新たな力
神殿を出ると、空は既に夕暮れだった。
「どれくらい、意識を失っていたんだ」
「六時間だ」
黒木が、時計を見た。
「宮城への連絡時刻は過ぎた。明日まで、ここで野営するしかない」
俺たちは、浜辺に戻った。
黒木が持ってきた装備で、簡易的なテントを張る。
「篠原君、試してみろ」
「何をですか」
「石の力だ。お前、今なら石の記憶にアクセスできるかもしれない」
「どうやって」
「目を閉じて、集中してみろ」
言われた通り、俺は目を閉じた。
意識を、手のひらの紋様に集中させる。
すると、視界が開けた。
そこは、神殿の内部だった。でも、俺の体は浜辺にある。
「これ、遠隔視覚……?」
『そうだ』
あの声が、頭の中に響いた。
『お前は今、石とリンクしている』
『石が見たものを、お前も見ることができる』
視点が動く。神殿の奥、石のある場所。
そこから、さらに視界が広がっていく。
島全体が、見えた。
いや、島だけじゃない。
遠く、海の向こうまで見える。石垣島。沖縄本島。さらに、その先。
「なんだ、これ……」
『世界中の石が、ネットワークで繋がっている』
『お前は、そのネットワークにアクセスできる』
視界に、光の点が浮かび上がる。
エジプト、ペルー、中国、インド。世界中に散らばった、石の位置だ。
「全部で、いくつあるんだ」
『十二だ。十二の石が、地球全体をカバーしている』
「それを、全部起動させないといけないのか」
『その通り。順番に起動させれば、災害のパターンが完全に把握できる』
目を開けた。
黒木が、心配そうに俺を見ている。
「どうだった」
「見えました。全ての石の位置が」
俺は、砂浜に世界地図を描いた。
「ここ、ここ、ここ……全部で十二カ所」
「二ヶ月で、十二カ所を回るのか」
黒木が、頭を抱えた。
「物理的に不可能だ」
「いえ、方法があります」
俺は、手のひらの紋様を見た。
「俺が直接行く必要はない。この力を使えば、遠隔で起動できるかもしれない」
「本当か」
「試してみます」




