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バロンダンスに再びの

 夢中で、我が身を投げ出した。


「がふっ」

「ゼルド!」


 バロンの、俺たちが守るべき勇者の声がする。ばあか、助かったんだから喜べよ、なんて軽口を叩きたかったけれど。


「……ごめんな、バロン」


 俺の口から出たのは、そんな言葉だった。いや、だってさすがに袈裟懸けにばっさりいかれて、胴体がまだくっついてるのがおかしいレベルだもんな。


「お前は、勝て、よ」


 そう言って、俺は目を閉じた。その後のことは、もう何も覚えていない。出血がひどくて、治療魔法も間に合わなかったんだろう。




 ……さて。

 バロンに魔王ランダとの戦争を強制したクソ神野郎のせいなのか何なのか、俺は再び同じ世界に生まれていた。表向きにはクソ神なんて言えないから、敬虔な信者を装っているがな。

 装っているといえば、もう一つ。


「礼拝に行きますよ、カティ」

「はあい、お母さん」


 何をどう間違えたのか……これもまたクソ神のせいか、今回俺は女として誕生していた。名前のカティは、えらい教師様につけていただいたらしいですよ、くそったれ。


 ……いや。実は、正直ラッキー、と思ったけどね。

 その、何だ。俺は、あの時バロンに恋をしていたから。

 と言うよりは、どうやら前回は男のガワに女の中身が入っていた、ってのが正しいというか。一応、自分のことを俺と呼ぶようにはしてたから、他の連中にはバレてないと思うけれど。

 ただ、あの後あの時のバロンがどうなったのか、それは気になった。調べてみるまでもなく、昔話で分かったけれど。俺の今の名前をつけてくれた教師様が、勉強熱心ですねって褒めやがる。あー虫酸が走る。

 俺が仕えていたバロンは、その前やもうひとつ前のバロンと同じように、ランダと相打ちになって死んでいた。今はそこから1000年ほどか、経っているらしい。

 そうして既に、次のバロンとランダが生まれ育っているらしいことも。


 次こそは、バロンを勝たせてやりたい。そのためには俺……私が、力になりたい。

 そのためには、ゼルドだった時と同じように何かの能力を発揮して、《学園》にスムーズに入れるようにするのが一番だ。なお、ゼルドとしての俺は少々無茶をやる剣士、と呼ばれていたからな。


「ふんっ、ふんっ」

「カティ。今日も熱心だね」

「もちろん!」


 俺の今生での父親は、俺が木刀代わりの太い杭を使って素振りしてるのを喜んで見ている。一応ただの農家だし、一人娘の俺は労力として計算に入っているからな。素振りで腕の筋力が強くなれば、それだけ作業もできるってもんだし。

 ただ、俺としてはやっぱり、ゼルドの生まれ変わりと言われるくらい強い剣士になりたい。実際に生まれ変わりだからな。


「待ってろよ、今回のバロン」


 今度こそは、幸せにしてやるからな。だからクソ神も、首洗って待ってやがれ。

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