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ボッチとビッチ  作者: カルロス藤崎
お付き合い始めました。
1/29

彼と彼女の観察


〇〇〇


 俺のクラスには、ビッチがいる。

 名前は佐藤ひかり。中身はどうだから知らんが、外見は身長は154センチくらいで、茶髪で髪は肩まで。少し小柄な子で童顔。控えめに言ってメチャクチャ可愛くて、男子にかなり人気だ。

 その人気がどこから来てるのか、それは絡みが全くない俺でもわかる。ビッチだからだ。ボディータッチが激しく、素敵な笑顔を撒き散らし、男子とじゃれ合ってる時に、わざと胸を触られても、冗談で済ませていた。

 現に、今も教室のど真ん中で男子達に机を囲まれて、まるでホストみたいになっていた。まぁ、貢いでるのは男の方だけど。

 問題はその男たちだよな。


「髪サラサラだな。シャンプーとか何使ってんの?」


「えー、普通のだよー?」


 お前は女子か、何を聞いてんだ。あと普通のって何だ、ざっくりしすぎだろ。


「あ、今胸肘でつっついたでしょー?」


「いやいや、突いてないから。当たっちゃっただけだから」


 いやそれ当たってるよね結局。お前電車の中とかで騒がれた時にそれで逃げ切れると思ってんの?


「あ、今日は白?珍しいね。赤じゃないの?」


「赤は洗濯中なんだよねー」


 なんでスカートの中普通に覗いてんの?なんでそれ怒らないの?そういう文化なの?

 まぁ、それで本人が気にしてないなら俺がどうこう言う権利はないけど。

 …………あ、目が合った。


「…………」


「………」


 微笑むな。俺に。俺は別に君に興味ないから。俺にとって君はアレだから。観察日記の対象。何を思ってあのボディータッチを許容できるのか、何を持ってしてあんな男子とベタベタくっつくのか、何をもってして怒鳴り散らすことなく笑顔であの集団を受け入れてるのか、それらを考えるのが割と暇潰しになる(スマホのゲームのスタミナ回復までの暇潰し)。そんな無駄なことを考え続け、俺が出した結論は三つある。


一、ただのビッチ

二、女子生徒への宣戦布告

三、Noと言えない人間


 一つ目は説明は不要だろう。

 二つ目は、何の証拠もないのにそんな被害妄想してる俺の方がヤバい奴に思われるかもしれないので言っておくが、俺の思考をゴミカス人間レベルまで落とした時の可能性だ。

あえて女子の敵を作る事によって、男子の気を引きつつ、いじめからガードすると共に他の女子達を見下して優越感に浸っている。その場合、本当にクソアマだなあいつ。

 三つ目は最初に触られた時に断らないでいる間に、気が付けばそれが当たり前みたいになってしまい、今更注意するとおそらく流れるであろう気まずい空気を回避するため、或いは自分が我慢して男達が良い思いするなら、それ良いと思う聖人的思考。

 で、それらの結論からさらに可能性を絞ってみた。


「…………えっと、」


 一つ目は、最近可能性として打ち消そうとすら思っている。何故なら、ビッチなら制服の第二はともかく第三くらいまで上げたり、スカートを「それ履いてる意味あんの?」ってレベルまで上げているはずだ。が、佐藤ヒカリは第三ボタンは閉めていて、スカートに至っては膝より少し上辺りである。これでビッチは無いだろう。

 二つ目は、これも無いと自分的には思ってる。何故なら、彼女のメリットとデメリットが明らかに釣り合ってないからだ。この場合のメリットは優越感に浸ること、ならデメリットは女子生徒に嫌われることだが、嫌われると体育みたいに男女別れる授業では間違いなくハブられるし、それ以外でもいじめられたり、物を隠される、或いは壊される可能性が大いにある。そこまでのリスクを負ってまで優越感に浸ることが自分にプラスになるとは思えない。


