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がやがやと喋り声が聞こえる授業の合間の休憩時間の教室。そこの片隅の机に座っている一人の少年の周りには彼の友達だろうか、沢山の人だかりができていた。

「で、なんで翼は帰宅部になわけ?」

「だーかーら、何回も言っただろうが。めんどくさいんだよ。それにこの学校そんなに部活の数多くねぇじゃん。運動部なんてほんの一握りだけだぜ。お前はいいよな、陸斗。小学校から陸上やってたから。中学でも陸上部に入る気しかなかったよな」

座っていた少年―翼は周りにいた友達のうちの一人―東海陸斗とうかいりくとの質問にうっとうしそうに答えた。

「だから入学したときに陸上部誘っただろ。お前足早いんだし。特に長距離走」

 彼はどこの部活にも所属しない、いわゆる帰宅部で友達関係などが心配だったがももともと明るい性格だったため新しいクラスメイト達とは次第にうち解けていけた。


―キーンコーンカーンコーン


「おっとやべぇ、次は体育。早くグラウンドいこうぜ」

 チャイムの音が聞こえると彼らはあわててグラウンドに走っていった。


「よし、これから新体力テストを始める。今日は1500メートルだ」

 体育教師の杉田が今日の測定方法の説明をはじめた。「新体力テスト」とは平成11年度の体力・運動能力調査から文部科学省により導入された国民の体位の変化、スポーツ医・科学の進歩、高齢化の進展等を踏まえ、これまでの体力テストを全面的に見直し、現状にあったものとしたものだ。その頃の小中学生からは誰でも一度はしたことがあるだろう。項目は9つあり、基本的に全て行わなければならないが、例外として、1500メートル走と20メートルシャトルラン(往復持久走)はどちらかを選択して行うものだ。ただ、この学校―S中学校は、両方の種目をすることになっている。今日は1500メートル走をするようだ。


翼達のクラス、A組が先に行うので、A組の生徒が、スタートラインにたった。

杉田がスタートの笛を鳴らし、A組がスタートした。翼はすこし出遅れ、後ろから先頭を追いかけるかたちになったので、はじめからスピードを上げ、半周ほどのところ上位にたてた。そして二周ほどで先頭に躍り出た。実はこの走りかたが、ベストなのだがまだ翼が知るわけがないので後ほどにだそう。

そこからは翼が先頭をキープして、五周が過ぎた。そろそろ翼にも疲れが見えてきた。つい先ほどつらさになれてきたが、また別の疲れから翼のペースはどんどん落ちていった。後ろとの差はどんどん縮まっていった。杉田が残り一週を告げようとしたところで翼がコケた。立ち上がるまでに翼は抜かれてしまい、50~70メートルほどの距離が開いてしまった。

―これ以上差が開くとうがんばっても抜けない

 翼は起き上がると全力で走った。残り200メートルをなにも考えずにただただ全力で走った。ゴールしたときにはいつの間にか1位になっていた。

「鳥内翼、5分53秒54」

 杉田がゴールした順に、タイムを読み上げていった。長距離は早いはずの陸斗は、なぜか後ろの方にいた。陸斗は、やる気が出なければ時々かなり手を抜いたりするのでそれかもしれない。

 その後、B組が走り終えると今日の体育の授業は終了した。


 その日の放課後、帰ろうとしていた翼は、杉田から呼び出された。話があるらしい。失礼しますと一礼して職員室に入り、杉田のところまでいった。杉田はついてこいと職員室から出て行き翼もその後についていった。

 ついたところは学校のグラウンドだった。杉田が受け持っている陸上部が練習している場所までいくと、陸上部員を集合させた。全員が集合したところを見計らって杉田は言った。

「よし。今度の市体陸上の一年のせんごに臨時で出場してくれる太田翼だ。みんな、よろしく頼むぞ」


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