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勇者の魔法使い ─自力で行う異世界転移─  作者: 篳篥
第1章 懐かしき『コーラル』
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第8話 冒険者ギルド ②


 薬草・薬品の買い取りは滞りなく終了した。どうやらカウンターにいた男性は【下級鑑定】を習得していたようで、取引は非常にスムーズだった。


「これが査定表だ。カウンターに持って行って見せてやれ。買い取り金額は金貨2枚と銀貨1枚だな……ボウズの出した品はどれも状態が良かった。また頼むぜ」


 そつない様子で金と査定表を渡す鑑定人は、ソフィに負けず劣らずの営業スマイルな仕事人だった。


 にしても、金貨2枚と銀貨1枚か。やっぱり買取価格もちょっと上がってるみたいだな、というのが俺の感想だった。さて、内訳はっと。




・薬草

 ①ヒーラ草(良)……10枚 銀貨3枚 (鋼貨3枚×10)

 ②シビ草(良)……5枚 銀貨1枚・鋼貨5枚 (鋼貨3枚×5)

 ③ミスリバナ(良)……10個 銀貨1枚 (鋼貨1枚×10)


・薬品

 ①傷薬……5個 銀貨2枚・鋼貨5枚 (鋼貨5枚×5)

 ②体力回復薬……5本 銀貨5枚 (銀貨1枚×5)

 ③魔力回復薬……1本 銀貨8枚 (銀貨8枚×1)


 ――――合計金額……金貨2枚・銀貨1枚




 俺が今回提出したのは、殆どがどこででも取れるような薬草と簡単に調合できる薬だった。ただ1つだけ、秘蔵の品という体でちょっと良い薬も売った。一目見て解ると思うが、その良い薬とは魔力回復薬のことである。

 良い薬とは言っても所詮は魔力回復薬……万能回復薬とか人魚の滴とかとは訳が違うのだ。しかも1個だけだ。これぐらいなら怪しまれることも無いだろう。


 仮登録料を返済するだけなら銀貨5枚分稼げれば良かったけど、その後に宿を取ったり食事をしたりしなきゃいけないんだから手持ちはもう少し必要だったのだ。

 それにそう、服も買わないと。未だに学ランなんだよな、俺。しかも今、この『コーラル』は7月でここは比較的温暖な赤大陸西部。ぶっちゃけかなり暑い。着替えたい、切実に。


 査定表を持って再度ソフィのカウンターに行く。買い取りカウンターのおっちゃんに言われた通りに査定表を渡すと、ソフィはカウンターの後ろにある分厚いファイル2冊を取り出して見比べはじめた。


「トーマさんは本日付で登録されたので、まだGランクです。なので、受けられるのはGランクとFランクのクエストのみとなります。今回の品ですと……ヒーラ草とシビ草、ミズリバナがGランクで常時依頼が出されていますね。それと、傷薬もFランクでクエストがございます」


「Gランク?」


 え、冒険者のランクって1番下はEランクじゃなかったっけ?

 俺のそんな疑問の表情はソフィには違う意味で受け取られたようだった。


「はい、冒険者は皆Gランクから始めるんですよ。この辺りは後ほど説明いたしますね」


 よろしくお願いします。この世界に再び訪れてからこっち、俺の知らないことばかりだ。


「それと……魔力回復薬のクエストも出ておりましたが、残念ながらDランクですのでトーマさんが受理することはできません。それではご確認を」


 言ってソフィは、ファイルから数枚の紙を取り出して俺に差し出して来た。


[Gランク 常時依頼]

 ・ヒーラ草の採取……ヒーラ草(傷薬の材料)の採取。5枚で銀貨1枚。


[Gランク 常時依頼]

 ・シビ草の採取……シビ草(麻痺回復効果あり)の採取。5枚で銀貨1枚。


[Gランク 常時依頼]

 ・ミズリバナの採取……ミズリバナ(香りが鎮静効果を持つ花)の採取。10個で鋼貨5枚。


[Fランク]

