第六話
久しぶりです。
遅くてすみません。
『ソラ、ごめんね。』
「何でユウが謝ってるの?(笑)」
『だって、
・・・驚いたでしょう?』
「まぁ、確かに驚いたけどね。」
(もぅ、話さないと・・だよね。)
私は、心の中で少し自問自答してリビングのソファーに座った。
ソラは、何もいわずに私の横に静かに座った。
「ユウ? 俺は、ユウが何も話したくないって思うならそれは今話さなくっていいものだと思うから
話さなくてもいいんだよ?」
『ソラ。』
「ユウは今僕と一緒にいることを選んでくれていることだけで嬉しいから。」
そう言ったソラの顔は、すごく優しくって、穏やかで、私の今まで見てきたソラの顔の中で一番だった。
そして、私が見てきたソラの顔の中で一番大好きな顔になった。
私は、その優しさに包まれてとても安心した。
だからこそ、私は、話そうと思った。
『 ・・・さっきの人はね。
柊 聖也って言うの。』
私のぎこちない。話が始まった。
私の両親は、父が弁護士、母は、父と同じ事務所の事務員。
そして、母は、私が小学校4年生のときに事故で死んだ。
母は、いつも忙しさを子供の私に見せなくって、いつも優しい顔をしていた。
その母が、亡くなってから、父は、落ち込んだと思っていた。
だって、
仕事から帰ってくる父は、いつもつらそうな顔をしていたから。
でも、 それは、私の思い違いだったみたい。
−−−−2年前のある日−−−−
母が死んで、まだ2ヶ月くらいしかたってない中で父は、私の待つ家に、ある女を連れてきた。
その女は、母の親友だといっていた人間だった。
「ゆう、話がある。そこに座りなさい。」
そういわれ、私は、その女と父の座る向かい側に座った。
父と女が一緒に隣同士で座っていることに、すごく違和感を感じて、イライラしたことをいまだに覚えている。
父とその女の話は、二人が結婚するということだった。
父は、なぜ私に拒否権を与えてくれなかったのだろう・・・。
私は、なぜ結果報告の段階この話をされているんだろう。
私は、二人の前で、物分りのいい、いい子ちゃんになった。
『おめでとう。
でも お父さん、お母さんのことは、忘れないであげてね。』
それだけ、私は条件を出した。
内心は、吐き気がしてしょうがなかったけど、父だって人間だ。
しょうがないんだろうという、いい子チャン的な考え方をわたしは、自分に言い聞かせた。
父は、その条件を聞いて小さく
「あぁ。」
と、答えていた。
でもその返事に私は、心に何かがつかえた気がした。
そして、その数日後、その女は、私と父の住む家に住み始めた。
ある夜。
夜中に私は聞いてしまった。
「ねぇ、やっと私この家に気兼ねなくいられるのね。
うれしい。」
「そうだな。」
「3年は長かったわ。」
(3年?・・・なんのこと?)
「あいつに隠れて3年もコソコソしてたのは無駄に体力を使ったからな。」
(・・・!)
私は、そこまでの会話で、ほぼすべてのことがわかった。
父は、優しい、私の大好きな母を、だまして
ここにいる、人間のメスと、3年も前から浮気をしていたのだ。
そして、母の親友だとほざいていたそのメスは、堂々と今ここにいる。
私が、あの父の報告のときに感じた、吐き気と、心のつっかえはこれが原因だったんだ。
私は、人間の本能でこれを感じたんだ。
半端じゃない、吐き気がした。
私は、次の日、父に一人暮らしがしたいと打ち明けた。
少しそれを話しただけで、父は怒り出し猛反対された。
それでも、私は、この気持ち悪い家にいることに耐えられずに、家を出た。
そして、私は今に至る。
『今日来た、柊はあの女の甥っ子でうちの近くの大学に通っていて、父とあの女が結婚してからよくうちに遊びに来ていたの。
家を出て初めて住んだところがばれて、父が来て連れ戻されそうになったからここに引っ越してきたの。
だけど今度は、柊が来たんだ。
ばれないと思ってたんだけどね。
探偵でも雇ったかな。(苦笑)』
「そうだったんだ。」
『ごめんね、ソラ。
めんどくさいことに巻き込んで。』
「何も悪くないよ。
僕は、ユウのお父さんたちのこと許せない気持ちわかるから。
安心して、僕はユウの見方だから。」
『ソラ。
ありがとう。』
私は、ソラの優しい真っ直ぐな言葉に、涙が出た。
ソラは、やさしく私の肩を抱いて頭にキスをしてくれた。
私には、こんなに優しくて落ち着ける場所があることに気づいて、また涙があふれた。