「………と、なると、」


 最後の一個だ。これも正直言って普通の人ならありえないが、稀にこういう自己犠牲好きな奴はいる。

 まぁ、三つ目みたいな聖人はまずありえないよね。はい、自分で建てた仮説を全部ぶっ壊しました。

 まぁ、実際そんな簡単に他人が何考えてるかなんて分かるわけないし、分かったところで何とかしてやりたいとかそういうのは微塵もない。俺の暇潰しに観察してるだけだ。

 俺が佐藤さんに触りに行かないのは、注意されなきゃやめない、モラルのない大人になりたくないだけだ。

 ふと、佐藤さんの方を見ると、まだこっちを見ていた。


「……………」


「……………」


 手を振ってきたので会釈して返し、俺は寝ることにした。



×××



 私のクラスには、ボッチがいる。

 名前は佐川コウ。中身はどうだか知らないけど、可愛い系の顔の癖にクールを装ってか、仏頂面で一人で自分の席でスマホをいじるか私を見ている。

 他の男の子達と違って、彼は私の所に一回も来たことがない。別に来て欲しいわけではないけど、逆に気になった。

 と、いうわけで、私は彼と同じクラスになってからしばらく彼を観察していた。

 彼は好んで一人でいるタイプだ。基本的に誰かに話しかけられても、必要最低限の情報だけ渡してすぐに自分の世界に帰っていた事から、進んでボッチになっていたと思われる。………それくらいしか分かってません。だってお話ししたことないもの。

 今日はこれから男の子達とカラオケ。その前にトイレ行くって言って少し一人で行動してる所だ。色んな人といると気を使うから疲れる。

 うちの学校は四階建てのくの字型になっていて、東館と南館に別れている。四階が三年で三階が二年、二階が一年で、一階は職員室などの多目的教室が並んでいる。

 トイレの位置は東館の一階と三階、南館の二階と四階に女子トイレ、東館の二階と四階、南館の一階と三階に男子トイレという感じで、ひどく複雑に設置されている。一年B組の私は東館の二階の教室なので、南館に行くか三階に上がるか一階に降りるかしなければトイレには辿り着けない。酷く面倒だが、そういう構造の校舎なのだから仕方ない。

 一階のトイレに向かうべく階段を降りた。すると、下から佐川コウが上がって来た。


「……………」


「……………」


 佐川コウは私に見向きもせずに、というか気付くこともなくスマホをいじりながら階段を上がっていた。

 ………ちょうど良い機会かもしれないな。話しかけてみよう。


「ながらスマホはいけないんだぞ!」


「…………」


 ビシッと指を突き刺して佐川くんに言い放った。が、当の本人は、


「…………?」


 一瞬、不思議な人を見る目で私を見たあと、完無視して通り過ぎて行った。………少しカチンと来たよ今の。


「ちょっと!佐川くん⁉︎今無視したよね⁉︎」


「…………何」


 すごく面倒臭そうな人を見る目で見られてしまった……。別に変なプライドはないけどムカついた。


「ちょっとお話ししたいなーって思って」


「………はぁ、それは構わんけど」


「じゃあちょっと待ってて。トイレ行ってくる」


「あ、うん。………えっ?」


「そいじゃ、」


 私は小走りでトイレに向かい、カラオケに行く約束の男の子達に「少し遅れるから先行ってて」とメールを送った。



〇〇〇



 えーっと、何これ。どういう状況なのこれ。なんで俺、佐藤さんにお話ししようと誘われた上に、トイレ待たされてんの俺。

 俺、佐藤さんに反感買うようなことしたっけ?もしかして、さっき見過ぎてた?謝るからあなたの親衛隊とも言える男子軍団で袋叩きはやめてよね。あークソ、こんな事なら鞄の中の教科書置き勉しようなんて考えなきゃ良かった。

 もし、親衛隊と戦争になったらどうしような。果たして俺の土下座は効くのだろうか。いや、無理だろうな。頭を上から踏まれてズボン脱がされて生ケツ金属バット無限バッティングセンター開かれるのがオチだ。

