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包囲網
大学の廊下を歩いていると、また視線を感じた。
振り返る。黒いスーツの男が、遠くから俺を見ている。
もう、隠そうともしていない。完全に監視されている。
「篠原君」
突然、声をかけられた。
振り向くと、見知らぬ男が立っていた。三十代後半くらいだろうか。スーツ姿だが、黒ずくめの男たちとは雰囲気が違う。
「誰ですか」
「君を心配している人間だよ」
男が、小さく笑った。
「少し、話をしないか。ここじゃまずい」
「なぜ俺が、あなたを信用すると?」
「信用しなくていい。でも、聞くだけ聞いてみる価値はあると思うよ」
男が、封筒を差し出した。
「五分後、大学裏の公園で待ってる。来る来ないは、君の自由だ」
そう言い残して、男は去っていった。
俺は封筒を開けた。中には、一枚の写真が入っていた。
高橋さんだ。
空港らしき場所で、黒服の男たちに囲まれている。表情は見えないが、明らかに強制的に連行されている様子だった。
「くそっ……」
俺は、走り出した。




