監視の影
その日から、俺の日常は変わった。
大学の廊下を歩けば、誰かの視線を感じる。講義室で座っていても、後ろから見られている気がする。
気のせいだと、自分に言い聞かせた。でも、違った。
ある日、図書館で文献を調べていると、見知らぬ男が隣に座った。黒いスーツ。サングラス。あの日、遺跡にいた男たちと同じ格好だ。
「篠原ケンジ君だね」
男が、低い声で話しかけてきた。
「君は聡明な学生だと聞いている。だから、忠告しておく」
「何の――」
「余計な詮索はやめることだ」
男が立ち上がった。
「君には、まだ将来がある。それを棒に振るようなことは、しない方がいい」
そう言い残して、男は去っていった。
俺は、本を握る手が震えているのに気づいた。
怖い。正直、怖かった。でも、それ以上に腹が立った。
なぜ、俺が見つけたものを奪われなきゃいけないんだ。なぜ、真実を追求することが罪になるんだ。
図書館を出て、スマホを取り出した。高橋さんに電話をかける。
呼び出し音が鳴る。一回、二回、三回。
「もしもし」
ようやく繋がった。
「先輩、俺です。あの石のこと、何か分かりましたか」
『……ケンジ、電話はまずい』
高橋さんの声が、妙に小さい。
「なぜですか。俺たち、このままじゃ――」
『いいか、よく聞け。今夜十時、駅前の喫茶店『ミラージュ』に来い。誰にも言うな』
「先輩?」
電話は、そこで切れた。