 ……………逃げるか?いや、そしたら明日から学校来れなくなる。一年前期から不登校とか笑えない。


「詰んだ……」


「何が?」


「あっふぉ⁉︎」


 いつの間にか佐藤さんはトイレから戻って来ていた。お陰で動揺して変な声出ちゃったしよ……急に隣から声出すなよ……。


「あはは、何それー」


「や、なんでもない」


 なんとか取り繕って、小さく咳払いしてごまかした。すると、佐藤さんは俺の片腕に抱き着いて、腕を組んだ。おい、恋人かお前は。


「さ、それよりどこ行く?」


「どこ行くって……別に教室なり食堂なりで良いんじゃねぇの。というか、腕組むなよ」


「照れなくても良いのに」


「や、こんなとこ他の男子に見られたら呪われて殺されそうだから」


「むぅー」


 や、マジで『むぅー』じゃねぇから。つーか、ほんとにこいつ可愛いな。ビッチになってるのか男子が群がって来るのを拒否しないのか知らないけど、そうなるのも分かる。


「とにかく離せって」


「嫌なの?」


「………そういう問題じゃないんだって」


 何を考えてるか分からない。なんでそんなに俺とくっつきたがる。俺も君のホストクラブの一員になって欲しいのか?

 だが、佐藤さんは俺の話を聞くつもりはないのか、勝ち誇った笑みで答えた。


「嫌じゃないんだ?」


 ………なんで論点をズラすんですかねこの人は。何そのドヤ顔。

 けど、俺はそんな事では怒らない。むしろ口だけは達者だ俺は。


「………嫌って言って欲しいの?」


「っ………⁉︎」


 ギョッとしたのか、狼狽えたような反応をする佐藤さん。やっぱりな。いくら自惚れてないと自分で思っていても、アレだけ祭り上げられれば、多少はプライドが出るだろう。

 だが、彼女が自惚れるのを極力嫌がる性格なら、プライドによって逆上するよりもショックを受けて黙って手放すだろう。


「ご、ごめん……」


 予想通り、離れてくれた。これでようやく話を戻せる。


「食堂でいいか?」


「うん」


 さて、袋叩きならさっさと済ませよう。



×××



 私は若干、ショックを受けながらも佐川くんと食堂に来た。

 流石に少し反省している。色んな人に可愛いと言われ、ちょっと図に乗ってたのかもしれない。考えれば、初めて話した人にあんな事を言ったのは無い。いや、それを通り越して羞恥心すら芽生えて来た。


