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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第一章:ダンジョンマスターアイドル始めました
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撮影会!

思ったより脱線しました

「こう? こんな感じでいい?」


「ええ。よろしいですわ。そのままじっとしていてくださいませ」


 ディーヴェルシアの初ライブ(ということにしておこう)も無事に終わり、今日はダンジョン内の宝箱に設置する予定のピンナップ撮影に取り掛かっていた。


 その途中で、レベッカが今回の撮影で使う写実魔法、という魔法について教授してくれた。


 これは術者の見た光景をそのまま専用の術式が施された紙へと映しこむものらしい。術式を発動する時に音と光が発せられるのは元いた世界のカメラと同じだな。


「目の前の光景を在るがままに映し出すいわゆる写実魔法と言われる技術ですが、これらがこの世界で日の目を見ることはありませんでした」


「何で? 便利じゃん」


「そうですわね。敢えて言うのであれば便利過ぎたのがいけなかったのでしょう。

例えばですが……そうですね。家族旅行に行った矢先で、旅先の風景と共に思い出を封じ込める際のことを想像してみてくださいませ。まばたき一つで済ますにはあまりにも味気ないとは思いませんか?」


「そういう時は皆どうするものなんだ?」


「その場で絵を描いてもらうのです。楽しい思い出に満ちた旅路であったのなら、描き終わるまでの時間を待つのもまた、よき思い出になるものですから。これは、駆け出しの画家の貴重な収入源の一つにもなっていたりするんですのよ」


 なるほど。今時のスマホ一つで写真が撮れるってのも味気ないもんか。カメラの黎明期からじっとする時間長かったり、上手く撮れたか現像するまで分からなかったり色々不便な時期があったからこそそれが文化として定着していったのかもしれない。


「それと、写実魔法というのは大昔の偉大な魔法使いが作り出した術式オーパーツで、真似するのは比較的容易ですが、それに手を加えるのはもはや不可能と言ってもいいでしょう。

つまり誤魔化しが効きません。例えば自らの自画像は足を長く描くように言ったりですとか、鼻を高く見せたり、くっきりとした二重瞼にしたりですとか……そういう貴族相手の商売が出来ません。むしろ写実魔法で自らの姿を広めた者に私刑を下す方もいるくらいです……ああ、具体的な名前の方はお教えできませんのであしからず」


 おいおいそれじゃ歴史の教科書に乗せるとき困るだろう……とも考えたがまあそんなもんだな。


 ということはまあアレか。コラ画像とか作られてばら撒かれたりすることもないんだな。


「まあそういう次第でして、用いられる用途はおのずと限られていたのです。主に使われているのは軍事関連ですわね。戦場の様子を知るために斥候が出向いたりですとか。もっとも、先ほど述べた事情もあって、術式を発動する際の音と光も無効化できませんからその任務もリスクが大きくなり優秀な指揮官であればその作戦を命じることもまずありませんわね。」


「……あんまりこの世界でこの魔法が浸透しなかったのは、軍事に関わってる技術っていうイメージが庶民感覚にとって受け入れがたいとかってのもある?」


「それも無いとは言いませんが、確かにイメージはよくありません。軍事関連で使われていると言いましたが、偵察以上に広く浸透している使い方は……遺体の身元確認です」


 戦場では眼を覆いたくなるような死がごろごろ転がっている。死体を背負ってそこらを歩くわけにもいかないし、言葉だけでは親しい人間の死というのは受け入れがたいものだ。


「…………そっかぁ……」


 それは、辛いと思う。見せる側も見せられる側も。どっちも、どうしようもないって分かってても、受け入れがたい感情があるのも理解できる。


「まあですから、これを機会にこの魔法の使い道というのを新しく模索できれば、とも思っていますの」


 カメラマン(?)を買って出てくれたレベッカの連れてきた男が軽く会釈をする。その表情は殆どの感情を失っているかのように、薄い。頬の筋肉が強張り、笑うことすら少なくなってしまったのだろう、というのは容易に想像が出来た。


 けれど、その中でも少しだけ。ほんの少しでも、目の奥底に、どこか希望の輝きが戻っているんじゃないかって。そんな期待をした。


「そういうことなら、最高の被写体を用意しないとな」


「ええ」


「つうわけでレベッカにも頑張ってもらわないとな」


「……ワタクシもですの」


「当たり前だろう。ほら、仮面を被ってアイドルモードで。ええっとそうだな、立ちながら足を組むようにして、見下すようにしてそこからローアングルで撮ってみようか。カメラマンさん、もうちょっとこっち」


「こ、こう、ですの?」


「ヘルさんは……そうだな。ライブとは違うしたまにはいつものヘルさんっぽい写真撮ってこう。でも、こう……あれだ。目はサキュバスモードで挑発するように」


「は、はい?」


「わらわはどうするの? 水着でも着る?」


「イイよお前はいつも通りではいはいカワイイ」


「何かわらわの扱い雑じゃない!?」


 んなことはない。そうやって感情爆発させてる時が一番いい顔してるぞ。



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