 ・体力回復薬求む……5本の体力回復薬で銀貨2枚。


[Dランク]

 ・魔力回復薬求む……1本で銀貨1枚。


 渡された依頼書を確認しつつ、ソフィの説明に耳を傾ける。


「ヒーラ草が10枚渡されていますので、それは2回分ですね。他が1回ずつ、合計でGランク4回、Fランク1回の達成となり、銀貨5枚と鋼貨5枚の達成報酬が支払われます。この達成報酬から仮登録料の銀貨5枚を引き落としさせて頂いてもよろしいですか?」


「あ、はい」


 むしろそうして下さい。手間が省けてありがたい。そんな意味を込めた返答に、ソフィは頷いた。


 「それでは、そのように処理いたします。お受け取り下さい、達成報酬の鋼貨5枚です。それと……おめでとうございます! これらのクエスト達成により、昇格に必要なポイントが溜まりました。後は初心者講習を受けて頂ければ1つ上のFランクに昇格となります」


「初心者講習?」


 何ぞそれ?


「はい。それではギルドのシステムについて、纏めてご説明いたしますね」


 俺の手にあった依頼書を回収し、ソフィが新たに取り出したのは免許証より少し大きいぐらいの1枚のプレートと1本の針。ステータスカードを再発行してもらった時と同じ流れである。違うのは、それに続いて小さな魔水晶も取り出されたことだ。


「まず、こちらがギルドカードとなります。登録方法はステータスカードと同じですので、血を一滴垂らして下さい」


 受け取り、しかし実際に登録する前に念のため魔法式を見る。

 えぇと、【個人識別】に【魔力感知】、【不消去アン・デリート】はステータスカードと同じ、他は【登録情報検索】及び【自動更新】か。登録される情報は……氏名、ランク、ポイントと討伐モンスターか。これなら書き換える必要は無さそうだ。

 ちなみに【登録情報検索】は登録した情報にアクセス・閲覧できる魔法。この場合の登録先はギルドの情報管理部である。

 【自動記録】は情報が自動で記録されるようにしてある魔法。これで記録されるのは討伐したモンスターに関して。

 そしてこのどちらの魔法も、構築したのは昔の俺。元ネタはインターネットだ……ギルドカードよ、お前もか。お前も昔俺が作った時そのまんまじゃねーか。進歩しろよ。

 あ、ついでに言うと【個人識別】の元ネタは指紋認証やDNA鑑定だったりする。それを魔力の波長で行っているのだ。


 ちょっと溜息を吐きたくなったけど、その方が助かるのは事実。俺は吐きたくなった溜め息を飲み込んで針で指を刺し、カードに血を垂らした。


「ありがとうございます。次に、こちらにも血を一滴お願いします。これによってギルドの方にもトーマさんの魔力を登録されます」


 そしてそれが無いと、ギルドカードを使おうと思っても情報部にアクセス出来ないんだよね。だからギルドに登録せずにギルドカードだけ持ったとしても、出来るのは討伐モンスターに関する自動記録だけ。最早ギルドカードじゃなくてモンスターの討伐表でしかない。

 

 俺は言われた通り、魔水晶にも血を垂らした。すると魔水晶は一瞬だけキラッと光る。登録完了ということだ。それを確認し、ギルドカードに魔力を流し込んでみる。すると情報が浮かび上がってきた。


[ギルドカード]

名前:トーマ・スズシロ

ランク:G  (62/50)

討伐モンスター:無し


 討伐モンスターが未だ0なだけあり、簡素な情報だった。


「それではこれで冒険者ギルドへの登録は完了です。続けて基本的なシステムについてご説明します」


「お願いします」


 とても神妙な気持ちで促した。何しろ俺が前に冒険者をやっていた頃は勿論、その後の日本に帰る直前と比べても色々と変わっているのだ。知っておく必要がある。


「冒険者のランクはSSSトリプルエスから始まり、SS・S・A・Bと下がって行き、1番下がGランクとなります。今のトーマさんはGランクですね」


SSSトリプルエス? 1番上はSSじゃないんですか? それに1番下はEランクじゃあ?」


「? あぁ、昔はそうでしたが……300年ほど前に冒険者ギルドのシステムが色々と改革されたんです。恐らくトーマさんが前に聞いたのはその古い情報だったんでしょう。古すぎる気もしますが……」


