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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第一章:ダンジョンマスターアイドル始めました
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アイドルオタクが異世界に

作中のアイドルがあれですが引っ張る予定もないので気にしないでください

オレッ娘っていいよね…

 俺、阿崎あざき隆斗りゅうとはアイドルオタクである。


 隠すつもりもない。かといって無駄に吹聴するつもりもない。ただ気付いたらそう言う生き方をしていた、というだけだ。


 きっかけは何だったか。親に連れられたデパートの屋上か何か、買い物途中の親に待っているように言われて、何かないかと辺りを見回したら、アイドルのショーをやっていたんだ。


 何てこともない、音響もどこかボケたちんけなステージではあったが、マイクごしの彼女たちの歌声は子供心でもどこか心が弾んだ。


 その数か月後、彼女たちがテレビに出演しているのを見た時は本当に驚いた。


 それから、だ。俺はアイドルの成長を見守っていきたいと思った。まあ、うん。この子は絶対に売れる! と訴えたところで、それを俺と同じように大多数の人間が売れると思ったから売れたわけで俺の応援なんてその中の一部でしかない。


 まあそれでもだ。止めてほしくないから。俺の存在がその歯止めに少しでもなれたらなって、応援するんだ。俺……いや、俺達は!


 そして俺は現在、追っかけ中のアイドル、花山薫子ちゃんのライブに来ていた。


「は・な・や・ま!! は・な・や・ま! わああああああああ!!!」


 この一体感、自分が自分ではないかのような高揚感は止められない。


 一曲の終わり、節目で音楽が止み、さあ次の曲はと待っているがいつまでも始まらない。どうしたのだろうか、と動揺が走ると、やがてガサゴソとマイクの入る音が聞こえた。


「あー……みんな。こんなオレをいつも応援してくれて、本当にありがたく思う」


 どうしたんだろうか。花山薫子ちゃんは口数が多い方ではない硬派シャイな子でライブのマイクパフォーマンスなんかもほぼやらない。


 そのことをファンは承知で、真剣な面持ちで口を開く薫子ちゃんを皆、真剣な様子で見つめていた。


「こんなオレがここまで来れたってのも、アンタたちのおかげだ。本当に、礼を言いたい」


 薫子ちゃん……。


「そんなアンタたちを裏切るかもしれねェ……いや、きっと謝っても許してくれねェことを、オレは今から言う」


 何だ?


「実は、オレは……引退を考えている」


 は……は!?


「理由は……オレを今まで、一番身近で支えてくれた、マネージャー……そいつがよォ、オレなんかに、プロポーズをしてくれたんだ」


 プロ……え? え?


「だが、そうなったらよォ。アイドルの看板を下ろさなくっちゃあならねェ。そのくらいは、分かってる。悩んだが…………すまねェ」


 消え入るような声で、らしくもなく俯いている……。



「結婚おめでとう!」



 大勢の観客がいて、聞こえたかは分からないが、喉を嗄らす勢いで叫ぶ。


「そうだ! おめでとう!」


「おめでとう!」


「おめでとう!」


 ファンたちの声が、次々と響く。


 そうだ。何を驚く。何を悲しむ。


 俺達の応援していたアイドルが、辿り着いたんだ。夢に。


 俺達は、それを見守ることが出来た。それが……全てなんだ。


(マジかぁ……)


 けれど、やっぱきっついわー……。


 でも、うん。気を取り直して、次に行こう。と、俯かせていた顔を上げると


「!?」


 一瞬、落とし穴に落ちるみたいなぽっかりとした浮遊感の後、視界が消えた。


 今まで盛り上がりを見せていたライブの喧騒も耳に響いてこない。


 再びハッと感覚を取り戻した時、目に飛び込んできたのはどこか薄暗い岩壁。


 下を見ると、にちゃりとした不思議な感覚を足が踏んづけているのに気付き、下に目を向けると、何やら全く見覚えのない魔法陣? のようなものが薄く光を発しているのが見えた。


「あの、大丈夫ですか」


「……ハッ!?」


 思わず飛び退いてスッころんだ。


 謎の声の主はくすりと苦笑して、


「どうぞ」


 手を差し伸べてきた。


「ああ、これはどうも」


 警戒して然るべきなんだと思うが、俺はその手を取って立ち上がる。


 その声の主は女性だった。色々なアイドルを見てきた俺ではあるが、その大人びた美貌とプロポーションには少々くらりとくるレベルの美女である。


 ああいや、うん。それはまあいいんだ。ただ、その彼女の微笑んだ仕草だとか、物腰が柔らかく根拠なんてないんだがどこか信じられる。そんな風に思わされたのだ。


 あとなんかこっちが気遣うレベルでスゴイ申し訳なさそうな顔をしているから断りづらいのもあった。


(……コスプレ?)


 にしてもすごい格好である。


 髪は黒い髪に紅が混じった派手な髪色で、豊かな胸元を強調するようなボンテージ。


 まではまあ百歩譲っていいとして。頭には角、背中には悪魔のような翼までついている(いや悪魔の実物とか知らないけど)。


 淫魔の方ですか? とでも言っていいんだろうか。


 しかし何だろうかここは……まさか地獄か。


「いえいえ、死んではいませんのでご安心を」


「そうなんですか」


「ただ、ここはあなたの元いた世界とは違うもので」


「……はい?」


「我が主により、あなたは召喚されました。ああご安心ください。あなたは大切なお客人。私の権限で丁重におもてなしすることをお約束します」


「すみません、さっきからちょっとついていけていないんですが」


「ふ、ならわらわから説明するわ」


 バン! と派手な爆発が前方で起こる。


 煙がもくもくあがってけほけほと咳をしながら、煙が晴れるのを待っていると


「待っていたわ! プロデューサー!」


 またやけに偉そうな少女がいた。



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