「………ん」


「あ、ありがと」


 佐川くんは給水機で私と自分の分の水を入れてきてくれた。

 私の前に水を置くと、お向かいに座った。


「で、話って?」


 一応、話に興味があるのか……、いや違うな。多分、この人の場合だと、さっさと済ませて早く帰りたいんだろう。

 まぁ、私も別に大した話はないから早く済むだろうけど、私みたいに可愛い子と二人きりで話せるんだからもう少し喜んでくれても良いのに。

 とりあえず、一番の疑問を聞いてみるか。


「あ、いや、あのさ。あんま話したことなかったから、なんとなくお話ししたくなったんだけど……」


「クラスであんま話さない奴なんて一人や二人いるだろ。俺はそのうちの一人でいいよ」


 確かに、クラスにそういう人はいる。けど、それを自己申告して来るのはどうなんだろうか。


「なんでさ。せっかく同じクラスになったのに」


「同じクラスになったからって仲良くする必要なんてないだろ」


 佐川君は首を横に振った。うーん、なんか変な子だな。少し傷付く。なんかまるで、


「私と関わりたくない、のかな」


 話した事ないから嫌われるような事してないはずなんだけどな。

 佐川君は顔の前で手を振りながら言った。


「や、そういうんじゃないよ」


「じゃあどういう意味?」


「佐藤さんにたかるあの連中と一緒になりたくないだけ。アレ、客観的に見たらかなり気持ち悪いからね」


 それは確かにそうかもしれない。まるで逆ホストだし。

 それに、何人か体触ってくるのは正直やめて欲しい。おふざけにも限度があるでしょ。私からは言えないけど。


「あの連中と一緒になってまで佐藤さんと仲良くなりたいとは思わないからさ、俺は」


「………結構ハッキリ言うね」


 正直引く。この人、こういう人だったのか。


「あ、ごめん。別に佐藤さんが嫌いとかそういう事じゃないから。………あの連中が気持ち悪いだけで」


 最後の方は特に感情込めて言っていた。

 うーん、あまりいつも一緒にいる人の悪口聞くのは好きじゃないな。


「でも、みんな良い人ばかりだよ。ちょっとボディタッチが激しいけど、飲み物とか買ってくれるし、宿題写させてくれるし、カラオケとか遊びに行った時も奢ってくれるし」


「うわあ………」


「え、何」


「や、なんでもない」


 むっ、何今の。気になる。超気になる。


「何、今の?」


「何でもない」


「何⁉︎」


「……………」


 目を逸らして、なかなか言おうとしない。強情な奴め………、


「あ、分かった。『教えて欲しければキスしろ』とか言うつもりなんでしょー。ハイハイわかったよ」


「勝手に解釈し上に了承するのはやめろ。教えてやるからキスするのやめてくれ」


 むう、やめてくれ、なんて言われると少し腹立つ。

 佐川君は少し考えたあと、「ま、いいか。俺は関係ないし」と小声で呟くと、内緒話をするように手を立ててボソボソと言った。


「これから言うことは何の確証もない俺の想像だからな」


「いいから、何?」


「それってさ、カラオケとか飲み物の奢りでセクハラ一回、みたいになってない?」


「……………はっ?」


 何言ってんのこの人。


「あり得ないから。そんな事コソコソするような人、いるわけないじゃん」


「普通はな。でも、佐藤さんは色んな人に人当たり良くしてるから、『あの人なら何しても良い』と思われてもおかしくないよ。集団なら尚更ね」


「い、いや、でも、飲み物とカラオケの奢りでセクハラ一回じゃ、どう考えても不公平でしょ」


「例えば、奢ったものの値段だけセクハラの箇所が変わるとか。カラオケとか遊びに行った時の費用は胸みたいな大胆な場所、飲み物くらいだと……そうだな、髪とか頭?」


 ちょっと、だとしたら誰に断って人の身体の価値を決めてんのよ。


「まぁ、俺は親や弟妹曰く、超ネガティブらしいから基本的に言うことはアテにならないけどね。でも、一応過去のセクハラと比較してみれば?」


「そんな事言われても、一々、その時のことなんか覚えて……」


 そういえば今日、この後カラオケ行くメンバーは、胸を肘でつっついた人とパンツを勝手に見た人だったような……、


「………いや、偶然かもしれないし……」


「心当たりあんのかよ」


 ………あ、ヤバイ。そう考えるとなんか怖くなってきた。


「え、ど、どうしよう……そんな人たちと今まで私付き合って来たの……?」


「いや、あくまで可能性の話な。………正直、怒られないならセクハラしても良いと思ってるような連中だから、可能性は低くないと思うけど」


 うわ……なんか、鳥肌立ってきた。どうしよう……私、先生や女子生徒にはあまり好かれてないし………。あれ?私、これで相談できるような友達いなくなった……?


「話ってこれだけか?」


「え?うん」


「じゃ、俺帰るわ。あんまり男子達に好き勝手させないようにな。じゃ、」


 こ、こいつ!良く人をここまで不安にさせておいて帰れるな!


「い、いや!ちょっと待って!」


「………まだなんかあんのかよ」


 とりあえず引き止めた。それと共に思い浮かんだ。何とかする方法を。

 ほとんど勢いとはいえ、私はそれを実行することにした。


「………私と、付き合って下さい」


「…………はい?」



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