謎の男
大学裏の公園に着くと、男はベンチに座っていた。
「来たか」
「高橋さんは、どこにいるんですか」
俺は、写真を突きつけた。
「分からない。でも、無事だとは思えない」
男が、タバコを取り出した。
「吸ってもいいか?」
「勝手にどうぞ。それより、あなたは誰なんですか」
「元政府職員だ。今は、まあ、フリーランスってところかな」
男が、紫煙を吐き出した。
「君が見つけた石。あれは、非常に厄介なものだ」
「厄介? どういう意味ですか」
「文字通りの意味だよ。あの石は、既存の権力構造を揺るがす可能性がある」
男が、俺を見た。
「だから、彼らは必死になって隠蔽しようとしている」
「彼らって、国家安全保障局の?」
「いや、もっと上だ」
男が、首を横に振った。
「国家を超えた組織。表には出てこない、真の権力者たちだ」
「何を言ってるんですか。陰謀論ですか」
「信じなくてもいい。でも、君の先輩が消されたのは事実だろう」
その言葉に、俺は黙った。
「篠原君、君には二つの選択肢がある」
男が、タバコを消した。
「一つ、このまま大人しくしていること。データを破棄して、全てを忘れる。そうすれば、君の日常は守られる」
「もう一つは?」
「戦うことだ」
男が立ち上がった。
「真実を暴くために、彼らと戦う。ただし、命の保証はない。君の人生は、完全に変わるだろう」
「なぜ、俺にそんな選択を迫るんですか」
「君が、データを持っているからだ」
男が、俺の目を見た。
「高橋さんが託したUSBメモリ。それが、全ての鍵だ」
俺は、息を飲んだ。
「なぜ、それを……」
「俺の仕事は、情報を集めることだ。君が何を持っているか、把握している」
男が、名刺を差し出した。
「考える時間をやる。決めたら、この番号に連絡しろ」
名刺には、『黒木誠一郎』という名前と、携帯番号だけが記されていた。
「待ってください。あなたは、一体何が目的なんですか」
「真実だよ」
黒木と名乗った男が、振り返った。
「俺も、あの石の秘密を知りたい。それだけだ」




