善意は偽善と独善に。
もっと怖いホラーにしたかったんですが。
また一人称です。
僕はあの時、見捨てて逃げた。
この世でただ一人の、愛しき人を。
ああ。
酷く身勝手なのは解ってるんだけど。
でも僕は、怖かったんだよ。
本当に本当に、恐ろしかったんだ。
僕という存在の内面は、あの時確かに、恐怖で満たされていたんだ。
いかなる言葉を用いても表現し得ない感情で、溢れ出す寸前だった。
言い訳にもならないような戯れ言だと、自分でも解っている。
死んでしまいそうな程。
僕は、君が怖かった。
だって。
君の指に触れて、知った。
君の指は、氷柱みたいに硬く、冷たかったんだと。
君の顔を見つめて、気付いた。
君の顔は、陶器人形のように、張り付いた表情で、歪んでいたんだと。
君の口を舐めて、悟った。
君の口は、熱い吐息ではなく、鮮紅色の液体を吐き出していたんだと。
だから走って逃げた。
君を一人置き去りにして、みっともなく逃げた。
一目散に。
だから、ごめん。
いい加減許してくれないか。
謝ろう、頭を下げて。
何度でも、何度でも。
君の気が済むまで。
怖いんだ。
でも僕は、偽りなく君が大好きなんだよ。
それは嘘じゃない。
君の今の姿でも、もちろん愛しているよ。
もっとも、僕が君をそんな風にしたんだけど。
そっか。
だから怒ってるのか。
ああ。怖い。
やめてくれ。
やめてくれ。
お願いだ。
謝罪なら、幾らでもするから。
心から、僕は君を愛しているんだ。
だからこその行動だったのに。
そのままの、美しい君でいて欲しいと思って。あんな風に、醜くなると知らなくて。
死んだら綺麗なままだと信じてたから、君の首に包丁を突き立てたのに。
あぁ。
やめてくれ。
君にそんな事は出来ない筈だ。
だって君はもう。
僕が、君を――――
『ぶつっ』




