プロローグ 剣と魔法のファンタジー そんな風に考えていた時期がありました
こうなったらいいなって
剣と魔法のファンタジー世界。
そんな風に謳われたのも今は昔。
「どけえ! モンスター共ぉ!」
冒険者たちが迷宮でモンスターたちとぶつかり合う。
そして、奥へ、奥へ。
「ディーヴェルシアちゃんのライブに間に合わねえだろうがぁアア!!」
荒れ狂う冒険者たちはダンジョンの階層から階層へ。
「フォオオオオオオオ!!! ヘル様のダンジョン限定ブロマイドキタァアアアアアアアア!!!」
そしてダンジョン内の宝箱の中身に隠されたアイドル達の限定グッズを探し求める。
かつて冒険者と鎬を削ったボス部屋はライブ会場と化し、冒険者たちの持つ剣はサイリウムへ、剣技はオタ芸へと、魔法はライトアップへと姿を変え、人々を熱狂の渦に巻き込んだ!
「ここまで長かったわね」
このダンジョンの主。ダンジョンマスター、ディーヴェルシア・コンキスティドール。
「でもまだまだこれから、頼りにしてるんだからね。プロデューサー」
舞台袖の俺にウィンクを交わして、彼女は鎧でもマントでもなく、フリフリの衣装を着て、今日も冒険者たちを迎え入れる。
「みんなああ! 今日も盛り上がっていくわよォ!」
「「「「「FOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」」」」」
冒険者たちの声援を受け、今日もダンジョンマスターはライブに勤しむ。
剣と魔法のファンタジー世界。
そう謳われたのも今は昔。
「どうしてこうなった……」
俺はただ一人、呟いた。




