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『厄災』との死闘は悪夢である (side『日本』)

よろしくお願いします。基本は主人公の一人称形式です。

 ガン、ガンと互いに剣を打ち合う。もう何合剣戟を交わしただろうか。いやそれ以前に、闘い初めてどれだけの時間が経ったのかももう、解らない。ただ1つ確かなのは、俺がヤツに押されている、ということだ。


 俺と『厄災』、その両者の武器性能に大きな差は無い。『厄災』が使うのは最上級の業物に大量の魔法付与を施した一品だが、それは俺の剣とて同様。

 そう、両者ともに使うのは世界最高峰の剣。ならば何故俺にばかりダメージが蓄積されていくのか。

 

 答えは簡単、それは使い手の差でしかない。

 俺の身体能力、そして剣技は『厄災』のそれに遥かに劣る。身体能力に関しては強引な修行による強制的なレベルアップで無理矢理詰めたが、如何せん剣技はどうにもならない。


 しかしそれは解り切っていたことだ。何故なら俺は本来剣士では無く、魔法使いなのだから。


(あぁもう、前衛が欲しいなぁ……コンチクショウが!)


 打ち合いながらも、内心で毒づく。しかし悲しいかな、そんなことを言ってもどうしようもない。というか、この戦いで俺の前衛を張れるような人材はそもそも世界中探したって存在しない。だって下手に俺たちの間に立たせたところで、ちょっとした時間稼ぎにもならずに殺されるだけだろうし。

 いや、正確に言えば心当たりが無いことも無い。今まで苦楽を共にしてきた、俺の仲間たちだ。しかし彼らには彼らに果たしてもらわねばならない役割があるため、今回は共に戦えない。


 つまり、俺は1人で頑張るしかない。うん、悲しい。


 左横から迫る刃を咄嗟に己の剣を受け止め滑らせ、そのまま後方に飛ぶ。しかし距離を取ろうとしても奴はそのまま同じように踏み込んできて、今度は斜め下から払うように切り上げられた。今度は防御が間に合いそうにない。


(【氷壁】!)


 咄嗟に発動させたのは、使い慣れた魔法である。中級氷魔法【氷壁】。本来ならばもっと大きな壁を作り出して攻撃を受け止めるのだが、俺が発動させたそれは片手にも収まるほどの小さなサイズだった。

 ただし強度は折り紙つきであるのだが、そんな固い氷は魔剣の一振り、しかもその衝撃だけで簡単に壊された……尤も、これは予想の範疇だ。

 

 『厄災』ならばこれぐらい、当然やる。その確信があった。故に一瞬だけ間が作れれば良かったのだ。


「うぉらッ!」


 剣を振り上げたことで少しだけ開いた脇腹、そこに向けて俺も剣を振う。しかしそれはバックステップで躱された。いいぞ、それでいい。とにかく距離が取りたいんだ、こっちは。


 『厄災』のバックステップに合わせて俺も後方に下がろうとし……しかし背後に気配を感じて中止。そのまま前に出る。


(【縮地】か!)


 判断は一瞬。そしてそれは間違っていなかった。何故ならその瞬間には、背後から袈裟切りされたのだから。ただ、回避は間に合った。ダメージは無い。

 移動系スキル【縮地】。ごく短い距離ではあるが瞬間移動にも等しい速さで移動できるそれを『厄災』が持っていることは、とっくの昔に知っている。


(ダメだ、読まれてる。距離を取らせてくれない)


 【縮地】には1つだけデメリットがある。1度使ったら、【縮地】だけではなくあらゆるスキルが使えるようになるまでほんの僅かだがインターバルを必要とするということだ。けれど『厄災』はそれを使った。

 僅かとはいえ、隙を作ってでも俺に距離を取らせようとしない。

 それはつまり、俺が剣では『厄災』に勝てないと解っていて距離を取ろうとしているように、『厄災』も魔法では俺に勝てないことを解っていて多少の無理をしてでも距離を開けさせまいとしているということだ。


 接近戦になれば俺の分が悪いのは初めから解り切っていた。なので俺も初めはちょっと距離を取って魔法で戦っていたのだ。

 俺は魔法使い。近接戦闘では『厄災』に敵わなくとも、魔法勝負なら負けない。その自信はあったし、事実その通りだった。


 しかし俺の放った魔法はその余波を以てある所は焼き尽くして焦土と化させ、ある所は大地を砕き、ある所は巨大なクレーターを作り上げ……しかしヤツを仕留めるには至らず、距離を詰められてこの様だ。


 本当ならば、そもそも最初に距離を詰められるようなポカをしてはいけなかったんだけど、ここで残念なお知らせがある。

 実は俺の頭は、あまりよろしくない。なのでまんまと翻弄されてしまったわけだ、ゴメン。


 ……あまり、続けてもいられないな。このまま剣で勝負を続けても、いずれ体力が尽きて負ける。そうしたら俺は殺されることは無くとも、封印ぐらいはされるだろう。そうなってはもうこの『厄災』を止める手立ては無い。こんな言い方をするのはアレだけど、他の皆には……無理だ。


 そう、俺にしか出来ないのだ。そして俺がやるしかない、やらなきゃならない。だって俺は勇者の相棒、勇者の魔法使い。だから俺が……何としてでも!!


