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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第二章:勇者パーティアイドル始めます
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ミイラ取りがミイラに

 何だ。ぼくは一体何を見せられているんだ。


「FOOOOO!!」


 ゴブゾウが派手に身体を振り回してよくわかんない踊りと奇声を上げている。


 え、何やってんのゴブゾウ。ゴブリンの訓練? と思ったけどゴブリン以外にも何か冒険者たちもちらほらいるし。


「今駆け出し中のアイドルユニットゴブリン突撃部隊だ」


「アイドル……?」


 これが?


「……」


 ヤバい。



 何なのか全くわからない!



「……緊張してる……てのともまた違うか。うん。まあよく分からんけどさ。魔物だからっていって変に敵愾心燃やすこともないさ。純粋な目で、一度は見てやってくれないかな……て思う。せっかくだからさ」


 いや、魔物との戦いについてよく分かんないとか、この子も大概分かんないな。


 純粋な目、ね……。


 そうはいっても、ボクのお仕事は悪意を見抜いて退けることだ。相手の行動や言葉の裏を読んで、術中に嵌らないように神経を張り巡らせる。それは何も戦闘に限った話じゃなくって、ニナ様を利用しようって輩は少なくもないから日夜、誰も彼も疑いながら、悪意を持っている前提でボクだけは警戒し続ける。


 けどまあ、それだけじゃどうにもならないことってのもあるんだけどさ。そういう狡い感情ってのはどうやったって隠しきれないからね。そんなんじゃ、信頼とか好感とかそういうものは得られない。そういうのを、ボクはニナ様を見て学んだ。


 憧れてるとか、そうなりたいとかそういうのとはまた違うけど、でも、守りたいなってそんな風に思えちゃったんだ。


 もうどうでもいいことだけどね……うん、そうだ。今となっちゃ、別に気を張り詰めてる必要なんてないんだ。


 そう思ったら、さっきから流れてくる音楽が妙に楽しいものに思えた。


「~~♪」


 気がついたら思わず鼻歌なんか口ずさんでしまっている自分に気付いて、それを、リュートが見てて、何か恥ずかしい。

 

※※※


 さて、次に来られたのは、ピンクに彩られた薄暗い空間だった。


「今度は一体な……?」


「「「うぉおおお!! ヘル様ぁあああ!!!」」」


 ヘル様!? ヘルって……まさか、地獄送りのヘル? 生きてたの?


 ていうか何なのこの音量……魅了、にしては女の声も交じってるし。


 あれ? 気付いたらリュートがいない。どこ行ったんだろ。


「くすっ……また性懲りもなくここに来たのですか? 相も変わらず愚かですねあなたたちは」


 濡れた声とともに、派手な格好をした女が現れた。


 一段と高いところから辺りを見下ろすその姿。距離があってもくらくらしそうな淫靡な闇の魔力。これが地獄送りのヘル、か……半端ないな。この前の戦いで共闘されてたらまずかったかもしれない……ん? でもそうしなかったのは何か理由があるのかな?


 おっといけないいけない、今日はもう難しいこととか考えるの止めようって思ってたのに……て、あれ? 最前列にいるのリュートじゃん。


「ヘル様ぁああああああ!!」


 リュート!?


 うん? リュートの掛け声に地獄送りのヘルが一瞬、変な顔してたような気がしたけど何だろう。


 てそうじゃなくって……リュートってばボクを放っておいて、何。そのだらしない顔して、もう……何!


※※※


「機嫌直してくれ」


「なーにー? なんのことー? 別にボク機嫌悪かったりしないし」


 とか言いながら頬膨らませちゃってるのが分かる。


 くっそ。ボクとしたことが子供みたいだ。


 大体、何だってこんな面白くないんだ。ムカムカしてるんだ。


 ヤキモチ、か。うん、そうだ。ちょっと悔しいなって思ってるんだ。


 地獄送りのヘル、か。うん。すごく綺麗だった。熱に浮かされたみたいにボーっと魅入ってしまった。ちょっと、胸元に手当ててみる。小さい。無いわけじゃない……無いわけじゃない!|(重要)。


 自分が女の子としてどうなのかって、機会があったからちょっとは考えてみてたつもりだけど全然足りなかったんだなって思う。


「リュートもさ……ああいう色気とかさ、そういうのがあった方がいいんでしょ」


「んー……」


 あれ? リュートの反応があんま芳しくない。


「ヘルさんが綺麗だなとかそういう風に思ってくれるのは嬉しいけど、でもそれが魅力の形の全てじゃないって思うんだ。弾ける笑顔だったり、悪戯な艶やかさだったり……輝ける形ってそれぞれだ。だから、まあ……自分なりのアイドルってのを見つけて磨き上げればそれでいいと思う。そういう意味じゃ好みってのは無いさ」


 自分なりのアイドル……て、よく分かんないなやっぱり。


「まあ俺の場合は色々と知り過ぎてるから、あんまりヘルさんのこと無責任に応援とかそういうことするわけにもいかないとかあんだけどなー」


 さっきからヘルさん? って親しげに呼んでるけど……どういう関係なんだろう。


 でも、何かちょっと安心したっていうか。何だろう、ホント。


「でもそういうリュートだって最前列でかぶりついてたじゃん」


「あー……そうだなー。うん、まあいっか」


 リュートは苦笑しながら一つ咳払いをして、こっちの目を真っ直ぐ見て話を始めた。


「実は俺、プロデューサーなんだ。ここのアイドルの」


「へーぷろでゅ……は!?」


「だから、まあその仕事の一環だよ。正しいアイドルオタクとしての形をこの世界に啓蒙する! その使命を帯びているんだ」


 マジかーリュートがプロデューサー……って。


(でも……そうだな……)


 もし、リュートが傍にいれば、ちょっとは楽しくなるのかなーなんて、そんな根拠のない予感がした。


 けどまあ。無理矢理とかそういう気持ちは萎えちゃった。


「それじゃあね、リュート」


 また会いに来るよ。捕まえるまでね。


「おう…………ああそうだ」


 振っていた手を止めて、リュートは


「ニナによろしくな」


 とんでもない爆弾を放り投げた。


「……え? ニ、ニナ? や、やだなーナニヲイッテルノカナリュートクンハ」


「何って……いや、だってお前、トリッシュ、だよな。勇者パーティの」


 バレてたぁ!?


「え、いや、ちょ、え!?」


「確保ォオオオオオオオオ!!」


 ゴブゾウ率いるゴブリン軍団にボクは取り押さえられる。


「ゴブゾウ?」


「りゅ、りゅりゅりゅリュートさん! と、とりあえずこっちに」


「ヘルさん、いや待って、え? え?」


 何でかリュートが慌てふためく様子を尻目に、ボクは捕まってしまうのだった。


リュートは別にだまし討ちしたわけではなく面倒なすれ違いがあります詳しくは次回

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