再会
高橋さんが入院している病院は、都内の大学病院だった。
「面会は、十分だけです」
看護師に案内されて、ICUに入った。
そこに、高橋さんがいた。
ベッドに横たわり、無数の管に繋がれている。
「先輩……」
俺は、ベッドに近づいた。
高橋さんの顔は、やつれていた。でも、まだ生きている。
「ケンジ……」
か細い声が、聞こえた。
「先輩! 聞こえるんですか!」
「ああ……何とか、な」
高橋さんが、薄く目を開けた。
「お前、やったんだな……石を、起動させた」
「はい。先輩のおかげです」
「いや……お前の、力だ」
高橋さんが、小さく笑った。
「俺は、何もできなかった。ただ、データを渡しただけだ」
「そんなことありません。先輩がいなければ、俺は何もできませんでした」
「ケンジ……」
高橋さんが、俺の手を握った。
その手は、驚くほど冷たかった。
「頼む……最後まで、やり遂げてくれ」
「最後って、何を言ってるんですか。先輩はまだ――」
「俺は、もう長くない」
高橋さんが、静かに言った。
「彼らに、拷問を受けた。体が、もう限界だ」
「そんな……」
「いいんだ。俺は、お前に託せた。それで十分だ」
高橋さんの目が、優しく俺を見た。
「ケンジ、お前は強い。きっと、人類を救える」
「先輩……」
「約束してくれ。諦めないと」
「約束します」
俺は、涙をこらえながら答えた。
「絶対に、やり遂げます」
「ありがとう……」
高橋さんが、目を閉じた。
心電図の波形が、ゆっくりと弱くなっていく。
「先輩!」
俺は、叫んだ。
でも、高橋さんは答えなかった。
ピーーーーー
心電図が、フラットになった。
「先輩! 嘘だろ、先輩!」
医師と看護師が、飛び込んできた。
蘇生措置が始まる。
でも、高橋さんは戻ってこなかった。
「ご臨終です。午後三時二十七分」
医師の声が、遠くに聞こえた。
俺は、その場に崩れ落ちた。




