そしてアイドル事業を進めるにあたりレベッカの力がこれからも必要なのだ。


「だから、俺たちはレベッカの味方だ。で、いいんだよな」


「そーね! 色々メンドーなことは分かんないけどそれでいいわ。とりあえずここの部屋を貸すからここを拠点にシャイナンダーク商会に目にもの見せてやるといいわ」


「リュートさん……みなさん……ありがとうございますわ。お世話になります」


 レベッカが頭を下げる。


 こうして、レベッカがダンジョンに身を寄せることになった。


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