 そりゃあ、約800年前の情報ですからね。古いでしょうね。300年前じゃ解んねーよ。


「俺ん家、ものすっっっごい辺鄙な場所にあるもんですから……この街に来るのだって初めてですし。それで色々と情報が古いんだと思います」


 嘘は言ってないよ、嘘は。苦笑と共に吐き出される言い訳に一応の納得はしたのか、ソフィは説明を続けた。


「そうですか。300年ほど前、冒険者の教育と死亡率引き下げのために色々と制度が改革されたんです。クエストの更なる細分化、新人の教育、冒険者間の相互互助など……それに伴いF・Gという下級のランクが増設され、同時にSSSトリプルエスのランクも作られました。と言っても、SSSトリプルエスは完全な名誉称号なのですが」


「名誉称号?」


「はい。かつて『支配』の魔王を打倒した勇者様一行です」


「ブッ!」


 俺たちじゃねーか!


「トーマさん? どうされました?」


 突如吹き出した俺に、ソフィは訝しげな顔をした……しかしそれなのに営業スマイルは崩されていない。プロだ。


「いえ、ちょっとくしゃみが出そうになって。すみません、続けて下さい」


「そうですか? では……当時は『支配』では無く『厄災』の魔王を倒した時のメンバーをSSSトリプルエスにしようという案もありました。しかし勇者アルフィ様や聖女アイリス様などを始めとする、残念ながら『厄災』の魔王が現れる以前にお亡くなりになってしまった方々もいますので、『支配』の魔王を打倒した時点でのメンバーにその称号が与えられましたのです」


 俺、知らない内に称号が与えられていた……まぁ、歴史上の偉人や伝説の英雄なんてそんなものか。

 にしても、『厄災』の魔王が現れる以前に亡くなった方々、ねぇ。ちゃんと後世でも真の歴史は闇に葬られているようで何よりだ。


 にしてもソフィのこの口振りは、まるでその300年ほど前の制度改革を実際に見てきたかのようだ。というか、本当に見てるのかも。ソフィは見た目は20代の美女だけど、成人済みのエルフの外見年齢なんてアテにならないし。

 ってことは、ソフィの実年齢は300才以上……?


「トーマさん? 何か失礼なことを考えていませんか?」


「イエナニモ」


 エスパー!? 相変わらずの営業スマイルに、一瞬だけ何か別の種類の笑みが混ざったようなきがするんですけど!?

 ま、まぁ、外見年齢と実年齢のギャップなんて俺がとやかく言えるもんじゃない――むしろヒューマンなのに625年生きてる俺の方が圧倒的に可笑しい――から、これ以上考えるのは止めよう。

 俺が思考を放棄するとそれも察したのか、ソフィはコホンと1つだけ咳払いをするとまた完璧な営業スマイルに戻った。


「ですので、事実上のトップランクはSSランクと言ってもよろしいかと。そしてGランクから始めた冒険者は、クエストを達成することでポイントを獲得し、昇格することが出来ます。ただし、GランクからFランクに上がるにはポイントを満たすだけでは無く初心講習を受講している必要があります。また、Bランク以上に上がるにはその都度試験を受けて頂くことになります」


「俺は薬草と薬の売買……採取でクエスト達成と見做され、昇格に必要なポイントが溜まった。けどその初心者講習とやらを受けていないから昇格できないってことですか?」


「はい、そうなります。初心者講習はギルドに登録したての冒険者なら全員が受講する義務が発生します。講師は元冒険者のギルド職員が担当することになります。トーマさんも明日、朝10時までにまたギルドへお越しください」


