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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第二章:勇者パーティアイドル始めます
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勇者の答え

明けましておめでとうございます

まあこの時が来たみたいなお話です

 俺たち三人はおっちゃんの泊まっている宿の部屋にやって来ていた。


「……で、結論は出たかい?」


 おっちゃんは俺たちの顔を順に見ながら、その目に興味の色を浮かべて尋ねる。


「あのダンジョンは内部の支持者によって力を得る特殊空間。ダンジョンマスター・ディーヴェルシアが冒険者……人間の支持を得ている以上、勇者の力はあのダンジョン内で効果を発揮できない……」


「そうだな」


「そういうことなら、その支持を……奪い返せばいい」


「どうやってだい? 魔法使いのお嬢さんが言ってたように、冒険者はすべからく勇者に従うべきだと啓蒙活動でもするつもりかい?」


「いや、それじゃ意味がないだろうさ。おっちゃんも言ってたけど誰もそんなん守って生きるような世の中なら誰も苦労しないだろ」


「じゃあどうする?」


「このダンジョン攻略のカギを握るのは『アイドル』です。あのダンジョンにはアイドルを愛好し、支持する冒険者たちが集まりつつあります。つまり……わたしたちもアイドルを始めます」


 今まで言葉を返していたおっちゃんもさすがに絶句する。


「……それは今までお嬢さん方がやったことのない戦いに身を投じるってことは分かってるのかい?」


「はい。わたしたちには今、プロデューサーがいます。あのダンジョンが勢いづいたのもプロデューサーがいたから。条件は決して悪くありません」


「なるほど。じゃあ……そのプロデューサーはどこまで信用できる? ダンジョンにいた経緯は分からんが、そいつが自分達をいいように操ろうとしてるとは考えないか?」


 おっちゃんは薄笑いを浮かべながら真意を読めない声色で尋ねる。


「これは、わたしが決めたことです。それに……わたしはリュートさんを信じてます」


 しかし、勇者ニナ・セイクリッドは微塵も怯まず、見惚れるような微笑みを返して、断言した。


 おっちゃんは少し眉間にしわを寄せて深刻そうに考えて顔を俯かせたかと思ったが、やがて肩を震わせる。


「アハハハハハハハ!!!」


 そしてテーブルを叩いて爆笑した。


「いや失礼。そうかそうかなるほど。そこまで分かってるんなら、オレの言うことはねえはな」


「団長は、それでいいの?」


 トリッシュの口を突いて出た問いかけに、おっちゃんは不思議そうに「うん?」と首を傾げる。


「別に。元々オレは勇者パーティを試そうとしたり脅かしたり。そういうつもりでモノを吐いてたわけじゃない。ただまあ、オレの言った方法が一番手っ取り早いやり方だってのは、多分事実だよ」


 だから言い負けてなどいない。そもそも勝負などしていないのだ。


「最後だ。勇者のお嬢さん。お嬢さんのやろうとしてることは面倒なことこの上ない。相手の得意な戦場で戦おうってんだからな。やっぱ降りるってんなら、今の内だぜ」


「覚悟の上です」


 おっちゃんはカハッと膝を叩いて笑う。


「いいねぇ。勇者ってのはそうでなくちゃいけない。こっちの心配なんぞ振りきって、誰もあえてやろうとしないだろうことをへらへら笑いながらやるのが道ってなもんだ。民家に勝手に押し入ってタンスの中身を拝借しても、世界を救えばそれで御の字ってのが勇者だ」


「おっちゃん何か勇者に恨みでもあんのか」


「いいだろう。気に入った。おっちゃんとしても経験の無い戦場だが、協力することを約束しよう。勇者のお嬢さん」


「あ、りがとう、ございます……?」


 あっさりと認めたおっちゃんに肩の荷が下りたのか、ポカンとしながらお礼を言うニナだった。


「そういうことならもう一人のお嬢さんにも話を通すとしようか」


「クリスさん、ですか……」


 ニナは苦い顔をする。


「クリスさんは……許してくれるでしょうか? こんなことを」


 ニナは、ただ申し訳ないという感情を滲ませながら悩んでいる。


 もう一人の勇者パーティ。クリス・ブリリアント。その人柄やら何やらは全く分からないが、ニナも憎からず思っているようで、しかし気難しいのか色々悩んでいるようだ。


 俺は何も知らないので何とも言えないが


「いやー大丈夫だろ」


「だねーまあ問題ないわけじゃないけど大丈夫じゃない」


 何でおっちゃんとトリッシュの二人はこうも楽観的なんだろう。


 クリス・ブリリアント……一体どんな人物なんだ。


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