遺跡
それは、神殿だった。
石で作られた、巨大な階段状のピラミッド。
でも、様式が既知のどの文明とも違う。エジプトでもマヤでもない。全く独自の建築様式だ。
「これ、本物か……」
黒木が、呆然と呟いた。
「年代測定が必要だが、少なくとも数万年は経っているように見える」
俺は、神殿に近づいた。
表面には、びっしりと紋様が刻まれている。
あの石と、同じ紋様だ。
「黒木さん、これ……」
「ああ。間違いない。ここが、石の起動場所だ」
神殿の入口が、ぽっかりと口を開けている。
「中に、入りましょう」
俺が一歩踏み出そうとした時、また頭の中に声が響いた。
『来たか』
「誰だ!」
周囲を見回す。でも、誰もいない。
『恐れるな。我々は、敵ではない』
「我々?」
『お前が見た記憶。それは、我々が残したものだ』
頭の中で、会話が続く。
『我々は、この星の最初の文明。だが、滅びた』
「なぜ……」
『時が来たからだ。全ての文明には、終わりがある』
「それで、石を残したのか」
『そうだ。次の文明への、遺産として』
声が、優しくなった。
『中に入れ。全てを知る時が来た』
「篠原君?」
黒木が、心配そうに俺を見ている。
「大丈夫です。行きましょう」
俺は、神殿の中へと足を踏み入れた。
内部は、想像以上に広かった。
壁一面に、紋様が刻まれている。
そして、最奥に。
「あれは……」
中央の祭壇に、巨大な翡翠色の石が置かれていた。
あの石よりも、はるかに大きい。直径三メートルはある。
「これが、本体か」
黒木が、呟いた。
俺は、石に近づいた。
手を伸ばす。
触れた瞬間、世界が光に包まれた。
そして、俺の意識は、深い深い記憶の海へと沈んでいった。