「……全員が受けなきゃいけないんですか? 免除されたりとかは」


「申し訳ありませんが、これは義務ですので……例外は除名処分以外の理由で1度冒険者を辞めた方が再び冒険者となった時だけになります。それ以外では、例え軍人・武人・傭兵・研究者などでどれだけ実績を上げていようと受講していただかねばなりません。初心者講習では冒険者ギルドにおける掟なども教えられますから」


「そうですか……」


 あの、俺ってば一応SSSトリプルエスランクを持ってるみたいなんですけど……って、言えるわけが無い。今の俺は大賢者トーマスではなく、新米冒険者トーマなのだ。郷に入っては郷に従え、受けざるを得ない。

 でも困ったなぁ。正直、一般人を演じるのはもう慣れたから問題無いんだよ。日本でもいつもやってたし。ただ、それなりの実力者を相手にそこそこ腕の立つ新米冒険者を演じる、なんて経験は全く無い。ハッキリ言って、ボロを出さない自信が無い。

 そもそも苦手なんだよ、演技は。一般人を演じるのも、あくまでも慣れてるってだけで。元々あまり頭の回転も早くないから、アドリブにも弱いし。


「その、俺が受ける明日の初心者講習って、他にも受講者はいますか?」


 他にも生徒がいるなら俺もそれに合わせて何とか出来るかもしれない。そう思っての発言だったが、ソフィは首を横に振った。


「いえ。初心者講習は基本、ギルドに登録した翌日に行われるのですが、本日登録なさったのは今の所トーマさんだけです。それに例年、解放祭の直前は登録者はあまり来ませんので、恐らくは明日の初心者講習を受けるのもトーマさんだけになるかと」


 マジか。しかも解放祭の直前だから登録者は少ないって……つまり、今は祭りを楽しんでその後に登録しようってことね。

 1階の食堂は盛況だったのに2階のカウンターはガラガラなのも、昼飯時だからというだけじゃないのかも。冒険者たちだって、この時期は仕事よりも祭りって気分になってても可笑しくないし。


「それともう1つ、昇格に必要なポイントが溜まった状態では新たなクエストを受けることが出来なくなります」


「つまり、もうFランクへの昇格に必要なポイントが溜まってる俺は、初心者講習を受けてFランクにならないと新たなクエストを受けることが出来ないってことですか」


「そうなります」


 マジか。


「続けますね。ギルドに寄せられるクエストはランク付けされされており、冒険者が受けることが出来るクエストは自分と同じランク、もしくは1つ上か下のランクのみとなります。なので今回、GランクのトーマさんはGランクとFランクのクエストを達成とされましたが、Dランククエストである魔力回復薬についてはそもそもクエストを受けることが出来ないので達成とはされませんでした」


 つまり、Gランク冒険者が受けられるのはGランクか1つ上のFランクのクエスト。Fランク冒険者が受けられるのはFランクか1つ上のEランクと1つ下のGランクのクエストってわけだ。

 まぁ、そうでもしないとね。血気に逸った初心者冒険者が難しいクエストに挑んで無駄死にしたり、逆にベテランの冒険者が簡単なクエストを受けて初心者の仕事を奪ったりしたりしてちゃまずいし。


「また、パーティを組んだ場合には受けられるクエストの難度が変動いたします。その場合に受けられるクエストは、上限がパーティ内で最も高いランクの冒険者と同じランクのクエストまで。逆に下限はパーティ内で最もランクが低い冒険者よりも1つ上のランクのクエストまでとなります。例えば、BランクとDランクの冒険者でパーティを組んだ場合に受けられるのはB・Cランクのクエストとなります。ただ、同じランクの冒険者のみでパーティを組んだ場合はそのランクのクエストも受けることも可能です。例えば、Eランクの冒険者3名でパーティを組んだ場合はD・Eランクのクエストを受けられます」


ふむふむ。その辺は昔とあんまり変わって無いな。


「それとクエスト達成報酬に関してですが、原則として即日支払われます。しかしその報酬があまりに高額・或いは希少な現物になると後日改めて、という場合もございます。とはいえ、これは高ランククエストの場合にしか起こり得ませんので、今のトーマさんは気にしなくても大丈夫でしょう」


