本の虫〜春の図書館〜
一応これは短編ですが、続きを考えていたりします。
ですが、かなり自信のない小説なのでこれっきりとも考えています。続きを期待せず読んだほうがいいと思います。
読みたいという方は是非コメントください!!
本を読んでるだけじゃ こんな想い することなかった。
幼稚園児の頃、ランドセルをする小学生が大人に見えた。
小学生の頃、制服を着てきちんとした髪型をする中学生が大人に見えた。
中学生の頃、義務教育を終えて自分の道を自分で決めて生きる高校生が大人に見えた。
幼稚園子の頃、高校生なんて存在すら知らなかった。
小学生の頃、高校生なんて『遠い未来の自分』だった。
中学生の頃、高校生なんて『なれたらいいなという感じの自分』だった。
私は今 高校生だ。
だけど今 幼稚園の頃 小学生の頃 中学生の頃
どれを思い出しても『少し前の自分』であったりする。
とはいえ、幼稚園の頃なんてほとんど覚えてないけど。
本ばかり読んでいた中学時代。
今 私の片手には高校の指定かばんがある。
その中には やっぱり本があった。
こういう中学生や高校生 学年に1人や2人、いるんじゃないかな。
へたしたらクラスに1人2人は。
私は本が大好きで、本がすべてだった。
恋のときめきだって、友情の感動だって、本を読んでいれば味わえると思ってた。
だから現実の恋も友情も 魅力がなかった。
だって 現実は傷つくことばかりだと思っていたから。
失恋 絶望 嫉妬 裏切り 虐め etc・・・
そんな私も、高校生になった。
当然 そろそろ悩むものがあった。
「ねぇ、春ちゃんは彼氏つくらないの?」
幼馴染のよっちゃんが言う。
私の名前は春子。で、春ちゃん。
彼女の名前は良子。で、よっちゃん。
「そういうよっちゃんは?」
「言ったじゃん。いるよ」
「あぁ・・・金沢君、だっけ」
「うん!」
幸せそうに笑うよっちゃん。
まぁ、彼氏ができたからっていつまでもこういう表情ができるとは限らないよね。
私はよっちゃんに気づかれないよう苦笑した。
「春ちゃんもさ、もう高校生なんだからそういうのに興味を示そうよ!」
「うーん、そういう気になれればいいんだけど・・・あ、ごめんよっちゃん!私、図書室行く!」
「へ?」
「この学校の図書室、まだ行ってないんだ!」
私はそういうと、よっちゃんに手を振って走り出した。
私は今、恋愛なんかよりも大事なものがある。
彼氏なんかよりも、欲しいものがある。
それって、悪いこと?
図書室に入ると、オレンジのにおいがした。
さわやかで甘いオレンジのにおい。
私はそれをあまり気にせず、本棚へ近寄った。
だけどそこには、中学の図書室や図書館で読んだことのある本ばかりがあった。
ため息をつくと、1番下の段の本で目がとまった。
そこには聞いたことのない題名の本があった。
『鋭くて柔らかいナイフ』
眉間にしわを寄せ、その本を手にとる。
表紙をめくると、オレンジのにおいがした。
振り向くと、そこには男の子がたっていた。
「1年生?」
「は・・・ぃ」
「そっかー入学式の翌々日に図書室なんて、本が好きなんだね」
あぁ この人だ。
オレンジのにおい。
「あの・・・飴、舐めてます?」
「え?」
「オレンジ・・・」
「あぁ、ごめん!もしかして嫌い?」
「い、いえ・・・」
男の子は『よかった』と微笑むと私の持っていた本を見て苦笑した。
「その本、読むの?」
「え?」
「いや、読んじゃいけないとかじゃないよ?」
「あの・・・聞いたことのない・・・題名だったんで。」
「そりゃ聞いたことないに決まってるよ。」
「え?」
「だってそれ、俺が書いたんだもん。」
「・・・へ?」
男の子はにっこりと笑うと、私の手を握り無理矢理開かせるとポケットを探った。
それからオレンジの飴を私の手の上に置いた。
「どーぞ。」
「あ・・・どうも・・・」
「感想聞かせてね」
「は、はい・・・」
返事をして、私は本をかりて 図書室を出た。
心臓がうるさい。
大丈夫 これは、久しぶりに初対面の人と話したから!
あ
私はあることを思い出した。
「学年も・・・組も・・・名前も聞いてない」
私は大きくため息をついて、本を握り締めた。
気づいた時にはもう遅くて、私はよっちゃんの自転車に2人乗りしていた。
まだ道路に桜の花びらのじゅうたんのある
ぼんやりとしたあたたかい春のことでした・・・