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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第一章:ダンジョンマスターアイドル始めました
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アイドル○スターとダンジョンマスターを間違えてるだろ

設定説明回です

ほぼこれ言いたいだけだろみたいな面は………あります

「この世界のことを説明するわね。この世界では、魔族と呼ばれる者たちが迷宮に籠ってひっそりと暮らしているわけなんだけど、それを維持するためにちょこーっとね。迷宮外からの生命エネルギーっていうのが必要になって来るのよ。


 それで魔族のご先祖様達は強引に人間たちから生命エネルギーを取り出すためにいわゆる非人道的な行いっていうのを散々やって来たの。そのせいで冒険者って呼ばれるやつらが台頭してきて、人間と魔族との仲がまあ悪いこと悪いこと。まあそうでなくても人間と魔族って反りが合わなかっただろうけどね」


 突如現れたやけに尊大な少女は、美女がどこからか持ってきたボードを交えてこの世界の事情を説明している。


 メガネかけたり教鞭持ったり無駄に小道具に凝ってるな。


「そして、この状況を打破するためにあんたを呼んだわけよ!」


 ビシッ! と俺を指差す少女と、申し訳なさそうに頭を下げる美女。


「何だ? 俺に何をしろというんだ。人間の虐殺に力を貸せとでも言うのか……一応、聞くけどあんた達は魔族? 側、でいいんだよな」


「ああそうね。名乗るのを忘れていたわ。私はディーヴェルシア・コンキスティドール。魔族たちを統べる偉大なるダンジョンマスターの一人!」


 そうして謎のポーズを取るディーヴェルシア……?


 藍色の髪に全身黒い装束の暗色であるが、その表情は大胆不敵に眩しい。勝ち気な大粒な瞳は、星のきらめきのようだった。


「そして前半の問いかけに関してはノーよ。虐殺? そんなことしたって無駄。非効率的ってもんだわ。私が目指すのはそんなチャチなもんじゃない」


「ほう」


 何故だろうか。交わした言葉は少ないが、コイツにはどこか不思議な魅力があった。


 不思議と引き込まれるような……もう少しコイツの話を聞いてみよう。興味を誘う、不思議な魅力が。


「そう! 私はアイドルになる!」


 気のせいだったか。


「……………………はい?」


「喜びなさい。アンタにはわらわのプロデューサーになってもらうわ。光栄に思いなさい」


「待て待て待て待て!」


「何よ」


 いい気分に水を差されたのか、ものすごい不機嫌そうにしているがいやいやいや。


「何だ、どうしてそうなるんだ」


「どうしてって……言ったじゃないの。ダンジョンの維持には生命エネルギーが必要だって」


「ふむ」


「その為にダンジョンマスターたちは自分たちの命をいわば囮にして、冒険者たちを誘い込んで迎え撃つ為の軍備を整えたり、あるいは呼び込むために宝箱の中身を準備してたりするわけだけどそんなの不毛すぎるじゃない」


「なるほど」


「そこで、私がアイドルになって冒険者たちを魅了して、ダンジョンに足を運ぶようにするの!」


「なるほどわからん!」


「ついでに言うと宝箱の中身用意するためのコストもかかるし……ほら、アイドルのグッズとか原価低くてもボロい商売できるじゃない。適当にブロマイドでも入れとけば寄って来るでしょ」


 世知辛いな……そういうこと言うな色々な意味で。というかあるのかこの世界にブロマイド。


「どうよ。この完璧なプランは? アンタもこのすーこーな計画を理解できたでしょう? ほら、素直に感想を言ってごらんなさい」


「いやー……バカなんじゃないかと」


「何でよ!」


 おっとしまった。思わず本音が。


「何でって。いやお前アイドル○スターとダンジョンマスター間違えてるだろうと」


 何だこのツッコミは。


「違うしーアイ○ス関係ないしー」


 ひゅーひゅーとへたくそな口笛まで吹き始めた。というかなんだ、アイ○ス知ってるのかコイツは、そういえばプロデューサーだの何だの言ってたし。


「とにかく、悪いけどアンタに拒否権は無いわ。わらわをアイドルにして、そしてこの世界に平和をもたらすの。どう! やりがいあるでしょう! あるわよね! あるって言いなさい!」


 おっと必死だな……まあいいか。


「上手く行かなくても恨むなよ」


「恨むわ。それくらいやってもらわないと。大丈夫よ。アンタにはこの、ディーヴェルシア・コンキスティドールがついているのだから!」


 どっから来るんだろうかコイツの自信は。


 まあ、可愛いんだけど。


「ま、召喚したばっかだし今日は色々疲れてるだろうから、寝なさい。ヘル、案内してあげて」


「はい、かしこまりました」


 ヘル? と呼ばれたのは俺がここで最初に会った美女である。


 そうか、ヘルさんというのか。


「申し訳ありません。満足なおもてなしも出来ず」


「いえ気にしないでください」


「……何かわらわと扱い違くない?」


 気のせいじゃないぞ。


 そして、俺は仄暗い迷宮の中を歩き、部屋を案内された。


 その部屋は何か変な色の小瓶が多数並んでいるのが気になったが、どこかいい匂いが漂う。


「さあそれではどうぞ、ベッドに」


 とヘルさんは俺をベッドに案内して、俺も誘われるように寝そべった。


 ベッドではいい匂いが一際強いんだが、何だろう。


 と考えていると、ヘルさんが地面に横たわろうとしているのが見えた。


「あのヘルさん」


「何でしょうか」


「……ひょっとして、なんですが。ここヘルさんの部屋だったりしますか」


「あー……すみません、お気を悪くされましたか。ですが最大限のおもてなしを考えると、どうしても私のお部屋に案内するのが、と」


 否定なさらない。


 ヘルさん……こんな会ったばかりの俺に対してそんなお気遣い。


 苦労してるんだろうなーこの人。


「そういうことならベッドを占領しているわけにもいきません。俺がそっちで」


「いえ、そういうわけには」


「いや俺が」


「……もう……」


 一瞬、ヘルさんの姿が消えた。


「そういうことなら、こうしましょう。あなたが言い出したのですから、もうこれ以上の妥協は無しですよ」


 と言って、ヘルさんはいつの間にか隣で寝ていた。あまり広くもないベッドで、からっだが密着するように。


 いやいやいやそれこそまずいだろう、と口を吐いて出る前に、ヘルさんの人差し指が俺の口元を抑えて、そしてそのまま頭を撫でる。すると、何だかくらくらと眠くなってきた。


 湯船に浸かっているかのような安心感と同時に、熱に浮かされるようなそれでいて不思議と心地よいだるさが全身を包む。


「おやすみなさい」


 ちょっと悪戯な笑みを浮かべるヘルさん。


 あ、これダメなやつだ……と頭に浮かぶが、それすらも掻き消えて、そのまま意識を手放した。


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