第5話
体育館の二階部分。下ではバスケットボール部が活動していた。祐樹は春菜に案内されるままにそこに来ていた。普段放課後はすぐに帰宅してしまう祐樹にとって、その場所はなんとなく新鮮に感じられた。
「ここでさっき君の言っていたアイドル部が活動していると?」
「はい、そうなんです。ドリーム・オン・ドリームで優勝するためにアイドル活動をしているんです。ずっと私の夢でしたから。ま、まあこの部は正式には学校で認めてもらえなかったんで、こんな狭い場所でやるしかないのはちょっとつらいところですけどね・・・・・・。」
春菜はアイドル活動によって畑工を救えるかもしれないと言った。いきなり大層なことを思いつくもんだと感心した祐樹だったが、なるほど今かなり納得がいったようである。細々ながら続けていた自分の活動を紹介したかった。それに丁度あてはまったのが、偶然にも相葉祐樹であったというわけだ。
「それでこの部を貸してくれるという話でいいのかな? 畑工代表としてそのドリーム・オン・ドリームに参加してくれる……と。」
「はい、そういうことです。もうすぐ他のメンバーも来ると思います。」
「そうか、他にメンバーいるのか・・・・・・。そうだよな、アイドルグループだもんな。ところで聞いた話だと、この部活の創始者は島田さんみたいだけど、それなら君が部長、というかリーダー的なポジションってことでいいの?」
「はい、部長は私がやらせてもらってます。私は歌も踊りも出来ませんから、それくらいはしませんと。」
「へーそういうことか・・・・・・。・・・・・・って、えっ!?」
祐樹は拍子抜けしたように上ずった声をあげた。予想外のことを耳にしたからだ。
「島田さんは歌も踊りもしてないの!? じゃ、じゃあ島田さん自身はアイドルじゃないってこと!?」
「そうですよ。あれ、言ってませんでしたっけ? 私は部の部長と、そして指導者として活動に参加しているんですよ。」
てっきり春菜自身がアイドルになりたいのだ、そう考えていた祐樹はやや面食らってしまった。そんな折、カッカッと階段を上る音がわずかながらに聞こえてきた。その足音は確実に複数人を想像させた。体育館の二階、この小さなスペースにわざわざやってくる人はほとんどいない。ゆえに祐樹にもすぐに判断が出来た。
「他のメンバー、来たみたいだな。」
「はい。」
春菜の返答が聞こえるや否や。容姿端麗、確かにアイドルと呼ぶにふさわしい、そんな六人の男たちが現れた。