 Gランクですからね、俺は。


「ランクとクエストに関する基本はこんな所でしょうか。細かいところは明日の初心者講習にて説明されますので、その時にご確認ください」


「……はい」


 初心者講習ね……憂鬱。


 本当なら、初心者講習はいい制度なんだろう。昔は登録後は『冒険者の行いは自己責任』としてほったらかしだったから、先輩の教えを受けたければ自分で相手を見付けるしかなかった。今はそれをギルドが制度として取り入れてくれてるんだから、新人教育の観点から見ればむしろ歓迎すべき事だ。

 実際、昔の新米冒険者の死亡率や事故率は相当高かったし、規律破りで制裁を受ける者も多かった……本当にそういうのが多かったのは正真正銘ペーペー新米よりもむしろ、少しだけ冒険者生活に慣れて調子に乗ってきた頃だったけど、それも一応は新米と呼べる。

 それらが改善されたのは良い事だ。そしてそういった諸々にかかる費用が初心者保険料とやらなんだろう。必要経費と言える。


 ただなぁ……それが俺に必要かっていうと……いや、この時代の冒険者のアレコレやギルドの掟は把握し切れてないから、必要っちゃあ必要なんだが。実力の面でボロが出ないかどうかってのが、心配だ。

 例え俺の実力を知られたとしても、それで俺の正体(=大賢者)にまで気付かれる可能性はほぼ0と言ってもいいだろう。だって今を生きる人々にとって、大賢者はもう1400年近く前に死んだはずの伝説上の人物だ。

 しかし、確実に目立つ。それは避けたい。


 俺の最終的な目標は、あくまでも【異世界召喚】を食らった学校の人達の返還。そしてその【異世界召喚】を行った人物の特定及び【異世界召喚】魔法の完全なる破棄なのだ。冒険者として大成することでは無い。

 そして後者の目的を果たすためには色々と探る必要があり、そのためには飛び抜けて目立つのは悪手。


 せめて、他にも初心者講習の受講者がいたらなぁ。マンツーマンでなければ、まだ講師の目も誤魔化しやすかっただろうに。気休め程度ではあるけど。


 俺のそんな苦悩はいざ知らず、ソフィは最後にとびっきりに笑顔を見せた。


「それではトーマさん。以上で冒険者ギルドへの登録と説明は完了です。また明日、こちらまでお越しください。カウンターで初心者講習を受講しに来たと仰っていただければ、係の者が対応します」


「はい、解りました。ありがとうございます」


 何にせよ、ひとまずやるべき事は終わった。初心者講習に関しては細心の注意を払って渾身の演技をするしかない。明日の事は明日考えよう。

 

 よし、そうと決まれば。まずは遅めの昼食だ。その後は服屋に行って適当に見繕って、武器や防具の店に行って現代の装備品を見極めて……あぁそうだ、宿も探さないと。やることは一杯だ。

 この後の予定を頭の中で纏めつつ、ソフィに礼を告げて踵を返した。すると階段に差し掛かるその時。


「あ」


「あ」


「あ」


 丁度階段を上って来たらしい顔見知りと遭遇した。


「トーマ。もう登録したのか?」


 真っ先に口を開いたのは出くわした2人組の顔見知り、その片割れのアランだった。


「ああ。お前らもか? そう言えば登録するって言ってたっけ。でもその割には遅かったな。俺より先に街に入ったのに」


「あたしたちは先に昼ごはん食べて来たのよ」


 レベッカに言われ、食事を連想したら俺の腹が小さく鳴った、うぅ、言われたらますます腹減って来た……ん?


「お前ら、冒険者ギルドに登録しに来たんだよな?」


「? まぁな」


 そうだよ、こいつらがいたじゃないか!


「ありがとう救世主」


「は?」


 明日の初心者講習、マンツーマンは回避された。やったね!

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