表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第二章:勇者パーティアイドル始めます
51/74

クリスはチョロイン?

 結論……とりあえずニナとクリスは引き離して練習させた方がいい。


 まあ個別練習の段階だな。ユニット練習はまだまだ先ってことで。プロデューサーとしてはまず誰を見に行けばいいだろうかと考えると……。


 クリス・ブリリアント。


 まだきちんと話をしたことが無い彼女の様子を見に行くとしよう。


「ハッ……ハッ」


 クリスがまず何をしているかと言えば、走り込みである。


 ローブを深く被り、早朝の人影のない路地をひた走る。


 何を出来るわけでもないが、とりあえず並走することにした。何も言われてない、ということはまあ許されていると見ていいんだろう。そう解釈しておくことにする。


「ふぅ……」


「お疲れさん」


 運動が終わって部屋に戻って宿の朝食を取る。疲れ果てていた様なので、俺が水差しを持って来て杯に注いだ。


「ありがとうございます……これから筋トレに付き合っていただけますか?」


 ということで朝食も終わり、自然な流れでクリスの部屋のベッドに。


「はぁ……はぁ……」


「頑張れ、もう少しだ」


「ん、く……!」


 何をしているかと言えばただの腹筋ですよ。ええ。足だけ抑えてクリスの腹筋をサポートしてるだけです。


 しかし筋トレも終盤で汗だくで大きい胸元の見える緩い感じのローブ姿だから何か目に毒と言えばそんな感じだが、クリスの真剣な表情に俺も応えたいと思う。


「ふぅ……」


 目標の回数だけ腹筋を終えて、力尽きた様に倒れ伏した。


「ん、何をしていますの?」


「ああいや、マッサージでもしようと思ってな。そこまで専門的なもんを持ってるわけじゃないんだが」


「……ん! そう、なんですの?」


「ああ。続けていいか? 痛い所とかもうちょっとやってほしい所とか言ってくれれば対処するから」


「そう。では、よろしくお願いしま……ん!」


 やけに艶っぽい声を出す。


「し、仕方ないでしょう。あなた、本当に初めてですの?」


「まあ初めてかと言えば嘘になるかな?」


「そ、そうやって何人ものレディーを毒牙に掛けていますの!?」


「いやいやいや。母親とかにさ。そういうのに小遣いを対価にやったりするじゃんさ。な」


「ぁ……そういうこと、ですの……?」


「何だ? 俺のマッサージなんか変か?」


「そういうわけでは……ひ、ん……!」


 反応が妙に引っかかるがこのまま続けるとしよう。


「……あの、リュートさん、でよろしいでしょうか?」


「ああ、それでいいよ」


 少し沈黙が降りたが、クリスの方から話しかけてくれて正直助かった。


「まずは、そうですわね。お礼を言いますわ」


「お礼か」


 少し笑いが漏れた。


「……何が可笑しいんですの」


 思わず笑ってしまった俺に、クリスが問いかける。そうだな、可笑しいってよりは微笑ましいってのが正しい。


「何だかんだでさ。あんたも、ニナも、トリッシュのこと心配してたんだろ?」


 クリスは一瞬、何を言っているのか分からなかったか呆けていたがやがて顔を赤らめていく。


「ち、違いますわ! わ、私はただ、その……ニ、ニナ様に対して、素直になれて、あなたがニナ様に笑顔を取り戻して、だから……」


「ああ、そっちか? つってもそれは、大したことが出来たとも思ってないし、それにこれからだから。それに、ニナに対してだけじゃなくってさ、トリッシュに対しても素直になったっていいじゃんかって俺は思うんだ」


「……わ、私は、ニナ様一筋ですし?」


「そうなのか? 別に好きだって人間はどんどん増えたっていいと思うんだがな」


 ニナ。クリス。トリッシュ。この三人は、色々すれ違ってはいたけど、何だかんだでこうして思い合ってるんだ。噛み合えばきっとすごいことが出来るって信じられる。


「その……こんなことを頼むのは、私、悔しいですけれど。本当に、悔しいのですけれど」


「何だ?」


「……ニナ様を助けてあげてくださいませ。私では、あの方が今、ぶつかっている壁に対して手助けが敵いません……だから」


「ん……わかった」


 マッサージも終わったところだった。


「話が出来てよかった。クリス、やっぱいい子だなって分かったからさ」


「な……な……!」


 後あれだ。同じ令嬢のようでいてレベッカは会っていると緊張するというか一筋縄でいかないというか手ごわい。それもまた確かに魅力ではあるんだが。


 でも、クリスの場合は、何というか根っこのところで純真だ。だからニナに惹かれたのかもしれない。

何というか……チョロイン? いや、別に手を出そうとかそういうんではないんだけど。


「あ、あの……!」


「何?」


「……し、しばらく。トレーニングを続けますから、その……マッサージ、またお願いできますか?」


 不覚にも、その大人びた綺麗な顔立ちが真っ赤に染まったその顔は可愛いなと見惚れた。


「ああ、それじゃあな」


「ええ、また……」


※※※


 外にいるはずのニナに会いに行こうと食堂を通りがかるとおっちゃんがいた。


「よう兄ちゃん。何だ? 魔法使いのお嬢さんのとこに行ってたのか? まあ気難しいお嬢さんだからなーめげずに頑張んな」


「そうか? 結構話しやすいけどな」


「……」


「何だよおっちゃん変な顔して」


「ハハ、いや、そうだな。お前さんからしたらそうなんかもしれんな」


 変なことを言うおっちゃんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