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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第一章:ダンジョンマスターアイドル始めました
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別行動

唐突ですが新キャラ登場

詳細は次回

「それではワタクシはちょっと商会の方に顔を出してきますので、リュートさんはここで待っていてくださいませ……と言いたいところですが、時間を無駄にするのも何ですわね。少しお小遣いを差し上げますので、町の中を見て回って来るとよろしいかと」


 ヒモみたいだな。


「物価や風俗、何にならばどれだけお金を使うのか。それを肌で感じるというのも、必要なことだと思いますわ」


「何ていうかアレだよな。レベッカっていいところのお嬢さんだって思ってたんだけど……」


 何だろうか。立ち居振る舞いは洗練されているものの、その根底に傲慢さが垣間見えない。


 貴族というのは金遣いが荒く、じゃぶじゃぶと金を落として経済を回すのがむしろ義務くらいだと思っていたがレベッカの場合は財布のひもが固く、手堅い交渉を好む。大阪のおばちゃん……とまではいかないがその辺りの感覚は言うなれば庶民的ではないかと思う。


「ああ、それはきっとワタクシはれっきとした貴族の令嬢ではないからでしょう。所詮、成金の成り上がりに過ぎませんもの」


「いや、それは」


「誤解しないでいただきたいのですけれど、ワタクシはワタクシで今の立場を気に入っていますわ。今のワタクシは商会で賜った要望を職人に伝えたり、あるいは職人が作った品物をお客様にお届けしたり……そうした橋渡しの仕事を務めています。それは、ワタクシだからこそ出来ることではないかと自負していますわ」


 そうか。


 俺から言い出したことではあるが、レベッカが自らを卑下するなら止めるべきだと思ったが。何ていうことは無い。彼女も生まれもっての貴族とは違うプライドを持った一人の令嬢に違いないのだ。


「リュートさんには銀貨三枚を差し上げます。銀貨一枚で銅貨二十枚分。銅貨一枚の価値は……そうですわね、この串焼き一本分です」


 と説明しながら、レベッカはそこらの屋台に銅貨を一枚差し出して、串焼きを受け取って頬張る。


「うん、いい味していますわ」


「へへ、ありがとうごぜえまさぁお嬢」


 ぺろりと舌を出して美味しそうにたれを舐めるその様はさながらキャンペーンガールだった。


「それではリュートさん、御機嫌よう」


※※※


 さっきレベッカが買っていた串焼きを頬張りながら街中を見る。べ、別に釣られたわけじゃないんだからね!


 さて、どうしたもんかな。レベッカが『投資』をしてきた以上、漫然と過ごすわけにはいかないと思うが。


「んー…………ん?」


 さて、巷の女子に人気のおしゃれな小物でも探すかと辺りを見回していると、ポツンと佇んでいる女の子がいるのが見えた。


「……」


 そこだけ世界が区切られたようにはっきりと。光さすような清浄な雰囲気が漂っている。


 腰まで伸ばした白くて長い髪。紋様の施された輝く銀色の鎧に包まれながらも、そこに武骨さは無くどこまでも可憐だった。


 顔立ちは少々幼いながらも整っていて、瞳は大きく……何だ? 瞳の中に、十字の紋様が入ってる?


 綺麗だな……そういう種族? とかそんなんだろうか。よく分からないが。


 おっと、考えが逸れた。美少女だから気になったのとは違うのだ。


「どうしたんだ?」


 ただ、その子が所在無げに佇んでいるのが気になっただけだ。もしかしたら、何か困っているのではないか、と。勘違いならそれでいい。間抜けなナンパ師が一人いただけだ。


「……わたしに声を掛けているのですか?」


 きょろきょろと周りを見回しながら、不思議そうに問い返した。俺が頷いて、促す。


「すみません。声を掛けられるとは、思っていなかったので」


 言われてみれば……何で誰も声を掛けないんだろうか。何だ? 親切心のない冷たい現代社会なのかこの街は。


「あなたは、わたしを知らないのですか?」


「うん? どういう意味だ」


「そうですか。知らないのであれば、よいのですが」


 少しおかしそうに笑う少女。それだけでぱぁっと空気が晴れるような気がするから不思議なものだ。


「実は……連れの方たちとはぐれてしまいまして」


「そうなのか」


 うーん、携帯とかないとそういうとこ不便だよなぁ……。


「……」


 元々、口数が多い気質ではないんだろう。けれど、不安そうに見えた。


「よければだが、連れを捜し当てるまで一緒に過ごさないか。ああいや、いやらしい感情とかは無いぞ、うん」


 しまった。何か言い訳じみている。


 けれど、何だ。この子の前にいると妙に気恥ずかしくなるというか。


「はぁ、いやらしい、ですか」


 少女は少し考え込むようにして、笑い飛ばした。


「それは大丈夫です。あなたは、わたしのことを知らないのなら、そういった計算はなしに声を掛けてくれたのだと信じています」


 純真だなこの子……。


「俺は、リュート。そちらは?」


「……ああ、そうですね。ふふ、自己紹介をするのも久しぶりになりますか」


 おかしそうに笑いながら、彼女は名乗る。


「ニナ・セイクリッドです。どうぞよろしく」



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