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ダンジョンマスター、アイドル始めました  作者: 山崎世界
第一章:ダンジョンマスターアイドル始めました
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ゴブリンだってアイドルに

 今日はゴブゾウは抜きでレベッカ、ディーヴェルシアと一緒に話し合いをすることになった。ヘルさんにはゴブゾウの足留めをお願いしている。


 その議題は


「ゴブゾウさんに恩返しがしたい、ですか」


 レベッカにこくりと頷く。


「そうですわねぇ。ただ、ゴブゾウさんもあまりモノに執着のある方ではありませんし、何かあるならワタクシに頼めば事足りますから。金銭でどうにかなるようなものはお薦めしませんわね」


 なるほど。そうなら、やっぱりディーヴェルシアも呼んだことが役に立つだろう。


「わらわ?」


 そうだ。俺はそもそも色々世話になっているもののゴブゾウのことをよく知らんわけだし一応の上司であるディーヴェルシアにゴブゾウの経歴なんかを聞くのも悪くない。


「一応って何か引っかかるんだけど……まあいいわ。ゴブゾウってゴブリンの中でも変わり者でね。ゴブリンで徒党組むのってそんな珍しいことじゃないんだけど、何ていうのかしら、すんごく器用なのよアイツ」


「そうですわね。あの姿は規律正しい軍隊長を彷彿とさせますわ」


 曰く、魔族の戦い方と言うのは強大な力にモノを言わせた戦いであるのが殆どらしい。つまり、生まれもっての力こそが全てと言う血統、種族主義……誇りプライドに基づいたものであるのだが、ゴブゾウはその存在自体が魔族のそうした旧い伝統にケチをつけかねない。


 だから、様々なダンジョンを転々とし、最後に行きついた先がここということらしい。


「まったくつまんない風習よ。出来るやつがいるならどんどん使ってけばいいってだけなのに」


 まあ何つうかアレだよな。ダンジョンマスター様よりゴブゾウの方が色々頼りになるしな。そりゃあ面目が立たないだろうさ。


 言ったら殺されそうなので言わないが。


「ああそうだ。そういえばゴブゾウって彼女いないのよね」


 そうかぁゴブゾウの場合、作れなかったんじゃなくて作らなかったんだろうなってのは想像に難くない。ダンジョンを渡り歩く根無し草だからな。


 だが、今はそんなことは無いだろう。骨を埋める覚悟ってやつはして貰っても構わない筈だ。なあ、ダンジョンマスター?


「そうねダンジョンマスターとして、ダンジョンの住人たちの福利厚生はきっちりとしなくちゃ」


 やるべき目標は決まった。問題はその手段だが。


「出会いの場を提供する、と言ってもゴブゾウさんの場合、そうと悟られてしまっては拒否されてしまうでしょうね」


 となると何かしらのカモフラージュを考えないといけないわけだが。欲を言うなら俺だからこそ出来ることと言うのが相応しい。


 俺は一体何だ? そうだ『プロデューサー』だ。アイドル…………うん? そういえば


『んー、でもさ。いずれは魔物娘たちにもアイドル活動に乗ってもらいたいんだよな。やっぱり人間社会じゃ満たしきれない需要ってのはあると思うんだ。そういうのに応えていければこのダンジョンしかない! って商機に繋がるんじゃあねえかな』

『くっははは! 何だそりゃ。アイドルってえのは随分と業が深いんだな』


「これだ!」


「どれよ?」


 閃きに思わず立ち上がって頷いた俺にディーヴェルシアは胡乱な目を向ける。ふふふ、まあまずは俺のアイディアを聞け。


※※※


 というわけで、さっそく会議で出た結末をゴブゾウに伝える。


「……ゴブリンのアイドル?」


 ゴブゾウは困惑している。まあそれも当然か。


「前にも言ったと思うが、このダンジョンには限りない可能性が眠っている。人間社会では満たされない欲求を満たすことができる。その一環として、ゴブリンのアイドル部隊を作りたい」


「……これも俺は以前に言ったと思うがゴブリンと人間じゃ種族として違い過ぎてそういう対象にならねェだろ余程の変態じゃない限り」


「まあそうだな。実はこっちは出来ればっていうおまけみたいなもんだ。狙いは他にもある」


「と言うと?」


「この世界にアイドルってのが何なのか知らしめるためのPR活動の一環だ」


「……ぴー、あーる……?」


 この世界では鑑賞し、応援し、ともに盛り上がったりするアイドル文化と言うのは未だ根付いていない。


 そこで、その見本台として迷宮内に、その例を置くのだ。こうしてアイドルを愛でるのだ、と言う見本を。


「つまり、ゴブリンのアイドルとそのアイドルを応援するゴブリンで一セットってわけか」


 ゴブゾウの嫁さがしがその出発点ではあったが、ダンジョンのアイドル事業をディーヴェルシアの望む形へと変化させるために必要不可欠な作戦だ。


 まあヤラセなんだが。


「つっても何でゴブリンに……リュートにしたってもうちっと楽しめる人選ってェのがあんだろうよ」


 それは……ゴブリンのアイドル部隊を作る過程でゴブゾウに出会いの場を設けるのが本題だったりするのだが。


「これからアイドル事業を一緒に力合せて進めていくわけだけど、ゴブゾウの理解が得られてないと思ってな。やっぱり一緒にやるからには同じものを見たいって思うじゃん」


 これも嘘じゃない。ゴブリンと人間だって差別するわけじゃないが、ゴブゾウには情熱が欠けている。


 レベッカはアイドルの商機を見いだし、ヘルさんはディーヴェルシアの役に立ちたいという夢がある。


 だがゴブゾウの場合は命に従っているというニュアンスが強い。それは少しさびしいんじゃないかって思う。


「リュート……そういうことならまァ仕方ねェな。そんじゃ、何からすればいい?」


「そうだな、まずは、オーディションから始めようか」



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