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明日グラスレス

掲載日:2015/12/19

初の恋愛小説です。何かと初が多いですね。

こんなに満たされた気分になれたのはいつ振りだろうか。

生まれてこの方17年、初めて恋の甘酸っぱさを知った私、栗原蝶(くりはらちょう)は、彼から貰った手紙を抱き締めながらベットに身を委ねていた。

整った字を書く彼は、整った顔をしていて、整った腸内環境を有している。そんな彼が大好きで、大好きで仕方なかった。

どう表現したらいいだろう。彼の全てを食べたいくらいに愛しい。逆に彼に踊り食いをされても、私は喜んで食べられたいくらいに依存してる。


「もうだめだよ、速川くん」


速川雄人(はやかわゆうと)

あぁ、なんていい響きだろう。なんていい名前だろう。


「私、もうあなたにメロメロなのぉー! メロンパンナのメロメロパンチなのー! ああぁーっんふふふふふ」


「姉ちゃん気持ち悪い」


「うっさいわ童貞」


「姉ちゃんだって処女だ。しかも俺はもう彼女いるし」


「馬鹿あんた! 中学生の分際でそんな言葉使うな! しかも彼女持ち!? あんたが!?」


「姉ちゃんが童貞とか言うからじゃん。卑猥女め。そんなんだからその歳まで彼氏いないんじゃないの?」


「うっさい!!」


弟に痛いことを言われた私は、彼の肩を小突いて怒ったふりをした。

しばらく二人で戦闘ごっこをしていると、ラインの通知音が部屋に響いた。


「『明日のデート、頑張りなよ!!』って……。優しいなぁ、我が友よ」


「いつもは友達なんてクソ食らえって言ってるくせにいいい痛い痛い痛い!!!」


「いつも余計なことばっか言って!!!」


こめかみを拳でぐりぐりして弟を制した。

しかし、恋とはどれだけのものなのだろうか。いつもはこんなに元気にはしゃいだりしないのに、明日初デート記念日となると人が変わったように騒ぎまくっている。


「ねぇ朝陽」


朝陽(あさひ)とは私の弟のことである。

彼はこめかみを擦りながら面倒くさそうに私を見る。こう見るとこいつの顔も整ってるものだな、なんて思う。速川くんの方がかっこいいけど。


「男の子ってさ、どんな服が好きなの」


「裸」


「思春期野郎め殺す」


そう言って再び頭をぐりぐりしてやろうかと近付いた私の顔から、朝陽はひょいと眼鏡を外した。


「……うん、いいじゃん」


姉のアホ面をじっと見つめながら、朝陽はそう呟いた。


「姉ちゃんの裸は面白くなさそうだけど、顔は裸の方がいいんじゃない?」


「あんた何言ってんの?」


ニコッと笑う。その顔は無邪気で、どこまでもピュアだった。


「姉ちゃん胸は皆無だけど、顔は割と平均越えてるってことだよ」


勿論、後でシバいておいた。


―――――――――


「胸はパットで誤魔化そう! 朝陽ー!! こんなんで良いー?」


3時間悩んでやっと服を選び、眠そうな弟に意見を聞く。時刻はpm11:30。正直私も眠い。

彼は小さく溜め息を吐いて、目線を一度胸に向け、今度は大きく溜め息を吐いた。


「なによ」


「いや別に? 体型は人それぞれだもんな。うん。俺は大人な対応で君を受け入れよう」


「気色悪っ」


「なんだとぉ!」


弟はぷくーっとほっぺを膨らまして、でもすぐに真剣な顔になって私の顔を見つめた。

兄弟でも流石に照れる。明日、こんな風に速川くんに見つめられたらどうしよう。多分死ぬ。


「……ね」


「ふぇ?」


「眼鏡要らない」


「コンタクトあとちょっとしかないし、眼鏡っ子の私もかわいいでしょっ!」


弟は黙ってしまって、細く長い息を吐いた。そして、私の机からコンタクトを取って投げた。


「栗原蝶! 女になれ! 明日は眼鏡無しな!」


朝陽は得意気にそう言って、大きく笑った。

私は無表情のまま、意味もなくコンタクトを眺め、強めに息を吐き出した。


「……分かったわよ。速川くんに嫌われたらあんたのせいだからね! その時は呪い殺してやる」


「やば、俺の命日近いかも」


「今殺す」


ちょっとの間のあと、2人で笑った。


「まぁ、うまくやれよー。俺はもう寝るから」


「んぁ、朝陽」


「なに」


「ありがと」


「おう。おやすみ」


「おやすみ」


こいつに礼を言ったのなんていつ振りだろう。恋はホントに素晴らしいものだ。素直になれる。


速川くんから告白されて、私達は付き合うことになった。明日は1ヶ月記念日で初デート記念日なのだ。

ノー眼鏡?眼鏡なし?なんといったら良いんだろう。

そうだ、グラスレスだなんて。私ホントに浮かれてる。


目を閉じる。

速川くんの顔が浮かぶ。

自然と口角が上がる。比例して気分もよくなる。

ぐっすり寝れるのを確信してゆっくりと深呼吸した。

明日はグラスレス。

速川くんは笑ってくれるだろうか。好きなままで居てくれるだろうか。

不安と緊張が押し寄せてきた。

でもきっと。彼がどう思っても、私は彼を好きなままなんだろうな。

それでいいや。それでいい。


「お前が好きだ」


あのときの透き通った声を思い出した頃には既に、私は眠りについていた。

恋をするって存外悪いことじゃないかもしれないね。

そんなことを友人が言っていたので、初めて恋愛小説にチャレンジしました。

これ恋愛小説になってるのかな。

まあいいや。

そんなわけで、未だ恋愛を経験していない友人に送ります。

恋をするって存外悪いことじゃないよ。

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