(【収納】!)


 隙を突いて発動させたのは、初級空間魔法である【収納】。これは本来ならば文字通りに物を個人の異空間へと『収納』して持ち運ぶための魔法だ。それは非常に便利であるが、決して攻撃力は持たない。だが、隠し持っているマジックアイテムを取り出すことは出来る。


 この剣と魔法の異世界から日本へと帰る方法を探すのに役立つのではないかと思い、積極的に学んだ空間魔法。故に俺のそれの錬度は高く、ほんの一瞬、コンマ1秒にも満たないであろう早業で目的のものを掴みとる。

 そしてそれを左手で握りこむと、そのままその腕を眼前に構えた……『厄災』の一閃、その先へと。


「?」


 流石に直撃コースに腕を差し出したのは予想外だったのか、『厄災』は少しばかり目を丸くした。そしてそのまま、俺の左腕は肘辺りから『切断された』。肉と骨が断たれるのは一瞬だった。鮮血が俺たちの間に舞ったのが、やけにスローモーションに見えた。


「ッ!!」


 最近慣れてきたとはいえ、やはり痛いものは痛い。けれど今はそんなことより、好機を掴まねば。


「解放ッ!」


 その号令と共に、左手の中のマジックアイテムは魔力を解放させた。

 それは掌に収まるような、小さな小さな玉である。しかしただの玉では無い。高純度の魔水晶を限界まで練磨し、同じく限界まで爆裂魔法を凝縮させた、小型ながらも超高火力の爆弾である。

 瞬間、目が潰れそうになるほどの閃光と共に凄まじい高熱と爆風が巻き起こった。


(【ヒール】! 【障壁バリア】! 【障壁バリア】!)


 俺自身も吹き飛ばされながら、取りあえずは回復魔法【ヒール】で切断された左腕を止血。腕自体はすぐにまた生えて来るけれど、止血するとしないとではやはり大違いなのだ。。

 そして防御魔法【障壁バリア】を二重掛けにし、吹き飛ばされている間の熱と衝撃を僅かにだが殺す。

 詠唱の間も惜しいため、どちらも一瞬で発動できる初級魔法だ。そして二重の【障壁バリア】によって稼いだ僅かな時間で、体内の魔力を練る。


「【転移】ッ!!」


 最上級空間魔法【転移】。高い空間魔法の錬度を誇る俺を以てしても瞬時に発動させることは出来ないそれで、俺は離脱を試みた。

 【縮地】が瞬間移動に等しい速さで動くスキルであるのに対し、【転移】はまさしく瞬間移動そのものを可能とする魔法だ。そのため使えれば『厄災』と距離を取るのは難しくないのだが、先も言った通りに瞬時発動が出来ないためにこれまでジリ貧に陥っていた。『厄災』も『厄災』で、これを使わせないために連続攻撃を仕掛けていたのだろうし。


 しかし今、それは成った。


 俺が転移した先は、爆心地から凡そ3㎞ほど離れた地点だった。あまり離れすぎてもこちらの魔法を当てることは出来ない。

 しかしそれ故に、転移先でも爆発による衝撃は多少ある。だが、ほぼ爆心地に位置し、【縮地】を使ったことによるインターバルが明けていない以上、あいつがこれの直撃をくらったのはまず間違いない。咄嗟に魔法でのガードはしたかもしれないが、俺の【障壁バリア】……それも二重に掛けたそれでもほんの僅かな時間稼ぎにしかならなかったんだ。俺よりも魔法で劣るあいつが、これを防ぎきれはしないだろう。

 前に実験をした時は、これ1個でブラックドラゴンが5体ほど木っ端微塵になったんだけど……。


「まさか、これで終わってくれるほど生易しい相手じゃねーよな」


 けれど好機には違いないのだ。腕一本を文字通りに『切り捨てて』掴んだ好機。逃す手は無い。


「一気に攻めようか」


 呟き、剣を構える。そのまま魔力を流し込めば、剣に付与していた魔法が発動した。


「【亜空切断】!」


 【亜空切断】。これもまた空間魔法の1つだが、等級は定まっていない。何しろつい最近俺が編み出したオリジナルスペルなものだから、他に使い手がいないのだ。ただ、【転移】以上の難度であることは確実。唯一の使い手が言うのだから間違いない。

 そして作った本人が言うのも何だが、効果はハッキリ言って極悪である。


「食らえ!!」


 発光する剣を目標めがけて振りぬくと、付与された魔法が真っ直ぐに放たれる。未だ爆風が収まらないために視界が悪すぎて目視は出来ないが、【感知】で目標の大体の位置は解っている。そしてそのまま2撃目、3撃目……というか、とにかく乱れ射ちだ。

