カウントダウン
それから、世界は急速に動き始めた。
科学者たちの検証結果が、次々と発表された。
「データの整合性は高い」
「地磁気の異常が、実際に観測されている」
「春分の日に、天体配置が特殊な状態になることは事実」
徐々に、「信じる」派が増えていった。
特に、一般市民の間で。
SNSでは、『#備えよう』というハッシュタグが広がった。
人々が、自主的に避難計画を立て始めた。
でも、政府の動きは鈍かった。
「公式には、まだ認めない」
「パニックを避けるため」
表向きはそう言いながら、裏では着々と準備を進めている。
あの組織の影響力は、まだ強かった。
「時間がない」
俺は、カレンダーを見た。
春分の日まで、残り三週間。
「もっと、世界を動かさないと……」
その時、黒木が部屋に飛び込んできた。
「篠原君、大変だ」
「どうしたんですか」
「高橋さんが、見つかった」
「え!」
「日本で。意識不明の重体だ」
俺の心臓が、止まりかけた。
「先輩……」
「すぐに日本に戻ろう。彼に、会うべきだ」
俺は、頷いた。
荷物をまとめて、空港に向かった。
カイロの夜景が、窓から流れていく。
「待っててください、先輩」
心の中で、呟いた。
「俺、ちゃんとやってます。あなたの想い、無駄にしてません」
飛行機が、夜空へと飛び立った。
残された時間は、わずかだ。
でも、まだ諦めない。
最後まで、戦い続ける。
全人類の未来のために。
翡翠色の光が、世界を照らし続けていた。
審判の日は、刻一刻と近づいている。




