表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

本の虫〜春の図書館〜

作者: *姫林檎*

一応これは短編ですが、続きを考えていたりします。

ですが、かなり自信のない小説なのでこれっきりとも考えています。続きを期待せず読んだほうがいいと思います。

読みたいという方は是非コメントください!!

本を読んでるだけじゃ こんな想い することなかった。





幼稚園児の頃、ランドセルをする小学生が大人に見えた。


小学生の頃、制服を着てきちんとした髪型をする中学生が大人に見えた。


中学生の頃、義務教育を終えて自分の道を自分で決めて生きる高校生が大人に見えた。


幼稚園子の頃、高校生なんて存在すら知らなかった。


小学生の頃、高校生なんて『遠い未来の自分』だった。


中学生の頃、高校生なんて『なれたらいいなという感じの自分』だった。


私は今 高校生だ。


だけど今 幼稚園の頃 小学生の頃 中学生の頃


どれを思い出しても『少し前の自分』であったりする。


とはいえ、幼稚園の頃なんてほとんど覚えてないけど。


本ばかり読んでいた中学時代。


今 私の片手には高校の指定かばんがある。


その中には やっぱり本があった。


こういう中学生や高校生 学年に1人や2人、いるんじゃないかな。


へたしたらクラスに1人2人は。


私は本が大好きで、本がすべてだった。


恋のときめきだって、友情の感動だって、本を読んでいれば味わえると思ってた。


だから現実の恋も友情も 魅力がなかった。


だって 現実は傷つくことばかりだと思っていたから。


失恋 絶望 嫉妬 裏切り 虐め etc・・・



そんな私も、高校生になった。


当然 そろそろ悩むものがあった。


「ねぇ、春ちゃんは彼氏つくらないの?」


幼馴染のよっちゃんが言う。


私の名前は春子。で、春ちゃん。


彼女の名前は良子。で、よっちゃん。


「そういうよっちゃんは?」


「言ったじゃん。いるよ」


「あぁ・・・金沢君、だっけ」


「うん!」


幸せそうに笑うよっちゃん。


まぁ、彼氏ができたからっていつまでもこういう表情ができるとは限らないよね。


私はよっちゃんに気づかれないよう苦笑した。


「春ちゃんもさ、もう高校生なんだからそういうのに興味を示そうよ!」


「うーん、そういう気になれればいいんだけど・・・あ、ごめんよっちゃん!私、図書室行く!」


「へ?」


「この学校の図書室、まだ行ってないんだ!」


私はそういうと、よっちゃんに手を振って走り出した。


私は今、恋愛なんかよりも大事なものがある。


彼氏なんかよりも、欲しいものがある。


それって、悪いこと?




図書室に入ると、オレンジのにおいがした。


さわやかで甘いオレンジのにおい。


私はそれをあまり気にせず、本棚へ近寄った。


だけどそこには、中学の図書室や図書館で読んだことのある本ばかりがあった。


ため息をつくと、1番下の段の本で目がとまった。


そこには聞いたことのない題名の本があった。


『鋭くて柔らかいナイフ』


眉間にしわを寄せ、その本を手にとる。


表紙をめくると、オレンジのにおいがした。


振り向くと、そこには男の子がたっていた。


「1年生?」


「は・・・ぃ」


「そっかー入学式の翌々日に図書室なんて、本が好きなんだね」


あぁ この人だ。


オレンジのにおい。


「あの・・・飴、舐めてます?」


「え?」


「オレンジ・・・」


「あぁ、ごめん!もしかして嫌い?」


「い、いえ・・・」


男の子は『よかった』と微笑むと私の持っていた本を見て苦笑した。


「その本、読むの?」


「え?」


「いや、読んじゃいけないとかじゃないよ?」


「あの・・・聞いたことのない・・・題名だったんで。」


「そりゃ聞いたことないに決まってるよ。」


「え?」


「だってそれ、俺が書いたんだもん。」


「・・・へ?」


男の子はにっこりと笑うと、私の手を握り無理矢理開かせるとポケットを探った。


それからオレンジの飴を私の手の上に置いた。


「どーぞ。」


「あ・・・どうも・・・」


「感想聞かせてね」


「は、はい・・・」


返事をして、私は本をかりて 図書室を出た。


心臓がうるさい。



大丈夫 これは、久しぶりに初対面の人と話したから!






私はあることを思い出した。


「学年も・・・(クラス)も・・・名前も聞いてない」


私は大きくため息をついて、本を握り締めた。



気づいた時にはもう遅くて、私はよっちゃんの自転車に2人乗りしていた。






まだ道路に桜の花びらのじゅうたんのある


ぼんやりとしたあたたかい春のことでした・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] かなり良くできていると思う。 キャラクターの思いが良くできている。 まだ、キャラクター少なくても良いかなぁと思う。
[一言] 早く続編が読みたいです。オレンジの君(勝手に名付けさせていただきますが…)はどうして図書館に自分の本を置いているのでしょうか。彼は生徒ではなく、先生なのではないか?とかいろいろ想像してしまい…
[一言] 拝読させていただきました。 なかなか面白そうな小説だと感じました。 オレンジのにおいの印象の付けられた男の子と『鋭くて柔らかいナイフ』という意味深なタイトルとか興味を引きますし、この出会い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