 これだけ距離があると【感知】で解るのはあくまでも大体の位置だ。なのでその誤差は手数で埋めるしかない。

 題して、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるぜ大作戦。そのまんまである。


「日本の! サブカルを! 食らえやぁ!!」


 この【亜空切断】が元々日本で読んだ漫画の記憶を元に作り出したものだからか、ついつい気合の掛け声が可笑しくなる。

 後から思い返したら頭を抱えて転げまわりたくなるような掛け声だというのは解っていたが、この時の俺はとにかく必死だったのだ。

 しかしそうして魔法剣を振り続ける内に、背筋がゾワッと泡立つのを感じた。逃げろ、と本能が告げている。


「やばっ……【転移】!」


 本能に従ったその行動は、激しく正しかった。何しろ俺が【転移】を用いて、現在地から『厄災』を対象とした正反対の位置に移動した、その直後。目の前で全てがスッパリと切り裂かれたのだから。


「あいつが本気で【一刀両断】を使うとこうなるんだ……」


 少しばかり遠い目になってしまった。巻き上がっていた砂煙が直線に切り裂かれる様を見たら誰だってそうなる俺だってそうなる。しかも俺がその一撃を交わしたことで、さっきまで俺の背後にあった山が剣圧を受けてスッパリと斬られていた。

 森が焦土になったり、クレーターが出来たり、湖が干上がったりで、後々この辺り一帯の地図を書き直さなきゃいけないのはとっくに確定事項だったけど、あの山もその対象の1つだな。標高が変わってしまった。

 

 いや、後の事は後で考えればいい。しかも地図を書き直さなきゃいけなくなるのは、あくまでも俺がこの戦いに勝った場合のみだ。あいつが勝てば世界そのものが終わるんだから、そんな暇は無い。


 軽く頭を振って思考を戻すと、晴れた視界に『厄災』の姿が見えた。何しろ距離があるから細部までは解らないけれど、やっぱり大分ダメージは与えられたらしい。かなりボロボロだ。

 ただし、柔らかな光がその全身を包んでいる所を見ると、現在進行形で回復魔法をかけているらしい。逆に言えば、短時間の回復魔法でそこそこは回復できる程度のダメージしか与えられていない、ということだろう。どうなってんだあいつ。

 ただ、あの右足だけは回復魔法でもどうにもならないだろう。見るとヤツの右足は膝上辺りでズボンが途切れ、露わになっている足は土くれで出来ている。土魔法で作った即席の義足だ。俺が放った【亜空切断】が当たったんだろう。


 【亜空切断】は、原理としては【収納】に近い。

 この魔法に当たればその部分は丸ごと切断され亜空間へと送られる。当たらなければ意味無いし、一撃の範囲も小さいんだけど、その一方で耐えるという手段は一切通用しない絶対防御不能技だ。鬼畜の所業である。


 何にせよ、足一本を奪えたというのは大きい。俺と違って『厄災』は自動再生はしないからね。ゆっくりじっくりと回復魔法を使って治療すれば再生も可能だろうけど、戦いの中でそんな暇なんて与えない。しかもあの義足を維持するために常に魔力を消費し続けることになる……まぁ、ああして動けてるのが可笑しいんだけど。普通死んでるよ、あれ。


 そう、普通なら死んでるはずの攻撃だ。あの爆弾も、新魔法も、ただただ目の前のこの男を殺すために作り出した技術。ただヤツが色々と可笑しいから今も生きているだけで、俺は最初から本気で殺す気でこの戦いに挑んでいる。


「まるで悪夢だな……この現状は」


 小さく呟き、嗤う。

 何で俺が世界、それも勝手に召喚された異世界を救うためにここまでしなきゃいけないんだろう。俺は元々ただの小学生に過ぎなかったのに。悪夢だ……いや、悪夢だったら良かったのに。

 だって夢ならいつかは覚める。どんな悪夢も、目覚めれば無かったことになる。でもこれは、例えどっちが勝っても永遠に無くならないのだ。

 

 それでも俺は決めたんだ。嫌で嫌で仕方が無いけれど、それでも勇者の魔法使いとして、この『厄災』を、最悪の魔王を仕留めると。


 だから。


「仕切り直しだ。戦いを続けよう」


 再び両手で構えた剣が、チャキと音を立てた。あぁ、もう新たな腕も生えたのか。本当に呪われてるな、この身体は。

 この距離では俺の自嘲も見えず呟きも聞こえなかっただろう『厄災』だが、彼もまた己の剣を構える。

 とはいえ、もう切り結ぶのはゴメンだ。ならば……。


 俺が再び【亜空切断】を放つのと、『厄災』が駆け出すのは、ほぼ同時であった。



 悪夢はまだ、続く。



====================



 が、しかしその悪夢は唐突に、そして簡単に終わりを告げた。


「藤真! 起きなさいって言ってるでしょ!!」


「ふにゃ?」


 鬼の形相な母さんの怒声によって。……あ、やべぇ。遅刻だ。

戦闘描写にあまり自信が無いのにファンタジーを書くという暴挙。アドバイスがあったら是非下さい。

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