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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第二章:勇者パーティアイドル始めます
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トリックスターの災難

トリッシュ視点に移ります思ったより面白い子になっていく

 さーてと、まずはボクのトレードマークのポニテを解いてっと。

そもそもこれいっつもしてるのもオシャレ半分で、もう半分はカモフラージュの一環だからね。人間の記憶力ってのは案外当てになんないもんで、ひとつふたつ目立つ特徴やなんかがあれば、顔立ちなんかの細かいところを識別する前にそれで覚えようとする。だから、ボクと面識のある人間であってもポニテ解くだけで気付かれなかったりする。


 まあ念には念を入れて、ちょっとお化粧して、服装もいつもよりは動きにくいけどゆったりとしたロングドレスにしようか。それで鞭も隠しておこう。キャラもちょっと変えよう……んー


「ごめんあそばせ」


 違う。やり過ぎるといざという時にぼろが出るから普段の自分と無理が無いように着地しなくっちゃあいけない。


 断じて恥ずかしいからとかじゃないんだようん。


 こほん……一人で何やってんだろ。まあいいや。



 改めて。ぼく・・はパトリシア。さる貴族の家から着の身着のままで家出してきた令嬢さ。貴族の堅苦しいしきたりなんてもうたくさん! とりあえず冒険者? としてこの近くにあるっていうダンジョンに来たんだ。



 こんな感じでいいのかな? うん……ここまで作りこんでおいて何だけど、大体にして冒険者なんて稼業は脛に傷ない方がおかしいくらいなんだし身の上話を聞いたり話したりしないのは処世術の一つなんだよね。


 だからよくよく考えれば無駄なんだけど……んー、ガラにもなく緊張してるのかな。このボクが。ああいやいやぼくが。


 うん。へこたれてる場合じゃない。ダメならダメでいいし、そういう意味じゃ気楽だ。


 ダンジョン内に潜入してみてまず感じたのは……不思議な熱気に包まれていることだった。何だろうこの感じ。薄暗いダンジョンの中だっていうのに浮足立っているような、何か、楽しそう……?


「だからだな。これからのゴブリン突撃部隊は他のダンジョンにも活躍の場を広げてだな……」


「ん?」


 聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはゴブゾウと……何か妙な格好をした男の子が……てあれ? 何か見覚え有るんだけど……あ!


(何であの子がここに……)


 そうだ。ニナ様と一緒に歩いてたあの子だ。


 見たところ、ダンジョンに迷い込むような人間じゃないはずなのに、ゴブゾウと親しげに? どういうこと?


 おっといけない。あまり警戒していることを悟られないようにしないとって……て、こっち見られてる!?


 いやいや落ち着くんだ。まさかぼくの正体を知られているわけはない。ボクの変装は完璧だ。ここで動揺してそれを台無しにするわけにはいかない。あくまで自然に振る舞うように……


「なあ」


「わっひゃい!」


 うぉい! 話しかけて来たよ何この子。


「どうしたんだリュート。ナンパか」


 ナンパ? これナンパなの! うっそぉやだよもう何で人生初のナンパがこの時なの? ええやだもうやり直してよ!


「いやそういうわけじゃないんだが……」


 おっと、何だろう。男の子……リュート、でいいのかな。この子も考え込んでる。女の子慣れしてないのかな? ちょっと可愛いかも。


 ごめんなさい調子乗りました。


「ここには戦いに来た……わけじゃないんだよな」


 うん? おかしなことを言う。冒険者ボクらが戦い以外の何しにダンジョンに行くっていうのか。


 ボクは威力偵察なんだけど。


「まあ、そうだなー知名度もそんなもんか……」


 リュートは溜息を吐く。


「……よければだが、ちょいとばかりついてきてみてくれないか。案内するよ」


「え、あ、ちょ……」


 返事くらい聞いてよ! 何でもうレディの手を掴みながら言うのさ!



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